HEMMI No.255電気用計算尺
オーストラリア旅行から帰ってきた妹の一家がやってきて、お土産にTシャツを1枚もらいましたが、南半球ではこれからが夏本番になるんでしたな。ここ2日ばかり暖房が欠かせなくなり、周辺部ではもう20センチ以上も雪が積もったところも出始めているので、来年の夏までTシャツを着る機会などなさそうです(^_^;) その夕張出身で現役トヨタマンのダンナが転がしてあった計算尺を見つけて言うには中学でも使ったし、工業学校(トヨタ工業学園)でも散々使わされて何級かの計算尺検定まで取らされたとのこと。その妹のダンナは自分より1つ年上なだけなのにも係わらず、計算尺はばりばりに使っていて、片やこちらは中学校でも無視された科目だったので計算尺を触ったこともなかったというこの1年の差でこうも違うのはどういうことだったんでしょう。さすがは学習指導要領の端境期であり、一期校二期校最後の受験学年で、中型二輪免許の最初の洗礼を受けた我々の学年だけのことはあって、誠に真空管とトランジスタが混在するような「中途半端やなぁ」という時代に育ったのでした(笑)まあ、妹のダンナは使い方すらすっかり忘れたと言っておりましたので、適当なヤツを1本手に入れたら進呈すると言っておきましたが、工業学校でばりばりに使っていたとなると、両面計算尺じゃないといかんのかなぁ?
さて、今回京都からやって来ました計算尺は例の「島津製作所旧備品」とおぼしき薩摩島津家の家紋である丸十のついたHEMMI No.255電気用計算尺です。結局自分が落としてしまいました(笑)
島津製作所の創業者は薩摩島津家の系統ではないのですが、豊臣秀吉の時代に摂津の国で島津公に大変な恩義を与えて、そのために島津の姓と丸十の家紋を許されたと言うことで、400年の間綿々とそれが受け継がれてきたというわけです。この計算尺は刻印がGAですから昭和31年の1月の製品です。当方似非2種電気工事士(一応ライセンス持ち)ですが60Vを超える電圧の回路を扱ったのは、胆振日高支部長宅のハロゲンヒータが着かなくなったからと修理を依頼されて、切れた温度ヒューズ(中国製の不良部品)を圧着端子を使って交換しただけなので(家電修理には電気工事士免状は要りませんが)電気用計算尺などはあまり使いそうもありません。この計算尺は屋内配線を本業とする者にはあんまり関係なく電力供給や送電関係の電力マン必須の計算尺とでも言うべき計算尺です。電験三種の勉強を始めるのならともかく、2種電工で双曲線関数なんか使わないよなぁ(^_^;) まあ普段使うにしても十分な尺度を備えてますけど、持ち歩くのならNo.259系の計算尺の方でしょうか? この計算尺も40年代にはNo.255Dにモデルチェンジされまして、これもどうやら裏にDI尺が増えた変更のためのDの付番だったような感じです。見かけは255DになってLL尺が表に出ましたので、表を見る限りは特殊な計算尺には見えなくなりました。また滑尺裏の三角関数がラジアンの角度表示なんですが、No.255Dになって度数表示に変わったようですね。交流の位相が絡む計算にはラジアン(θ)を使う計算式が多いのですが、普通の三角関数計算ではラジアンと普通の角度を換算しなくてはいけないので面倒くさいです。そういえば、いつのまにやら電験三種の試験は計算機もしくは計算尺が使用可だったものが、計算尺持ち込み不可に変わって、指定の計算機のみ(関数のないもの)だけが使用できるように変わったようです。無線従事者試験にあっても計算尺が締め出されるタイムリミットが近づいているのでしょうか?それだったら使えなくならないうちに2陸技くらい取って置いた方がいいかなぁ?(笑)
学校で使われただけでそのまま放置されていた計算尺と違って、会社の備品ということで、見かけはかなり使い尽くされた小汚い計算尺でした。ところが、じつに丁寧に長い期間に渡って使い込まれたことがよく判る計算尺で、カーソルは新しい40年代のものにまで交換されて使われ続けたようですし、固定尺を繋ぐ金具なんか、長年の使用で親指があたるところがツルツルになっているくらいです。それなのにも反りもまったく見受けられず、上下の尺の狂いもカーソル線の傾き、裏表のずれもなく、見事に「仕事の道具」として大事にされていたことがわかる尺です。学校で使ったきり押入にしまい込まれた計算尺や、文具店のデッドストックなんかの計算尺に比べればちゃんと仕事で実績をのこした計算尺はすがすがしさを感じます。
一度分解して磨くために例によってカーソルと固定尺のネジを外してバラバラにし、カーソルガラスはレンズクリーナ液で磨かれ、分解された尺は酸化珪素粒子の入ったサビ取りペーストで一皮剥くと黄ばみも黒ずみも気にならなくなる程度に回復しました。しかし、刻印Gの尺はNo.257もそうでしたが1年新しいH刻印の尺に比べてセルロイドそのものが黄色っぽい感じがします。H刻印の尺からは40年代の尺同様に白っぽい感じを受けますが、片面、両面でも微妙にセルロイドの違いがあるみたいで、一概には断定できませんが。組み立てて上下の固定尺を調整し、カーソル線の傾きと裏表をきちんと調整したNo.255は滑尺に蝋引きすることも必要ではなく実にスムースに動くようになりました。この計算尺でどんな測定器の設計をしていたのかはわかりません。計算尺に問いかけても答えが返ってくるわけではありませんが、確かに何かの仕事を成し遂げてきた計算尺でした。
HEMMI No.255(前期型)の表面拡大画像はこちら
HEMMI No.255(前期型)の裏面拡大画像はこちら
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