HEMMI No.2662
久しぶりに計算尺ネタを書けるので、なんかうれしいような気がしてますけど、これだけインターバルが空いたのはどうも年末にかけての計算尺の出物が少なかったという理由があったからなんですねぇ。ところが新年明けてからけっこう希少な計算尺が出始めまして、コレクター諸氏が少しだけ目の色を変えるようなHEMMIの#274なんかは別にどこかに納まればいいのですが、自分にとっては1本だけ欠けていたNo.2664Sの3兄弟であるNo.2662だけはどうしても欲しかったので新年第1号として入手してしまいました。別に同一尺度のRICOH No.116Dがありますし、2662と比較しても116Dのほうが好みなんですが(笑)では、何で2662が必要だったかというと、なぜ2664Sをあれだけ出荷しながら尺度が少し増えただけのパターンモデル2662が必要だったのか、その答えを見つけようと思ったからなんです。実は以前、116Dを入手したときに「おそらくHEMMIのNo.2662とほぼ同一尺度なので、RICOHのNo.116Dがその尺度を真似したコピー商品だったのではないか」と書きました。ところが、どうも「そうだ」と断定はできないようなのです。
HEMMIは2664から2664Sに変わった頃、RICOHの前身RELAYではNo.111からHEMMIの2664をコピーしたNo112に発展させますが、RELAYは110シリーズを更にどんどん改良し、√10切断系π切断系AB尺系の3種類を用意するにとどまらず、HEMMIが2664Sを計算尺のベストセラーにしてどんどん単一モデルで量産し続ける間にRICOHに社名変更になったRELAYでは昭和の38年頃にNO.116を発売し、一気にCIF尺だけではなくDI尺まで備えた計算尺に発展させます。いわゆるHEMMIモデルであればNo.2664S-Sじゃないかと言われるところなんですが、実は2664S-Sとして発売されるのは後のことなんですね。そして昭和39年には表にL尺も備えたNo.116Dも発売され、HEMMIの2664Sに比べると一気に尺度が増えた片面計算尺が出回るわけです。RICOHの116より2664S-Sと2662が先行した存在と思っていたのですが、アメリカのHEMMIコレクターであるポール・ロス氏によると、No.2664S-Sの製造は昭和42年から、No.2662に至っては昭和44年前後とされているのですね。でもちょっとまっちくり、確か30年代の緑箱でNo.2664S-SPECIALっていう刻印のNo.2664S-Sと同じDI尺付きの2664Sを見たことあるぞ。確かにDI尺付きの全9尺だけど、どう説明してくれんねん。さらに30年代の緑の貼箱入りで、表ではなく裏の中央にネームのあるNo.2662も見たことがあるからNo.2662が昭和44年前後に作られたというのも明らかに間違いで、そうなると9尺10尺と片面計算尺でどんどん尺数が増えていったのはRICOHがオリジナルでありHEMMIが後からのマネっこ商品だとも言えません(^_^;) 一つ言えることは、HEMMIは日本でも世界でも圧倒的なシェアを持っていたために、たとえRICOHの計算尺がHEMMIの同等モデルに対して意識的に尺数を1つ増やそうとも、別に対抗することもなく横綱相撲に終始したということではないでしょうか?その反面RICOHはHEMMIと比べて何か違いを出さないと値段以外に市場での存在意義がなかったということなんでしょうね。しかしHEMMIはあれだけ2664Sを売っていながらわずかな違いの2664S-Sと2662を作る必要があったのでしょうか?そこに何となくシェアの低いメーカーに対し、その存在に対する無言の圧力として意図的に市場に少数流した商品のような気がしてきました(笑)でも、その計算尺の巨人HEMMIに対抗して「何か違いを出そうと必死にあがいた」跡が見受けられるRICOHの計算尺って個人的には好きですよ(^_^;)まあ、最後までHEMMIのコピーから抜け出せなかったシリーズもありますが。
入手したHEMMI No.2662は岐阜の方から入手した計算尺です。40年代のベージュに緑帯の貼箱に入っていてUD刻印だから日産ディーゼルじゃなくって昭和45年4月製です。ちょうど大阪万博が始まって太陽の塔に過激派学生が立てこもったあの年の4月の製造なんですねぇ。ご多分に漏れず計算尺末期に差し掛かった時期の製品ですから、殆ど使用されずにしまい込まれたようです。さすがに尺が表に10尺もあるとびっしりと込み入った印象を受けますが、116Dが2以下の目盛にいちいち1.1とか1.2などの数字を振ってあって、かえってごちゃごちゃして見にくいのにもかかわらず、2662のほうがスッキリして見やすい感じです。両者を並べてみて初めて気が付きましたが、RICOHの116Dのほうが若干短かいのは、左右の余白の関係でしょうか。無線資格国家試験に使う計算尺でも触れましたが、表にL尺が出た計算尺の方がデシベル計算の多い無線工学では使いやすいので、一般の√10切断系ずらし尺のHEMMI片面計算尺ではお薦め度1番なんですけどいかにも出回っているタマが少ない。それでL尺が滑尺裏の配置ながらタマも値段も豊富な厨房尺を無線試験に持って行けとお薦めしているわけですが、今回12月期の1アマ試験に関しては問題を見ても、計算尺が1本あれば便利とまで言える問題はまったくなかったようです。今までの電気物理の計算重視の傾向から明らかに「アマチュアは原理原則の理解度確認」とでも言うがごとく、今までの2アマ試験の出題傾向に近づいた感じがしました。電気数学ヲタに近い自分にとっては残念です(^_^;)
上がRICOH No.116D(NS-2刻印)で下がHEMMI No.2662(UD刻印)です。
両者の違いは殆ど間違い探しの世界ですな(^_^;)
但し、入手したNo.2662は後発らしい配慮でCI尺上にもπマークがあるのが電気関係の計算が多い自分にはちょっとだけ使いやすい配慮かな。ところがこの2662はC尺上にCマーク以外のゲージマークが無くなりました。電線の断面積を計算するためCマーク以外は普段使いませんが、なんでρマークを大胆にカットしてしまったんでしょう?そう思って滑尺裏を見ると三角関数の他にB尺C尺が刻まれており、これを裏返して使うとC尺にρマークがちゃんと出てくるんですね。116D同様に滑尺を裏返すとオーソドックスなABCD尺としても使えるとは…。2662侮りがたし(笑)
HEMMI No.2662の表面拡大画像はこちら
HEMMI No.2662の裏面拡大画像はこちら
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