地震による電波異常伝搬とは?
大きな地震の前後にVHF電波の、特にFM放送周波数帯あたりの電波が異常伝搬して、遠くのFM放送局の電波が離れたところまで伝搬するということは、最近よく知られてきました。ほかにVLF(超長波)の電波にあっても地震における異常伝搬と関わりがあるようですが、アマチュア的には縁のない周波数帯なので割愛します。
FM放送帯周波数というのは確か76-90MHzあたりまでで、その上にTV放送用電波の割当になっていますが、この周波数帯は普段は電離層を突き抜けてしまうために電離層による反射によって遠くに届くということはなく、基本的に見通し距離内を直接波または大地反射波によって伝搬するというのが基本です。ところが、このブログに何回も出てきました突発的に発生したスポラジックE層という電子密度の濃い電離層の出現により、普段は突き抜ける周波数なのに、このスポラジックE層に反射して、思いもよらない遠くに伝搬することがありましたが、これと同じように大地震の直前に電子密度の濃い電離層の出現によって、思いもよらない遠い場所に電波が伝搬するという現象があるのです。
そのメカニズムは、研究者によると地震の起こるプレート付近の岩石崩壊によって、電荷を帯びた粒子(電子)が飛び出し、局部的に電子密度の濃い電離層を出現させてVHF電波の異常伝搬を引き起こすということらしいのですが。
ところが、研究者がアマチュア無線家でないためか、FM放送の異常伝搬を観測して地震の研究を行っている研究者は多いのですが、それより周波数が長い6mや10m、ましてHF帯ハイバンドの15m帯あたりと地震による異常伝搬の研究をしている研究者はいないんじゃないでしょうか?
5日の夜に起こった和歌山県沖、東海沖の地震は、幸いに震害や津波の害が大きくならずに幸いでしたが、実は地震発生30時間以上前から、どうも地震が原因とは言い切ることは出来ませんが、15m(21MHz)の異常伝搬(と呼べるかどうか)が起こっていました。普段我が電波研究所の垂直アンテナでは外国との交信は近隣諸国ならいざ知らず、太平洋の向こう側とはよっぽど条件にでも恵まれないと無理な話なんですが、ALL ASIAN CONTESTがあったこともあり、たくさんの局がCQを出しておりました。相当なビッグガンなんでしょうけど、西海岸、ハワイ、グアム、フィリピン、サイパンあたりからのCQに対して、どうせ聞こえないだろうとたかを括って10W機で応答したら、一発で取ってもらえたんですね。電力差たぶん20デシベルくらい違うと思うんですけど、あたかも6mのEスポ伝搬のような感覚でコンテストナンバーを交換し合って、何かキツネに摘まれたような感じでした。その夜に大きな地震が起こってしまったんですから、何となく地震による異常伝搬と関連するかもしれないと感じても無理はないでしょう(^_^;) ついでに地震前後の6mにおける国内の異常伝搬の有無をインターネットクラスタで調べましたが、6mに関してはとくに異常がありませんでした。
地震による電波の異常伝搬に関してはまだまだ解明されていないところが多く、研究者だけではなく我々アマチュアにあってもまだまだ体験的な研究の余地が残されております。アマチュア無線の周波数にあってはいまだ研究者が手を付けていないようなので(彼ら6mのビーコン局の存在も知らないのではないかと思われる)アマチュア周波数帯の電波異常伝搬と自身の関係について、大いに調べてみる意義があります。研究者の研究の目的は、最終的に異常伝搬のメカニズムを解明することによる地震の予知のための電波の異常伝搬の研究ということですが、我々アマチュアは純粋に無線技術の興味と実験が目的ということで、いろいろな周波数の伝搬が地震によってどう影響を受けるのか、調べてみようではありませんか。
| Permalink | 0
Comments