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April 23, 2005

上級ハムになる本

 先日、上級アマチュア無線技士国家試験のバイブル的存在である無線工学解説書「上級ハムになる本」の1991年改訂版を何とたったの100円で入手してしまいました。この本の著者であるJA5AF大塚政量OTは戦前から戦後に掛けても四国地区の代表的なアマチュア無線家であるだけでなく、長年JARLの理事を務められましたが、本職は国立宅間電波工業高等専門学校電子工学科の教授でした。その長年教職に就かれていた経験からか、未だもって無線工学の入門的解説書としてはその存在価値を失っていません。多くのアマチュア無線家が上級資格を取ったあとでも「上級ハムになる本」を本棚の一番いい場所に収めてあるとか、陸技を取得するときにも何回も見返したとか、未だにその信奉者が多くおりますが、おそらく最後の改訂が1997年だと思いますので、大塚先生が健康を害されて自身で改訂加筆出来なくなり、次々に新しい問題が出題されてくるペースに追随出来なくなって「絶版」になったと思われます。また、基本的に「記述式試験」に対応した本なので、じっくり原理原則を解く本なのですが、試験自体が「選択式試験」に変わったために必ずしも試験に合格するためには原理原則を覚える必要が無くなり、時代に合わなくなってきたということも言えるかもしれません。「選択肢を選ぶ試験」に変わってしまった事によって「答えの選択肢丸暗記」などという勉強法のみで1アマ試験に臨む受験者が多くなり、そういう受験者は「過去問題集」1冊のみを勉強し、「難しい問題であるキルヒホッフの法則、電界強度、磁界強度の計算、複素数による回路計算は覚える為の無駄な時間を省いて、いざ試験にこの問題が出てきたらあっさり捨てる」主義だそうですけど、まあ合格する手段だったらどういう方法を取っても構いませんが1アマの免許を持っていて高周波の基本も理解していないのは明らかに問題です。今の試験勉強は「なぜLRC回路の計算が必要なのか」などの基本的なことを解説する本がなくて、ただ過去問にこういう問題が出たのでその解答法を載せるということに終始しているような気がします。
 その上級アマ国家試験が選択式に変わり、選択式試験以降の新問題を解説した無線工学書がJA1MKS野口OMによる「解説・無線工学」です。「上級ハムになる本」が昭和42年の初版発行時の定価が600円、最終版の定価が1,680円だったものが、「解説・無線工学」の定価は2000年改訂版で2,800円、現最新版が2,940円です。ページ数は変わらないのにずいぶん値段は上がったものですね(^_^;) 上級アマの受験料もずいぶん上がりましたけど。
 「解説・無線工学」は選択式試験以後に出題された試験問題を解説することを基本にしていますので、無線工学全般の解説書としてはちょっと物足りない感じがしますが、これから5年10年を経て改訂を繰り返すと、無線工学のバイブルとして内容も充実してくるのでしょうか?内容充実と共に定価も3,400円くらいになるかもしれません。
 もっとも未だに「上級ハムになる本」がその価値を失わない理由がもうひとつあります。それというのは「試験を作成する側が、上級ハムになる本をたたき台にして国家試験を作成している」という噂のためです。よく国家試験に「各種の回路」に関する新問題が取り上げられることがありますが、あとで調べると「上級ハムになる本に類似問題があった」という話はよくあります。もちろんそういう問題は「解説・無線工学」に解法を求めることができません。「上級ハムになる本」→「試験問題の作成」→「試験実施」→「解説・無線工学の改訂」という図式が成り立つようです。確かに以前の記述式試験時代では基本的な回路関係の作図と特徴などを求める問題が1問くらい必ず出てきて、各種装置の回路を覚えることがまず必須でしたが、そのためか「上級ハムになる本」は回路関係に関する比重がかなり高くなっています。現代では回路を自作することは皆無になり、基本的な増幅回路さえよく理解していないまま上級アマになった人が多そうですが、「解説・無線工学」でも回路解説のウエイトが低くなり、実際の1アマ国試で真空管のプッシュプル増幅回路の動作原理を説明する穴埋め新問題が出題されたときに、額に脂汗する受験者も多かったみたいで(笑)
 ということで、受験回数が複数回に及び、藁をも掴みたい上級アマ受験者にとっては「上級ハムになる本」を入手することは必須で、上級試験前になるたびにオークションでも価格が高騰するんですが、ちょっと計算も怪しいような文系受験者にとっては取っつきにくい本であることも確かです。独立して「無線数学」の章が設けられていて、平易に計算法を解説してくれておりますが、特に中学あたりの四則計算も怪しく、三角関数も対数もさっぱりわからないような受験者は、最初は通称ガルスカ本「楽しく覚える1アマ攻略」あたりから1アマ試験の門を叩く事を否定しません。でも感覚的に3を4で割った答えが1より大きいか小さいか一瞬悩むような受験者は筆算で1アマの計算問題は無理で、まず中学・高校の数学の勉強から始めた方がよさそうです。私は上級アマ受験前に高校時代の数学事典という小冊子の世話になりました。最終的には自己努力と工夫で目標である1アマ試験を勝ち取る必要がありますが、楽して1週間くらいの勉強で1アマ試験に引っかかる方法は、今現在のところはありません。
 私が上級ハムを受験するにあたって、すでに「上級ハムになる本」は絶版で入手不可だったために、「解説・無線工学」と「第1級ハム国家試験問題集」さらに絶版寸前の「第1級・解説付き問題集(カエル本)」の3冊を入手しただけで1アマ試験は1回だけで済ませてしまいました。今回入手した「上級ハムになる本」の前オーナーは3アマで挫折してしまったらしく、我が手元に来ても「この本のおかげで試験に1発合格した」と感謝される存在ではありませんが、無線工学を忘れないためのトレーニング本として活用するつもりです。ただし寝る前に3ページ読むともうそれだけで熟睡できますから、睡眠薬代わりの存在でしょうか?(^_^;)jyou

 

 

 

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Comments

突然失礼します。

2020年6月です。
ご明察の通り解説無線工学は3400円になりました。

Posted by: タハラヒサシ | June 13, 2020 08:55 PM

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