ディア・オールド・ストックホルム
最近、故大塚博堂氏の名曲「ダスティンホフマンになれなかったよ」の歌詞によく似たことを知り、少しだけ自分の周りの「時の流れ」だけが遅すぎたような感覚に陥って、さらに雪に閉じ込められるような冬の季節を迎えて少しだけ心の弱気にかかってしまいました。普段の自分じゃあんまりコンプレックスの持ち主だとは思わないんですが、季節的にも何か心に弱気の虫が走り、こんな時酒でも飲んでわいわい騒ぎ、気分転換を図ろうにも酒とはすっぱり縁を切って間もなく4年ですから、酒で気分転換を図ることも出来ません。そうなったら徹底的にセンチメンタルな曲を聴いて徹底的に落ち込むことによっての逆療法です。こういうときは演歌じゃいけません。もっとも日本のソウルミュージック・都はるみを除き、大部分の演歌はどれもこれもパターン化されていてみな同じ曲に聞こえますし、自分はまったく演歌という柄じゃありません。冬の雪に閉ざされた夜に聴くにはジャズが一番。それも明るいメジャー調のスタンダードじゃなくてマイナー調のスタンダード曲が良く似合います。編成はトリオ以下に限ります。クインテット以上だとそれぞれの楽器が主張し合ってうざい。となるとピアノトリオの中から思いっきりセンチメンタルな曲を捜しますが、スタンダードの曲解釈によっても様々に印象が違ってくるので難しいところですが。「枯葉」は季節的に遅すぎますし、エバンスもウイントン・ケリーの演奏でもちょっと落ち込めない。徹底的にセンチメンタルな曲というと、レイ・ブライアントによる「ゴールデン・イアリングス」あたりがいい線を行っていると思いますが、昔からあんまり聴きすぎて耳に馴染んでしまってダメ。マイ・ファニー・バレンタインはチェット・ベーカーを始めとして取り上げられた事も多いのですが季節が早すぎるし、中にはアート・ペッパーみたいなセンチメンタルに陥れないマイ・ファニー・バレンタインもあります。モンクのラウンドミッドナイトは神々し過ぎという事で、しばらくぶりで聴いた曲は「ディア・オールド・ストックホルム」というスタンダード曲。この曲は原曲はスウェーデンの民謡のようですが、季節的にも雪に閉ざされた今の「全ての物の色彩が白一色に変えられた季節」に聴くのにぴったりです。どこか頭の奥に染みついているメロディだと思ったら、スメタナの「モルダウ」の原型にもなったほど昔から伝わる曲なんですな。ジャズ界でもスタンゲッツを始めマイルス・デイビスやポール・チェンバースのBN1569、コルトレーンからエディ・ヒギンズあたりにまで取り上げられていますが、少し弱気になった自分の心に見事にはまってしまったのは、アケタの店でも有名な明田川荘之氏の「室蘭・アサイ・センチメンタル」の中の2曲目のディア・オールド・ストックホルムでした。これ、いつ頃買ったのかまったく覚えていませんし、日本のジャズメン自体、山下洋輔氏以外のCDはあまり買ったこともないはずでしたが(考えてみたら日野皓正のハイノロジーとか藤、渡辺貞夫なんかの昔のLPがどこかに30年も放りだしてあるはず)。この16分近くに渡るピアノトリオの演奏でディア・オールド・ストックホルムという曲のテーマが頭脳に焼き付いてしまい、どこまでも白い雪景色を想像すると、このテーマが頭の中に流れて来るのですからかなりはまりました。アケタのCDはなかなか扱っているところが少ないのですが、今ではネットで入手可能ですし、なによりアケタの「ディア・オールド・ストックホルム」だけ音楽配信でダウンロード出来るんですから時代は変わった。とはいえ、うちの音楽環境自体もiTunesを作動させたMacintoshとアナログオーディオをデジタルオーディオプロセッサ介して結んでいるだけで、3500曲ほどのコンテンツをジュークボックス状態で再生しているだけですが、Macのファンの作動音が気になるので、出来ればファンレスのMacが専用で欲しいところです。何か巨大なiPod状態といえば話が早い(笑)
しかしジャズはやっぱりスタンダードに限ります。去年の「SWING・GIRLS」という山形の女子高校生達のジャズビッグバンドの映画があり、最近TVで放映されましたが、朝ドラの「ファイト」にも出ていた本仮屋ユイカちゃんが、交差点で盲人用信号音のスコットランド民謡「故郷の空」を聴いて「これってジャズ?」って上野樹里達に尋ねるシーンがありましたが、あれはリズムの話ですが、どんな曲でもジャズのテーマとしてスタンダードになる可能性は山下洋輔氏の「仙波山」でも証明されていますよね(笑)何回もディア・オールド・ストックホルムを聞き直して、急にジャズピアノを弾いてみたくなりましたが、肝心のピアノは30年近くも調律もされず、物とか本とかが積まれているような状態ですから、寒いピアノ部屋でピアノと格闘するよりは、KORGのX2でも自室で弾けるようにセットアップでもしてみましょうか。
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