初めての上級資格2アマ取得記
アマチュア無線の世界が100人の村だとすると、95人が4アマです。残りの5人が3アマ所持者でその中の2.5人は2アマ所持者です。1アマの所持者は100人中1人いるかいないかの計算(構成比0.7%)となります。2アマ以上の試験はレベル的にも3,4アマの遙かに上になり、試験も繰り返し過去の問題が出題されるのではなく、常に新しい問題を含めた新たな問題が起こされるために、過去問選択肢丸暗記の勉強法では通用しなくなります。試験も無線工学25問、法規25問で、午前と午後に渡って行われます。通信術は45字/分の速度で2分間の受信を行う実践的なものになります。上級資格のために、3,4アマの免許が地方総合通信局長名で発行されるのに対して1,2アマ免許は総務大臣名で発行され、台紙の色も薄い緑色の台紙になります(但し平成16年度発行の1,2アマ免許から写真の転写システムが採用されたために台紙の区別が無くなり1,2アマも白い台紙に変わってしまいましたが)。さて、その3,4アマの試験と一線を隔する上級試験の2アマ資格は、3級までに科されてきた周波数の制限がなくなり、送信出力の制限も最大200ワットとなります。すなわち2アマの資格を取って初めて市販の無線機で「使える無線機と使えない無線機」がなくなり、リニアアンプを許可を受けて使うのでない限りはどんな無線機でも使うことができるということです。周波数の制限がなくなり、昼間も安定して運用できる14メガと主に電信の専用帯である10メガが新たに使えるメリットも大きいです。そのためだけに2アマの資格を取るという理由は十分あるのですが、その試験の難易度は合格率4アマ65%(講習はほぼ100%)、3アマ48%に対して2アマは25-30%という合格率で推移しています。受験者の4人に1人か3人に1人しか合格しない計算になるんですね。そのために苦労して2アマを取らずに4アマのまま、認められていない出力の無線機を無許可で使用したり、出ることの出来ない周波数に出没する例は珍しくありません。人が見ていなければ盗みでもなんでもする、別に人に迷惑を掛けている訳じゃないから何をやっても自分の勝手、ただし仲間の利益と秘密は徹底的に守ることを掟とし、裏切り者は村八分という極めて江戸時代の日本農民的論理が横行し、アマチュア無線の世界でも好き勝手なことを行う人間が多いです。(一度移動局のQSLカードで、「当グループ員○○は身の程をわきまえず○○○に手を出しましたので破門いたしました」という破門状兼のものが届いて驚きました。まるで893屋さんです)
また余談になりました。4月まで5ヶ月掛けてじっくり勉強しようと思った2アマ試験ですが2ヶ月でとりあえず合格水準くらいまでは持って行かなくてはなりません。2ヶ月前に間違えて送られてきた2アマ国試問題集は返送しましたが、交流回路の問題からしてさっぱり意味がわかりませんでした。そのようなレベルでしたが、受験準備として返送したものと同じ「第2級ハム国家試験問題集」と用意、これだけでは問題の解説部部分が足りなくて「解説・無線工学」を入手。さらに少々古くなったとはいえ、まだまだ基本的な部分の説明が平易な通称カエル本「第2級ハム解説付き問題集」を入手。この3冊で2アマ試験の攻略開始です。上級ハム試験の攻略には往年の「上級ハムになる本」がよく勧められてきましたが、その時すでに絶版で入手できませんでした。
まず、どう手を付けて良いかわからず、とりあえず第2級ハム国家試験問題集をポケット版の大学ノートに書き写し、解説がない問題については解説・無線工学から調べて自分なりに解法を付けるという地道で根気のある作業を毎夜ごとに行いました。この作業に約3週間掛かりました。3日でボールペンのインクが空になるくらい書きまくりました。その作業の結果、何回も繰り返し出題されている問題の出題プライオリティーがだいたい掴め、さらにノートに書き込んだ作業により計算法以外の原理原則に関する部分の全容がおぼろげながら掴めてきました。そして重要暗記事項、公式などをA4の用紙10枚に渡って書き込み、壁に貼ることによっていつでも目に入るようにしました。その後この壁の張り紙が試験前の恒例行事になってしまいましたが。続いて更にこの第2級ハム国家試験問題集の問題部分だけを抜き出してパソコンに打ち込み、A4で約90枚にまとめて、反復して練習できる用意をしました。
次に通信術の練習ですが、3アマ受験時点で35文字を取るレベルには達していましたが、2アマの45字2分のモールスはさすがに早くて長いので、早速モールス練習ソフトの文章を平文90字に入れ換えて毎日20分くらいずつの練習を繰り返しました。そしてパソコンの発信音と実際の試験音との音調の違いに驚いて、ネットで情報を調べると電気通信振興会の2級モールス練習テープがCQ出版のものより音調が近いということで、さっそく北海道支部から入手。たしかに音調はこちらのほうが近いようでした。
地道な作業を繰り返して行くうちに、最初は2アマのレベルの計算は複雑で難しいし、とてもやりきれないと思っていたものが、どうもルートがからむRLC回路のインピーダンスを始めとして、ほぼ整数で割り切れることに気が付きました。公式や解法さえわかっていれば計算自体はさほど難しくないんです。さらに実際の数値の計算問題をすべて落としたとしても、原理原則に従って正しい選択肢さえ選べば合格点に達することがわかりました。2アマ試験恐れずに足りずです。
法規の問題はすべて条文暗記、虫食い問題の選択肢にいかにも出てきそうな部分を集中的に覚えました。さらにスプリアスの許容値、周波数の偏差の幅などの数値は壁紙作戦で暗記です。この暗記作戦は後の通信士試験などの法規の勉強につながり、ずいぶんと楽することが出来ました。
2ヶ月間の集中した勉強で試験直前には確かな手応えがありました。試験前に受かるかどうかわからない、受かったら儲けものというバクチのような状態では絶対に合格しません。特に4人に1人しか合格しない様な試験の場合では尚更です。確かな手応えを得るためには人がやっている2倍、3倍の時間を掛けて勉強しなければなりません。夜の町に出掛けて酒飲んでいる暇などありませんよ。
試験日は12月8日の真珠湾奇襲の日でした。奇しくも電気通信振興会のモールステープの内容が真珠湾奇襲から始まる太平洋海戦史だったというのも偶然ではない感じ。10月の試験を受けるときに乗った朝2番の札幌行き電車の発車は明るかったのに今回はまだ日の出前の発車です。試験会場は道警ビル裏の道民活動センターかでる2.7の研修室ということで、札幌駅から歩いて10数分のところです。8時半には試験場に着いてしまいましたが、試験官一行もまだ到着していないようなので、ロビーで待っていると先客の60過ぎのおじさんが問題集を片手に必死に暗記している最中でした。このおじさん、オシロによる測定の基本もわかっていなかったので、質問を受けて説明してやりましたが、オシロの測定問題がさっそく本番で1問出てきて、出来たかどうかわからんけど儲かったね。試験官が現れたので一緒に5階に上り、試験会場に入りました。真ん中の列の一番前を確保。この一番前というのは後の1アマの通信術試験のときに重要な意義を持ちました。帯広からやってきた男、この人10年無線を止めていて再開するにあたって2アマを取りに来たという話だったんだけど、問題集を付箋紙だらけにして答えの選択肢の暗記に徹したということ。この男、論理回路の基本すらまったく理解していなかったから「しばらく出てないから今回あたりヤバいぞぉ」って脅かしたんだけど、結局その時は論理回路は出なかったね(笑)
受験人数は20人で欠席者2名でした。お定まりの試験の説明があったあと、問題用紙と解答用紙が配られました。いままでの試験と違って午前は無線工学、午後は通信術と法規に別れており、問題も5枚綴りのものをどさっと渡されるので初めてだと面食らいますね。試験時間は2時間で1時間経過した時点で既に書き終わった人間は退出できます。試験開始となり、さっそくすべての問題に目を通します。そして計算問題以外から手を付けて問題用紙の選択肢に印を付けて行きます。解答は上級試験らしく初級ハムが4択に対して5択になり難しくなります。試験開始後10分経って遅刻者が1名飛び込んできました。計算問題以外をかたづけて、今度は計算問題に取りかかりますが、さほど複雑な数値の計算はありませんでした。公式とルートの計算さえしっかり出来れば解ける問題ばかりです。この試験で3つの新問題が出てきました。この問題に引っかかっていろいろ計算したのにもかかわらず、近い値の数値と思われるものしか出せずに、選択肢を選んでマークシートに転記。約50分で終了しましたが、合格点に達する確かな手応えはありました。退出可能時間になって1番に解答を提出して退出。時間は10時半でしたが次の通信術試験開始の1時までは2時間半もあります。それでその時間を利用して大通り方面に早めの昼食と買い物に出掛けてしまいました。
12時半に試験場に戻りました。パンと牛乳を摂りながら必死にモールスの書取り練習をしている受験者がいます。こちらは、やることはやり尽くしたので、参考書を開くでもなく、一番後ろの席でまったりです。やがて午後の試験開始時刻となり通信術試験の説明が始まりました。過去の試験で通信術の科目合格を摂っている受験者は廊下で待機です。12名くらいが通信術試験対象者でした。そして恐怖の赤い受信用紙が配られます。90文字の平文で練習してきて、更に電気通信振興会テープも聴いたので、あの音調に驚くこともないと思います。始めにA〜Zまでのテストパターンが流れてHR HR B~Tに続いて本文開始です。人数が少ないので鉛筆を走らせる音も気になりません。短点連続の単語が流れた直後に「ふぅ〜」というため息が思わず漏れるのが聞こえます。そして長かったのか短かったのかよくわからない2分間の通信術試験が終わりました。誤字、脱字なくほぼ完璧に取れた感じです。受信用紙は後ろの席から順に前の席に向かって回収されます。後ろの席よりも前の席に座る方が書いた符号をチェックする余裕が少しあります。
廊下で待機していた通信術科目合格者を試験場に入れて法規の試験が始まりました。法規の試験も25問2時間の試験時間です。法規のほうは工学に比べて殆ど時間は掛けませんでしたので、細かいところでけっこう引っかかってしまったような感じでしたが、落ちることはない確信を得て15分で解答を書き上げ、見直しした後に退出時間がきたら早速提出して2アマの免許申請書を購入し退出しました。法規は1時間で退出する人間が多かったんですが、わざわざ免許申請書を買う人間は多くはありませんでしたね。朝のオシロのわからないおじさんも「やっぱりけっこう難しかったよ」と言って肩をつぼめて家路につき(でも家じゃ3アマ100w運用してるんでしょ?)、申請書を買ったことを目敏く見つけられた男からは「どこかで一緒に答え合わせしませんか?」などと誘われましたけど、解答速報サイトの事を教えて、さっさと帰ってきました。帯広のあんちゃんは法規はなんとかなったけど無線工学は丸暗記じゃ手も足も出なかったと言って帯広に帰って行きました。
家に帰ると某上級試験解答速報サイトがすでに無線工学と法規の解答を発表してました。さっそく答え合わせをすると工学が125点中110点(5点問題3問不正解)、法規が125点中103点で、双方とも88点が合格最低点なのでけっこうな高得点です。通信術試験だけは結果を見るまではわかりませんが、たとえ無線工学と法規に合格していても通信術試験を落とした場合には学科の科目合格はありません。まあ、落とした気はしないので、その日以降は2月に受験予定の第一級海上特殊無線技士試験の準備を行うことにしました。
試験結果通知書は12月24日のクリスマスイブに到着。年末進行なので、いつもより早いみたいです。シールをめくると2文字で合格。即刻申請書を送り明けて新年の18日に総務大臣名の青色2アマ免許を取得しました。3アマ免許取得から3ヶ月も経たないうちに2アマ取得で、周波数の制限もなくなり、中古で揃えた2m,430の無線機ともども保証認定をうけて1.9から430までの(この時点で6m抜き)周波数の許可を得ることができました。しかし、2アマを取った後も電波は出さず、実際に交信したのはさらに4ヶ月も後のことになります。
2アマ資格取得費用
受験料 7,080円(当時)
2アマ問題集 2,400円
2アマ解説本 2,500円
解説・無線工学 2,800円
振興会テープ 1,500円
免許申請料 1,650円
郵送料・その他 570円
合 計 18,500円
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