RICOH No.1051S 両面計算尺
この計算尺ははるばる九州は宮崎の都城近辺からやってきた計算尺です。先週未開封のNo.1051S-1を手に入れましたが、その比較検討用に入手した「-1」のつかない単なるNo.1051Sです。殆ど使わないうちにしまい込まれた(20回程度)とのことですが、箱がかびでも生えてボロボロになったのでしょうか、箱なし説明書なしでした。それでも殆ど使っていないと言うのは本当らしく、リコー計算尺独特のあとからスチールウールで磨いたようなつや消しの肌合いをそのまま残している計算尺でした。でもこれ固定金具の周りはつやの消し残したところがあるので、本当に組み立ててからつや消しをしているような感じです。リレーの時代はつや消しとはいえないような半光沢の肌合いでしたが、いつの時代からこういうつや消しになったのでしょうねぇ。少なくとも昭和40年製のNo.116Dも同じようなつや消しでした。確かに電灯の下で細かい目盛を透かして見るときはヘンミの尺よりは遙かに見やすいと思います。
さて、このNo.1051Sの刻印は「RS-11」と見えますから昭和44年の佐賀工場製でしょうか?先週のNo.1051S-1よりも4年ほど古い製造になります。この計算尺には金属の枠にはまったプラスチック成型品のカーソルグラスがはまっていて、例の固定尺にカーソル面が擦れ合わないようにするために突起を設けたものになっており、カーソル面が擦れて擦り傷が入らないようになっております。カーソル枠を止めるランナーは以前のカーソルのプラスチック板を直接ネジ止めしたタイプの金型を改良して「指掛かりのグルービングを掘った」もののようです。横幅はどうしても大きくなるんですが、どうして片方の親指で微妙にカーソルを左右に動かすことも出来て具合がいいのですが、何であとから小型の四角いカーソルに変えてしまったのでしょね?
この計算尺の生産に係わった佐賀市内のリコー計器は、リレーの時代はリレー産業という名前でリコー三愛グループ企業の一つでしたが、時代と共にリコーの資本率が強まったのか、三愛計器という社名を経て現在もリコー計器としてリコーのOA機器の部品としての小型高圧電源、人体感知センサ、コントローラ等の電子部品の製造で盛業中です。計算尺から電子部品製造への転業はヘンミも似たようなものですが、昔のリレー産業の時代はもしかして本業は継電器(リレー)の製作で、計算尺はその片手間の仕事だったのでしょうか?(^_^;) 現在は他社向けの仕事や独自の営業をしていないためか、リコーの関連会社の中では珍しくWEBページも開設しておりません。そのために詳しい会社の沿革がわかりませんので、いつごろまで計算尺を生産していたのかもよくわかりませんでした。ラインナップ中には手動の「加算機」なんていう製品もあったようです。計算尺よりこっちのほうがレアでしょうか?
このRICOHのNo.1051Sのカテゴリーは√10切断系のためか「高級(両面型)計算尺」という扱いのようですが、実際には工業高校の学生の計算尺検定用という需要が多かったような気がします。HEMMIでいったらNo.P253の競合商品といったところでしょうか。1051SはP253に比べると尺の配置は違えども尺の種類はまったく同じ。裏面は基本的には尺の種類も配置も変わらないのですが、リコーなりの差別化で滑尺にC尺が追加されていて尺種類が1つ多い構成になっております。日本人は「一個増量で価格据置」とか「数が増えても値段は断然お得」とかそういうのに弱いんですよね(笑)もっともリコーの計算尺シェアがヘンミに比べると微々たるものだったために、尺を一つ増やしたくらいでP253に勝る売り上げを上げた効果があったわけではありません。たぶん「周りの人間が持っている計算尺と違う計算尺を使いたい」という心理に付け入った販売戦略といったらおおげさでしょうが(笑)
実際に1051Sと1051s-1の両方が手に入ったので、詳細に比較検討すると、S-1のほうはカーソルが小型になってCIF尺が緑色に色分けされ、裏面のS,T1,T2尺が逆目盛になった以外は、やはり変更点は見つかりません。ヘンミだったらモデルナンバーを変えるまでもないマイナーチェンジの類なんですが(^_^;) それはさておき、使うのがもったいないようなきれいな状態の計算尺なんですが、「使ってなんぼ」のものなので、実用にします。昨夜の会議でAAAからAZZまでのサフィックスで割り当てられる総無線局数を計算していかなかったために、計算尺を取り出しアルファベット26文字の2乗を計算して676局の数値をはじき出してもあまり受けませんでしたね。どうやら学校でさんざん計算尺を使わされた世代の集まりだったので、「なにをいまさら計算尺」と思われたのでしょうか(笑)そういえばこの関係の7月に開催された支部総会お楽しみ抽選会で当たった商品が「電卓」だったのよ(^_^;)
旧新2タイプのリコー両面計算尺用カーソルです。こののちヘンミ同様の四角い小振りなタイプにマイナーチェンジします。明らかに旧タイプはカーソル線が太〜い。この太さで連続計算すると誤差がどこまで拡大したものでしょう?(笑)
RICOH No.1051Sの表面拡大画像はこちら
RICOH No.1051Sの裏面拡大画像はこちら
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