第1回電話・電信級アマ国試試験問題
昭和34年4月2日に第1回目の電話級・電信級アマチュア無線技士(現4級3級アマチュア無線技士)国家試験が実施されましたが、これは初級アマチュア無線技士資格の要望に従い、郵政省でもいままでの資格制度では難易度が高すぎて、急増するアンカバ局対策上でも初級アマチュア無線技士資格制度が必要と考え、閣議を経て前年の衆参国会に上程され、電波法一部改正が承認されて昭和33年11月5日からアマチュア無線技士資格が4資格となる改正法が施行されたことに伴う最初の試験実施となります。また、旧2級資格の新2級資格へ移行試験の実施や、新2級資格の操作範囲なども定められ、又従事者免許の有効期限が廃止となり、改正法施行以後が有効期限となっている従事者免許は終身有効免許になる等、細かな改正事項もありましたが、こちらは割愛。
さて、国試の話に戻りますが、昭和34年4月2日に初めて行われた電話級・電信級試験の問題は記述式で、電話・電信級ともに無線工学・電波法規は記述式の問題が各10問出題され、問題は電信級のみ一部CWに関する問題に変わるだけで、その他は共通の試験問題でした。こうした記述式試験は昭和45年10月期から択一式試験に代わり、現在4級と名称は代わっても4択の無線工学12問、法規12問の試験であることには変わりません。
電話級・電信級アマチュア無線技士試験の第1回試験問題を記しておきます。
電話級アマチュア無線技士試験(昭和34年4月2日実施)
無線工学
問1 コイルの自己誘導作用を説明せよ
問2 定格が100V、40Wの電球に定格電圧を加えて使用している
とき、この電球の抵抗は何オームか
問3 傍熱型三極管における各電極の名称と役目を記せ
問4 真空管発振回路の一例を図示せよ
問5 無線電話送信設備において、送話した場合に送信出力が変調
を受けているかどうかを知る方法を一つあげて簡単に説明
せよ
問6 スーパーヘテロダイン受信機とは、どういう方式のものか、
簡単に説明せよ
問7 100Vの交流電源から、送信機の直流高電圧を得るため
には、どういう部品を用いるか、主なるものをあげよ
問8 送信空中線の同調は何のために行うか
問9 受信機に受信障害を与える電気機器はどんなものが
あるか、3つ上げよ
問10 第1図は電気計器の記号である。おのおの
どういうメーターか(図省略)
電波法規
問1 アマチュア局が送信装置を取り替えようとするとき、
どうするか
問2 アマチュア局の無線従事者がその免許証を失った
ときは、どうするか
問3 アマチュア局の目的の範囲を超えて運用できる
通信を2つあげよ
問4 アマチュア局において使用を終わった無線業務日誌
の保存期間を記せ
問5 アマチュア局は、自局の発射する電波が他の無線局
の運用又は放送の受信に支障を与えるときは、どうするか
問6 アマチュア局において、電波法令に違反して運用
している無線局を認めた場合はどうするか
問7 電話級アマチュア無線技士がアマチュア局を開設する
には、免許を受ける必要があるが、又免許を受ける
必要があれば、誰の免許を受けなければならないか
問8 A3電波を使用するアマチュア局の発射電波に許される
周波数帯幅の値はいくらか
問9 電波を発射して、無線機器の試験又は調整を行う場合
に送信する「本日は晴天なり」の連続は、何秒以内に
限られているか
問10 無線電話によって、免許状に記載された通信の相手方
である無線局を一括して呼び出す場合の送信事項を記せ
電信級アマチュア無線技士試験の電話級試験との差替部分
(他は電話級試験と共通)
無線工学
問5 無線電信送信設備から発射されているA1電波を観測して
みたところ第2図(省略)のような波形であった。もし
高圧直流電源に著しいリップルが含まれている場合、波形
はどのようになるか図示せよ
電波法規
問7 電信級アマチュア無線技士がアマチュア局を開設するの
には、免許を受ける必要があるか、又免許を受ける必要が
あれば、誰の免許を受けなければならないか
問8 電波形式A1を使用するアマチュア局の発射電波に
許される周波数帯幅の値はいくらか
問9 電波を発射して、無線機器の試験又は調整を行う場合に
送信する「VVV」の連続は、何秒以内に限られているか
問10 無線電信によって、免許状に記載された通信の相手方
である無線局を一括して呼び出す場合の送信事項を記せ
この第1回目電話級・電信級アマチュア無線技士国家試験は全国で何と1万人以上が受験したそうで、急増した無線局免許申請に対して電波監理局もいちいちすべて落成検査を行うことが不可能となり、電話級・電信級免許による出力10W以下の無線局申請には、JARLの認定補償制度を昭和34年度中から実施することになり、認定補償を受けた場合には予備免許と落成検査を経ずに無線局免許状が交付されるようになったそうです。実はこのときの郵政大臣が後のロッキード事件で有罪になった元総理大臣田中角栄で、初級アマチュア無線技士2資格の新設は田中角栄郵政大臣の力無くして実現しなかったものです。しかしまあ、初級無線技士の新設はJARLからの度重なる要請があったとは言え、果たして損得勘定抜きに田中郵政大臣が「国際通信条約の無線通信規則上のアマチュア資格要項」を無視して電話級免許を新設した訳があり得ません。「電話級10WのA3電波は外国まで飛ばないから、国内法のみ摘要されればよい」との理由付けでしたが、何か特別な利益誘導が裏に隠されているのではないかと勘ぐる人間は私だけじゃないでしょう。現にすぐにSSBが主流になってHF10Wでも外国に混信妨害を起こす可能性が出てきました。そして、電話級試験第1回目から45年を経た2005年1月1日。旧電話級の4アマは国際通信条約の無線通信規則一部改正の発効により、晴れてCWの試験を課さないアマ資格ながら、HFの運用は条約違反ではなくなりました。ただし未だにアマチュア局の操作を希望するための能力の基準に関する指針の最新版の勧告:ITU-R M.1544に合致していない部分(国際法規試験を課さず)は相変わらずです(^_^;)
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