FT-101ZDのWARC送信禁止解除法
全市全郡コンテスト終了後の翌日、かねてからの懸案事項であった固定機、八重洲 FT-101ZD100W機のWARCバンド送信禁止解除改造を行いました。
このFT-101ZDは移動局以外に固定局100Wを開局するにあたって入手した、おおよそ24年前の真空管機で、移動局免で使っているトリオ(現ケンウッド)のTS-830Vよりも一世代古い無線機ですが、終段管が6146Bと共通なことと、混信除去機能だけは見劣りしますが、八重洲の真空管100W級HF機にしては中古相場が安いので、オークションで2万円少々で落札出来た無線機です。このFT-101ZDは落札した当初、八重洲機独特のμ調整のプリセレクトが引っかかって異音を伴い、中を開けてみるとギロチン部分のコイル入口樹脂が変形していて、コアがスムーズに入って行かない不具合品で、この部分の中古部品相場だけ値引きしてもらい、実質1万6千円で入手した計算になる機械でした。また、何と局発基板には10mの水晶4個の代わりに26MHzから28MHzまでの違法CB無線帯をカバーする水晶4個が入っており、さらにオプションのAMユニットとカルメンのガチャコンマイクが付いてましたので、見るからに明らかに出品者友人(代理出品でした)が違法CBのみで使用していた事がミエミエで、WARCバンドの10MHz、18MHz、24MHzの送信禁止解除がされていなく、CWフィルタも当然付けられていないアンカバ仕様違法CB100W機でした。
何でもCBに出られるように改造したがる怪しいアマチュア無線家なら手放しで喜ぶでしょうし、CB水晶フル装備という記述だけでもオークションに書き添えれば別なマニア受けして落札価格も跳ね上がったんでしょうけど、代理出品者はそのあたりをチェックしなかったのか記載されず、こっちも届いて初めて気が付いたわけで、上級免持ちがイリーガルなシャコタン竹槍マフラーの車に乗るわけにもいかないので、ギロチンユニット取りの目的で初期型FT-101ZDSをジャンクで一台購入しました。このFT-101ZSDの初期型は、電源コードナシのジャンク品とのことで、ジャンクにしては高めの落札価格でしたが、八重洲のインスペクションタグはそのまま残っていたりして、外観と中身の程度は抜群でしたが、カウンタICがそろそろいかれかけて、21MHzの表示が怪しいのと、終段管に電流が流れませんでした。ここから28MHz帯水晶を取り出し、28MHzアマバンドに出られるようにし、オークションでは説明されていなかったのにもかかわらず、この機械にはCWフィルタが装着になってましたので、これをZDのほうに移植してジャンパ線を外しました。CWフィルタ分だけで1万円前後の元を取った感じです。ちなみに FT-101Zに限らず、FT-901やFT-107のデジタルカウンタを制御するICは特注品で、実はこのICがウイークポイントで、このICがいかれて表示しなかったり表示が欠けたりしてジャンク入りしてしまう八重洲の無線機が多いのですが、2年ほど前にこのICを汎用品を使って自分でプログラムを書き込んだアマがいて、部品の頒布も行っています。デジタルカウンタの表示が狂ってジャンク扱いでオークションに出そうと言う人は、一度ネットで検索してみてください。カウンタ以外はそうは壊れない無線機たちです。更にケースはZSDのほうがきれいだったので、こちらもZDに移植。ギロチンユニットは配線も多く、外すのも取り付けるのも大工事になるので、一計案じてZDのコイル入口変形樹脂部分にタップを立てて少し削ってやり、この処置によってコアがスムースに出入りするようになり、ジャンクからギロチンユニットを取り外さなくとも済みました。これで29MHz部分にCB帯水晶の27.000から28.000までの2波の水晶は残しましたが、ほぼノーマルで機能してさらにCWフイルタを装着した上級仕様らしい100W機のあるべき姿になってよみがえりました。ただしCB帯で酷使されたためか、数年前に終段管交換とのことでしたが、若干真空管がボケているらしくて、80W程度しか出ませんでしたけどね(^_^;)
ところが、この機械はWARCバンドが付いている中期型FT-101ZDにもかかわらずWARCバンドの送信解除がされていません。というのもこの機械の製造時期の1980年頃、世界主管庁会議(WARC-80)でWARCバンドと呼ばれる新周波数帯である10MHz,18MHz,24MHzのバンドが使えることになり、それを見越して各無線機メーカーは従来の機種に新周波数のチャンネルを付け足した無線機を先取りで生産し始めました。ところが諸外国ではすんなりとWARCバンドへの対応が行われましたが、日本ではなかなかWARCバンドの使用が認められなくて、外国向けには受信送信出来る機種を輸出しながら、国内向けには受信は出来てもWARCバンドでは送信が出来ないように送信禁止処置を施している機種を流通させることとなったのです。日本でWARCバンドが交信可になったのは、10MHzにあっては82年、18MHz,24MHzにあっては何と会議から9年後の89年になってからのことですから時代はすでに平成に変わってました。八重洲にあっては、同一の機種にも係わらずWARC無し、WARCありの機種が2通りあるものがいくつか存在しまして、このFT-101Zに関しても中期型AMポジション付きの製造番号170001からWARC対応になっています。他にFT-107やFT-901Dの末期型にもWARC対応のものがあって、初期型とバンドスイッチや局発などが異なり、部品に互換性がない部分があるので注意が必要です。それ以降に発売された機種は、各社WARCバンドに標準で対応していましたが、送信禁止措置は取られていました。
本来輸出品同様の機械を、何らかの回路上の措置によって送信禁止にしているわけですから、その措置を無効にしてやることによって送信禁止措置が解除されるはすです。今流行の広域帯受信機の歯抜け受信をダイオードカットで受信できるように、この送信禁止はダイオードマトリクスによって励振増幅にまで行く段階で受信に落とすような措置を取られていることが多く、現に国内向けTS-830では10MHz帯にあっては途中のロットから送信禁止されていなく(RFユニットD4が最初から無い)、18MHz,24MHzにあっては、RFユニットのD5とD6をカットすることによって送信禁止措置が解除出来るようになっていました。他の無線機でもダイオードカットで簡単に送信禁止解除が出来るものが多く、当然FT-101ZDでもダイオードカットで送信禁止解除が出来るものと思っていましたが、いくら回路図の局発からたどっていっても、輸出用のFT-101ZDと国内向けFT-101ZDで不自然にダイオードが追加された所は見つかりません。30年もアマチュア無線にどっぷり浸かっていて、WARC送信解除のころに当事者だったアマならいざ知らず、開局2年目のビギナーにはそれほどの情報量はありません。ネット検索してもFT-101ZDのWARC送信禁止解除法は出てきませんでした。いざとなったらメーカーに問い合わせればいいやと思い、WARCはあまりやらなかったのと、夏場は10Wで十分だったのでそのままにしておきましたが、ひょんな事から1年経ってネット上で八重洲のWARC送信禁止機種の禁止解除法をすべて見つけました。原典はWARC送信解除法として八重洲がWARC解禁によって急に改造法問い合わせの増えた89年頃に発行した説明書らしくて、一度オークションで出品され4,000円内外で落札されたやつと同じものをそのまま転載したようです。それによってダイオードマトリクスで送信禁止解除していたと推測していたのは大きな間違いとわかり、基本的に前機種で名機FT-101のAUX送信解除同様(CB帯の局発水晶を付けてCB帯に出るためにバンドスイッチの灰色だったか茶色の線を外す)にバンドスイッチのジャンパー線によって送信禁止措置を施していたことがわかりました。他機種は殆どダイオードカットなのに何たること(^_^;)
さっそく全市全郡コンテストの翌日に底蓋を外して手術開始。ほんの5分で処置完了です。いままで14ヶ月も悩んでいたことはいったい何だったんでしょ(笑)いちおう基本的な改造手順はメモ書きしておきますので、最近オークションなどでFT-101Zを落札してWARC送信禁止解除がされていなかった人は参考にしてください。当然バンドスイッチが12ポジションある中期型で後期のタイプ(#170001〜)じゃないとだめですよ。TS-830やTS-930、FT-980や757および102などは今オークションで落札してもWARC送信禁止解除済のものが多いようですが、FT-107やFT-101ZDなどは、1989年のWARCバンド18MHzと24MHzが解禁になるまで現役を退いて押入にしまい込まれたものが多かったからかWARCバンド送信禁止解除をされていないものが逆に多いような気がするのは、わたしだけ?(C) だいたひかる
いままで交信した相手の中にはTS-830でWARCバンドに出ることが出来ることを知らないOMさんがいましたし、ましてFT-101(Zだけど)でWARCに出ていると、びっくりする勘違いのOMさんも出てくるかもしれません(笑)
FT-101Z、WARC送信禁止解除措置手順
まず電源コードを必ず抜きます。(基本です)
底蓋並びにバンドスイッチシールド板のついているものは取り外し、バンド切換スイッチ部分の表パネルから数えて4枚目のウエハー(S1D)に注目します。5枚目にウエハー(S1E)から4枚目のウエハー(S1D)の40m端子に延びている青線、30m端子に延びている青線、17m端子に延びている青線、12m端子に延びている灰色線をそれぞれ5枚目のウエハー(S1E)からニッパでカットします。4枚目のウエハー(S1D)の40m端子に延びている青線は半田鏝で取り外し、30m端子に延びている青線は隣の20m端子に半田付けし、17m端子に延びる青線は下の15m端子に半田付け、12m端子に延びる線は半田鏝で取り去ります。これで取り外した灰色と青色の2本の線が余りました。これで改造終了です。シールドと蓋を元に戻せばWARC3バンドがすべて送信禁止解除になります。ダミーロードをつないで、3つのバンドとも出力が出ていることを確認してください。
なお、この記事による改造の結果とその課程における事故に関しましては、当方では責任が持てませんので、改造はすべて自己責任で行ってください。自分でいじって壊すのがイヤな人、感電して死ぬのが恐い人はお近くのYAESUサービスステーションに持ち込み、すなおに対価を支払って改造してもらうことをお薦めします。
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Comments
FT-107で開局したという先輩がいたのですが、WARCのつかない初期型だったからか、知らないそうです。
89年ころに配布したヤエス発行のWARC送信解除のペラがあったそうですが周りでそういうのを保管している人もおりません。それで確定的なことはわからないのですが、局発から回路図負うとバンド切り替えスイッチ周囲あたりまでにグランドに落とすジャンパーもしくはダイオードがあると思いますので、日本発売物の回路図とアメリカは追倍のものの回路図見比べてその違いをチェックするしかないでしょう。
Posted by: じぇいかん | April 03, 2020 07:48 AM
こんにちは。 楽しく読ませていただきました。 私は最終型のFT-107SM(Warc受信対応)を持っているのですが、WARC送信禁止解除措置方法がネットでは見当たりません。 もしご存知であればご教授いただけないでしょうか。 あるいはURLなどがあればそれだけでも結構です。
Posted by: Motomura | March 30, 2020 10:59 PM
FT-101ZDのWARCバンドの送信禁止解除方法は参考になりました。
FT-101Eの27MHzの送信解除は、回路図ではどこにあたるのですか?
Posted by: 八重洲 | August 15, 2005 03:19 PM