毒物劇物取扱責任者試験受験記
他の試験と並行で1年掛けて6種類全部取得した乙種危険物取扱者免状ですけど、どうも法律的に調べてゆくと危険物であっても消防法的には危険物取扱免状で扱ったり貯蔵することが出来るのに、また毒物劇物取締法という法律で、毒物劇物取扱者の資格も持っていないと実際には取り扱えない危険物が数多くあります。というのも法律の主旨が火災予防上の見地からか、公衆衛生上の見地からかというスタンスの違いがあるからです。そのために危険物の免状を持っているだけでは不十分であるし、また、危険物受験のときの知識が生かせるのであれば、最短距離で取得が可能な資格ではないかと思い受験することにしました。まずいつものようにネット上で情報を調べますが、危険物と違って意外と実際に受験した人からの情報が少ないようです。情報をリサーチしてわかったことは、全国統一の試験ではなく都道府県の薬務課が年に一度試験を行うこと。7月8月の試験実施の都道府県が多いが、居住地以外の都道府県に受験申請しても試験を受けることが出来ること。試験には主に筆記試験で毒物及び劇物に関する法規・基礎化学・毒物及び劇物の性質及び貯蔵その他取扱方法の問題が出され、更に実地試験として毒物及び劇物の鑑別及び取扱方法を試験するということになっており、各都道府県によってその問題数や試験方法がまったく異なるために難易度にかなり差があるようでした。その合格率の差たるや20%そこそこの合格率の県から50パーセントを超える県までいろいろでした。受験料は都道府県の収入証紙で11,000円と意外に高額ですから、冷やかしで受験するには受験料が勿体ないですし、年に1度の七夕試験ですので当初、受験をためらっていました。それに地元の書店では良い参考書が入手できません。そうすれば待てば海路の日和ありで、ネットオークション上で毒物劇物試験のスタンダードである参考書の弘文社発行「毒物劇物取扱責任者試験、試験問題の解説・解答」と「これだけはマスター!基礎固め毒物劇物取扱責任者試験」の2冊の合計5,300円を3,000円ほどで入手し、4月末に地元の保健所に願書をもらいに行く覚悟が出来ました。参考書を譲ってくれた人は、参考書を揃えたものの結局使うことなく挫折してしまったそうで、まったくの未使用品でした。ちなみに試験会場で見かけた参考書はすべてこの1冊または2冊でした。地元保健所でもらった願書はコピー用紙で原本をコピーしたようなシロモノで、なんかこういう試験申込書だとあとの試験がちょっと不安になってきます。5月の連休後に試験申込書と写真を貼った写真票ならびにコンピュータ入力用紙に必要事項を書き込み、市役所で戸籍抄本を一通もらった後に地元の保健所に出掛けました。そこで受付に来意を伝えると、まず11,000円の証紙を買わされて中に入れられます。薬務課の人間が不在だったために窓口のおじさんに持参書類を点検してもらい、収入証紙に割り印をしてそれで申込終了です。窓口のおじさんに「ぜひ合格できるようにがんばって下さい」と言われて勇気づけられました(笑)
まず危険物試験もそうですが、各物質の名称と性質を覚え込まないと始まりません。ところが毒物劇物は危険物と違ってジエチルパラニトロフェニルチオホスフェイトなんていうのは序の口で、ブチル=2,3−ジヒドロ-2,2−ジメチルベンゾフラン-7−イル=N,N’-ジメチル-N,N’チオジカルバマートなんていう物質が山ほど出てくるのです。こういう物質名は丸暗記するわけにはいきませんからそれぞれどういう類の毒劇物なのか意味を理解しなければいけないのが煩わしくて、結局7月まで手を付けませんでした。その間ハイバンドが調子よかったので、せっせと無線に精を出していましたが、そのうち突然JARL支部大会の議案製作を頼まれてまるまる7月10日までなにも出来ませんでした。さらに7月24日には2種電工の材料選別試験ならびに単位工作試験も控えています。そのために24日までは後半の3日だけを2種電工試験の材料選別の復習にあて、それまでの間、まず出題が多そうな毒物・劇物の性質・用途・貯蔵法・毒性・処理法・注意事項をノートとA4の壁紙にまとめる作業を行いましたが、これだけで約1週間かかってしまったような感じです。それから法規の要点をノートにまとめ、最後に基礎物理化学の演習を行いました。そのうちに2種電工試験が迫り一時中断。7/24日の2種電工試験終了後は後回しにしていたモル濃度の異なる物質を混合することによる濃度計算などの計算問題をこなし、このときは計算尺が大活躍。そういえば高校時代に化学を習っていた教頭先生は計算尺片手に化学の計算をこなしていましたっけ。さらに濃度による毒物・劇物の除外一覧をまとめましたが、のちにこれで40問中4点の問題で出題され、これが完璧に解答できたので、後が楽でした。とはいうものの、危険物の試験と比べると法規は非常に簡単なような気がしますが、基礎化学は高校の化学をしっかり復習しないと難しく、さらに毒物劇物の諸性質は危険物で言うと1類2類3類4類5類6類の毒性物質が全て含まれてきますので、その全てを覚えるのは危険物甲種くらいの難易度が要求されるかもしれません。さらに危険物取扱者試験に比べて情報が少なく、問題集でも一部記述式試験のような問題が出てくるために北海道で果たして択一式マークシートの解答方式か、一部記述式の解答が要求されるのかもわかりませんし、さらに筆記による実地試験の具体的な問題例がまったくわからないうちに8/4日の試験日を迎えてしまいました。試験は札幌の北海道自治労働会館で12:30集合の13:00開始です。法令・基礎化学の試験、毒物劇物の性質・貯蔵・その他取扱方法と鑑別の2種類の試験がそれぞれ90分の時間内で行われます。前者は「一般・農業用品目・特定品目」の受験者共通で、後者のみそれぞれ別な問題が出題されます。解答は全てマークシートによる択一式でした。試験開始から30分経過すると途中退出が認められます。試験会場に入ると殆どの人間が弘文社の参考書を広げて最後の追い込みに入っています。こちらは濃度除外規定をまとめたノートで最後の確認です。
試験開始時間になり、問題用紙を見ると、法規は問題ありませんが基礎化学で異なったモル濃度の物質の混合や中和のための溶液量の計算、さらにpH値の対数計算などもありますので、計算をすべて捨てて掛かってきた人たちには点数が取りにくかったでしょう。良く覚えておいた有機リン系毒物の解毒剤の正解の組合せなんていう問題も出てきました。慎重に解答したつもりでしたが、20分くらいで40問を書き上げ、30分の退出可能時間をまって3番目くらいに解答用紙を提出して退出。試験終了まで1時間ありましたから近所のヨドバシカメラを冷やかしに行ってしまいました(笑)
試験終了5分前くらいに戻ってくると、農業用品目を受けに来たと思われる高校生の集団が廊下でうるさく答え合わせをしていました。また、廊下には空調が効いていないので暑いこと暑いこと。やっと試験終了時間になり試験場の扉が開きましたが、最後まで15人くらいは残っていた感じでした。明らかに勉強が足りないようで。
15:00分から性質・貯蔵・その他取扱方法と鑑別試験が行われますが、この試験は一般・農業用品目・特定品目の受験科目によって問題が異なり、一般>農業用品目>特定品目の順に出題範囲が限定され、扱える物質にも制限が加わります。この試験もマークシートによる解答方式でした。試験開始時刻になり問題用紙を広げると1問目に濃度除外規定の%を答える問題があり、いきなり4点確実にゲットしますが、あとはあまりよく出てこない物質の性質を問う問題などがあったり、中毒症状を問う問題、さらに廃棄方法として処理に加える物質を問う問題とか具体的な鑑識法を問う問題なども出て、いちいち化学反応式を書いて確認しないと解答できないような問題が続きます。そのうち30分経過して退出時間になると、受験者が一斉に立ち上がり2/3が退出してしまい試験会場が閑散となりました。こちらはまだ化学反応式と格闘していて一度こうだと思って解答した選択肢を書いたり直したりの繰り返しで、とても30分で書き上がるような余裕はありません。結局45分経ってから「だいたいこれくらいだったら6割以上は点数が取れただろう」という水準までもって行き、解答用紙を提出して試験が終了しました。落ちる気はしないけれど、確実に受かるという確信ももてないまま後日、道の薬務課から解答が出たようですが、答え合わせすることもなくそのままインターネット発表の9月2日を迎えてしまいました。
ネット発表は2種電工と同日同時刻だったので、まず2種電工の合格を確認後、道の薬務課ホームページでの合格者一覧を見ると、しっかり番号がありました(^_^;)
同じ試験会場で受験した82人の一般毒劇物取扱者試験のうち、合格者は19人でした。合格率は受験した札幌の会場に限っては平均27%よりやや低く23%あまり。考えるに諸性質・鑑別試験で30分の退出時間にどっと退出したのは受かる確信があって退出したのではなくて、どうやら自分の勉強不足で途中で試験をギブアップし、適当に番号を選んでマークシートを埋めただけの人たちのようでしたね。インターネットで合格者が発表されたその日のうちに地元の保健所から「毒物劇物取扱試験合格書」の交付を受けました。受付の時と同じおじさんが「難しい試験をよくがんばったね」と誉めてくれ、ちょっとうれしかったです(笑)免状交付の必要がないので、受験料と免状申請手数料を合わせれば11,000円近くになる2種電工と結局は同じくらいの取得費用になるようです。
しかし、このA4のプリンター打ち出しのペラペラの合格証、何とかなりませんか?(^_^;)
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