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February 07, 2006

常用計算尺ならHEMMI No.251

 普段、常用する計算尺というものもそれぞれ使用する分野によっていろいろ違ってきますが、HEMMIのNo.260を持ち歩く必要はなく、まして専門分野に特化したNo.266や257を持ち歩くことは、一般用途にはかえって不便。さりとて5インチのポケット尺ではちょっと頼りないということで迷うところですが、工学系の計算だったらやっぱりπ切断系計算尺を持ち歩きたいところです。それを考えると両面計算尺では今回入手したNo.251がかなりいい線を行っているかも知れません。また工学系計算のための両面計算尺入門用にもお薦めです。
 No.251はπ切断系ということで、No.259からマイナスLL尺を除いたものとよく言われますが、NO.250,251,259は殆ど同時期の発売ですから、259からマイナスLL尺除いたという始まりではないことは確かです。NO.251には昭和33年頃を境に2種類あり、No.251の前期タイプはLL尺が裏側にあったために、見かけ上はNo.250にDI尺が加わっただけのシンプルなものです。√10切断とπ切断の違いがありますが、どうやらNo.250にLL尺を加えてπ切断系にし、さらに裏面にもC尺を備えたという言い方の方が正しいような感じがします。もっとも初期のNo.259の表の尺構成も似たようなものでしたが。幅もNo.250と同じく他の両面尺よりは若干スリム。カーソルもNo.250と共用で、オフサイズのために今となっては入手が困難です。また、No.250のルーツは昭和15年に紀元2600年を記念して発売されたNo.2600とのことで、この用途の両面計算尺の始祖とのこと。√10切断系ずらし尺を採用して目外れに強い両面尺として画期的だったのでしょうが、実物は見たことがありません。
 べき乗計算を殆ど必要としない当方にとってはLL尺が全て備えられる必要は全くなく、π切断系のNo.251は使いやすいと思うのですが、「No.260を見てからNo.250を見るとがっかりする」という計算尺の精密度鑑賞派にとってはNo.251もまったくの不人気計算尺で、さらに驚いたことには最近までヘンミから取り寄せが可能だった機種ということもあって、両面計算尺としてはあまり価値の認められない計算尺の代表になっているようです。また、計算尺最末期の定価でNo.260が7,200円、No.259Dが7,100円だったのにも係わらずNo.251は6,500円というけっこうなお値段。1尺100円増しの計算になっていたかどうかはわかりませんが、この違いだったらNo.260を買ってしまいますよね(笑)それでなくともπ切断に拘らなければ、名機と呼ばれる安いNo.P253という選択肢の方が現実的です。リコーでの直接の競合機種はπ切断系両面尺のNo.1051Vでしょうか?同じ19尺π切断系ずらし尺度ですから、ほぼ間違いありません。
 今回入手したNo.251は秋田から入手したものです。いにしえの秋田は名だたる銅鉱山が沢山あり、鉱山学校で技士を養成した関係で計算尺の鉱脈がかなりありそうなんですが、いままで秋田から計算尺がたくさん出てきたという話はあまり聞きません。刻印はWAですから昭和47年1月の製造で、古い物が多いうちのヘンミ計算尺にしては割と新しい部類にはいります。ところがWAの下にわざわざ「1」の刻印が打ってあるのですが、こういうパターンもあり? 47年1月というと間もなく札幌冬季オリンピック大会が始まる直前の製造ですね。ご多分に漏れず殆ど使用されなかった状態で、新品に近いような品物でした。No.251は比較的によく市場に出てきますから、心おきなく実用に供しても惜しくはありません。とはいえ、同一コンセプトで製造された計算尺はHEMMIのP253を始めとしてRICOHのNo.1051S2本と合わせて4本も入手してしまいましたが、π切断尺はこのNo.251のみですから、πが絡む工学計算が多い当方の実用だったら、やはりNo.251のほうですね。No.260を持ち出してどこかにおき忘れたなんてことになったらショックが大きいし、って所詮No.251の役回りってそんなもんかい(゚o゜)☆\バキ
 そういえばこないだ、珍しく黒金具のNo.250が出ていました。当方、コレクターではないので使わない250が増えるのも困るのですが、さりとて黒金具のNo.250が100円で希少度のわからない人に持って行かれるのもつまらないので、適当な金額で応札しました。結局1,000円の値段も付かずに他の人に落札されてしまいました。この黒金具は250だけになぜ存在するか不思議なんですが、おそらくその時だけ何かの事情でメッキの納期が間に合わず、急遽黒塗装で済ませたとかそういうロットがあったのでしょう。それにしてもNo.250を見て、がっかりする人はおろか、だんだん腹まで立て、妙にNo.250をバカにする目盛鑑賞派がいるようですが、そんなことを言っているようでは人間が小さい小さい。No.250の上下の空間は、この世の森羅万象・大宇宙の広がりを表しているのです。No.250の余白にまだ発見されていない諸処の法則を含めた無限空間の広がりを感じる「わびさびの境地」に到達しないと、計算尺鑑賞道の奥義に至るにはまだまだですなぁ(^_^;) でも言っておきますがわたくしはコレクターでも鑑賞派でもなんでもありませんからね(笑)
HEMMI No.251技術用の表面拡大画像はこちら
HEMMI No.251技術用の裏面拡大画像はこちら

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Comments

うわあもったいない。もしかしたら特殊用途の計算尺だったかもしれませんし、どっちにしても今となっては同じものを入手できません。当方も本人や家族が「昔、仕事に使っていた」という計算尺をよく譲っていただきますが、昔の技術者にとっては武士にとっての刀同様に大切な商売道具なので、時代が変わってもおろそかに出来ないなぁと。
 通信士として軍艦に乗り組んでいたときのお話しを是非聞きたかったですね。

Posted by: じぇいかん | February 24, 2006 10:05 AM

 何かとこちらのブログで計算尺が話題になってますが、20年近く前に他界した祖父の形見に計算尺がありました。祖父は海軍通信学校を卒業し、通信士として赤城にも乗っていたほど。もうひとつの形見として、練習用の縦振り電鍵もあります。
 戦前に退官し海軍技研に勤めてた祖父は、戦後は倒壊した灯台や無線の鉄塔などを修復に全国各地を回っていたとか。根っからの理数系らしくボクが中1生のころ数学に頭悩ませていたら「数学ほどオモシロイ学問はないだろう」と言ってたのを覚えてます。生憎その血は継ぎませんでしたが。
 そんな形見であるはずの計算尺をあろうことか10年前に引っ越すとき捨ててしまいました。なぜ形見を捨てたのか。悔やんでも悔やみきれません。型式名などは分かりませんが、30センチ近い長さがあったかなぁ。ブログの写真を注意深く見てますが、同じモノは出てきません。
 ボクにとって悲しい「思い出」です。

Posted by: アマチュア特殊無線技士 | February 15, 2006 09:59 PM

6,825円を計算尺を使って1.05で割ったら6,500円になりますね。
いつのまにか税込み表示に改められたので、一瞬値上げになったのかと思いました(笑)

 ところで秋山さん、最近安い計算尺の入札にちっとも名前が出てこないじゃ
ないすか? けっこう1,000円以下のものも出てきてますよ。

Posted by: じぇいかん | February 07, 2006 07:59 PM

2005年9月の段階では、まだ銀座の伊東屋に新品の251がありました。6825円也。でも同時期にYahooオークションでは中古の251に2万円以上の値段が付いていました。うーむ、わざわざ中古を新品よりも高い値段で購入するとは、コレクター心理というのはよくわからない。もしかしたら、今売っている251とは重要な部分で違いがあるのかもしれませんか。

Posted by: 秋山 | February 07, 2006 12:48 PM

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