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April 24, 2005

計算尺と無線従事者試験

 家の中から父親が使っていた計算尺が一本出てきました。ヘンミのNO.2634という一般用のポケット計算尺です。たぶん今の人たちは計算尺なんか見たことも触ったこともない人達ばかりだと思いますが、実はタイガー計算機等の手動計算機と共に私も見たことはあるけれども使ったことのない計算ツールの代表でした。ウルトラマン世代の我々はちょうど学習指導要領の端境期にあたった関係で、教科書的には古い教科書と新しい教科書のはざまの中途半端な時期にあたりました。そのために中学で基本的なことを習うはずの計算尺の項目は確か3ページくらいあったのにもかかわらず、実際に計算尺を使って計算するという授業はなく、「対数というものを使用して計算数値を読みとる道具で、ノギスによる長さの測定も同様原理によって行う」という知識を得たに過ぎません。たぶん我々の代から教科書は前年と変わらずとも、学習指導要領で正式に計算尺の授業が「省略」されたのだと思います。おそらく翌年の新しい教科書から計算尺のページが消滅したことでしょう。また、カシオミニを皮切りに小型の電卓がオムロンやシャープから矢継ぎ早に出た時代であり、高校入学時にはすでに計算尺の製造も終了してました。ちょうどアナログとデジタルのはざま時代に中学高校時代を過ごしたことになるようです。工業高校に進んだ連中のツールはシャープが世に送り出した関数電卓「ピタゴラス」で、多分試験には使用できなかったはずですが、日常使用はすでに電卓という時代でした。その他、我々の世代がある、無いの境目だったのは、レポートで散々世話になったリキッドペーパ、8ビットのマイコン、パーソナルワープロ、ファックス、乾式コピーなど沢山あります。その端境期の世代としてガリ版印刷、和文タイプライター、電動英文タイプライター、湿式コピー、テレックス、なんかも使いましたけどね。それ以降の40年代生まれの人たちは全くそういう経験がないと思います。そんなわけで、我々より以前の世代は学生時代に真空管なんか使って回路を作った経験はあってもハイテク音痴というか、究極のアナログ世代というか、パソコンを使いこなすようになってからまだ数年で、ネットはインターネットが最初いう人が多いように思います。
ということで、関数電卓があれば事足りる数値計算ですけど、計算尺というのも「目盛で概算を読みとる」という欠点を除けばなかなか計算ツールとしては便利なものです。まず電池がいりません(笑)計算尺系のウエブページを覗くと、どうやら計算尺は使用可であるのに計算機が持ち込めない試験というのは「無線従事者国家試験」のみのようです。1陸特を除く特殊無線技士試験やアマチュアでも2級以下、航空通、3,4海通試験は複雑な計算は出題されないので、計算尺の必要性はまったくありませんが、1アマ、1陸特以上のレベルの試験になってくると数値計算には「あるとかなり便利」なツールで、特に答えの数値を5択で選ぶ場合には概算値が読みとれるために筆算で小数点以下何桁まで計算しなくとも目盛に表示されるおおよその値で答えを選ぶことが出来そうです。特に「角度で○度離れた×メートルの地点での電界・磁界強度を求める」的な三角関数が絡んでくる計算は、いちいちsinの何度がいくつとかcosの何度がいくつとかの数値を暗記する必要がありません。
 ただし計算尺の中には「電子工学用」というものがあって、1を2π√LCで割るLとCの組合せが速読できたり、デシベルと真数の計算が瞬時に出来る計算尺があり、これはさすがに使用禁止となっているので、計算尺使用の際は試験官のチェックを受けるようにとのことです。
また、計算尺はその長さと精度が比例してくるので、できればポケットタイプの計算尺ではなくて25センチから30センチの計算尺を使った方がより近い数値を読みとれます。戦艦大和は計算尺と虎印手動計算機で設計されましたが、その際に使用された計算尺は全長4メートルもある特注品だったそうです。
 でも実際の従事者試験で計算尺を持ち出してくる受験者に未だ遭遇してしません。製造中止して30年経つので、巷に売られていないのは仕方が無くても、計算尺の現役だった50代60代の受験者が便利な計算尺を持ち込んでいないのが不思議でした。おそらく計算尺をバリバリ使いこなすくらいの理系・工業系の人だったら、もっと若いうちに簡単に上級アマの免許くらい取っていたってことでしょうか。最近は計算尺もちょっとしたブームになり、複雑な目盛が絡み合う技術用両面計算尺が人気で、かなりの金額を出さないと買えません。ただし、無線従事者国家試験の類は、一陸技であっても昔大量に生産されて、古物市場では捨て値同然の簡単な「中学生用計算尺」でも十分に実用になり、手計算より圧倒的に素早く正解の近似値を求めることが可能です。「5択の答えの中の一つの数値が計算尺の示す値にぴったり一致したとき、得も言えぬ快感が走った」という計算尺フェチもいるようです(笑)
 で、こちらも計算尺が手に入ったので、計算尺の威力を試したいばかりにそろそろ2陸技でも勉強始めようか、と思ってみたところで問題発生。寄る年波で、何と計算尺の細かい目盛がじぇんじぇん見えまっしぇん。ざんね〜ん(T_T)
syaku
 NO.2634と説明書。記号によると昭和38年10月の製造らしいです。説明書はネット検索してプリントアウトし、製本しました。ポケット計算尺ゆえ、目盛が細かすぎて有効数字ふた桁の読みとりが怪しいので、のち8インチの中学生用計算尺No.45Kを入手。2634と表の目盛配置が同じなので重宝しますが、ちょっと安っぽいですね(^_^;) 奇しくも刻印NKで、2634と1ヶ月違いの昭和38年11月の製造らしいです。

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Comments

 はじめまして。計算尺、大変懐かしい。工業高校に通っていた頃(10年弱前)に父から譲り受けたものを使っていました。
 とはいえ、授業ではまったく使われず実用的な使い道は確かに無線従事者の試験くらいでした。難儀な計算も概数があっという間に出せるので、上級資格の計算問題には本当に重宝しました。
 二技や航空を取ると卒業時の単位に加算があるというところに一技をもって行ったら、リストに無いから単位に加算できない、と言われてしまった珍事を思い出します。結局付いたかどうかは忘れてしまいましたが…

Posted by: sophia(rc) | May 27, 2007 06:46 PM

 計算尺は慣れると面白いんですが、いかんせん昭和34年型の目玉には適合しなくなりました。シニア世代にはちょっとつらい計算用具かもしれませんね。まあ、何とかメガネ外せば使用化っていう感じでしょうか(^_^;)

Posted by: じぇいかん | April 28, 2005 10:15 PM

 昭和38年11月というと、ちょうど私の生まれた頃です。一応計算尺の使い方は独学で習得し、机の引き出しには初学者向けの計算尺が入っています。しかし私は暗算で位取りするのが下手くそで、どうも計算尺を使いこなせないようです。RPNの電卓なら苦もなく使えるのですが。

Posted by: 秋山 | April 28, 2005 03:51 PM

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