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February 06, 2006

最末期のRICOH No.116

 この計算尺は以前、RICOHのNO.1051S-1を購入した大阪の人から入手した計算尺です。尺配置的にはHEMMIのNO.2664S-Sと同等なのですが、リコーのポリシーとして「HEMMIの同等品より尺を一個多くして差別化する」という標準モデルですから、実質的には偉大なるスタンダードHEMMI No.2664Sの対抗商品と言うことになります。ところがHEMMIに対して市場でのシェアがあまりにも小さかったからか、オクでもリコーの10インチ片面尺で40年代以降に製造されたものはあまり見かけません。8インチ学生用尺や10インチ片面尺でも30年代のRelayやRICOHのものは割と見かけるのですが、HEMMIでいうと2664Sクラスの10インチ片面尺で、とりわけ昭和40年代でも中期に差し掛かったころに生産されたものはあまり見たことが無く、当方も透明プラスチックケース入りのRICOH No.116D一本しか持っていませんでした。何度も言い訳しますけど当方は計算尺コレクターでも何でもなく、自分の使わない分野の計算尺を集めて目盛の精密度を鑑賞しようなどという趣味は毛頭持ち合わせていませんが、「ガリバーHEMMIに立ち向かったRICOHの挑戦」とでもいうべき歴史的な興味から、検証用にRICOHの後期片面尺は是非とも欲しいと思っていたのです。
 しかし西高東低といいますか、リコーのシェアは割と関西から西で高かったような気がします。リコーのお膝元、東京でもいまだにリコーのデッドストックが見つかりますが、北海道では殆ど出てこないようです。これは九州の佐賀で作られていたという流通上の問題からでしょうか?「ヤマト糊とフエキ糊」じゃないですけど、昔は鈴鹿山脈を境に、もしくは箱根の山を境に東西でまったくシェアが異なる商品が沢山ありました。当時は輸送コストという面からも流通範囲が明確に決まっていたような感じです。ところで、リコーの製造刻印に関しては、リコー計器自体から正確な解答を引き出すことが出来ないために、諸説いろいろと言われていますが、38年に三愛計器からリコー計器に社名が変わった時の製造品の刻印の頭が「L」だったということから、ヘンミの製造刻印から2年遅れの年号を表すという説が有力であり、当方もそれに従っています。さらに次位のSは佐賀工場、ハイフンの次位はヘンミ同様に製造月を表すと推察されます。その根拠は1〜12以外の数字が見あたらないからです。しかし当方のNo.1051S-1のように刻印が「WS-3L」のような例もありますから混乱します。又、リレーやリコー計算尺の中には製造年記号の次位にSではなくてKの刻印されているものがあります。これはまったくの想像にすぎませんが、リレーの古い物にはKの刻印が多く、リコーの40年代にはK刻印があまり見あたらないことから、K刻印のものは佐賀県内は鹿島市内の分工場もしくは下請け工場で生産され、そこで製造されたものにK刻印が付けられたのではないかと。果たして鹿島に生産拠点が存在したかどうかはわかりませんが、鹿島の工場から佐賀工場にだんだん生産が集約されたため、後の時代にはS刻印のものだけになった感じがするのですが。また神奈川県内にリコー計器があったという話も聞かないので、神奈川のKということはないでしょう。Kの刻印一つでどこまで想像を膨らませているんだ<自分(^_^;) K刻印のあるものがどんな種類にあって、どの時期に集中しているか検証してみる必要がありますが、ヘンミと違って個体数が少ないから調べるのが困難であることは確か。ところで、「WS-3L」刻印の暗号解読ですが、考えようによっては49年3月製造で、Lの意味は「LAST ISSUE」で、最終生産ロットの洒落かもしれない。末尾にLの付くものは先頭がWSで始まるものにしかないような気がしますがどうでしょう?
 入手しましたRICOHのNo.116はHEMMIのNo.2664S-S同様の9尺配置です。企業のノベルティとして配られたもののようで、裏の本来はモデルナンバーが入れられるべき部分に大きく社名が赤い字で印刷されています。そのために本来は「形式不明尺」なんですが、No.116と同じ尺配置ですからそうさせて頂きました。このNo.116にL尺が加わると品番にDが加わってNo.116Dとなり、HEMMIのNo.2662同様になるのですからややこしいのですが(笑)ケースは40年代初期の透明塩ビケースからHEMMIのプラケースそっくりな青白のブロー成形ポリエチレンケースに変わり、それが付属していました。製造刻印はWS-8ということで、リコーとしても最末期の昭和49年8月佐賀工場製でしょうか?40年代中期の116と違って、ついにこの尺ではCIF尺が緑色の印字になりました。さらに細かく観察すると、今までK尺の1の位置から始まっていた計算尺上部のスケールがHEMMI同様にK尺より左に寄った位置から始まりました。スケール自体は25センチで変わりないのですが(HEMMIは27センチ)、なぜこんなことをわざわざ(^_^;) それと何とカーソル線が赤ではなく黒で刻まれています。かえってこのほうが見やすい様な気がしますが、他に黒カーソル線の計算尺ってありますか?形式ナンバーがわからないのが惜しいのですが、こないだのNo.1051S-1みたいに改良番号が付けられていたものなのでしょうか?一度No.116Sというモデルナンバーを見たような気もしますが、いろいろと興味の尽きない計算尺ではあります。
 ノベルティや記念品としては4インチ尺や5インチのポケット尺が多いのですが、実用本位の10インチ片面尺を配るとはさすがは大阪(^_^;)外箱は失われていましたが、粗品好きの大阪人の心理をくすぐるように「粗品」ののしが掛けられて配られたんとちゃうやろか? 10インチの計算尺が粗品としてもらえるんやったら、わいかてその会社は贔屓にさせてもらいまっせぇ(笑)しかし、昭和49年にもなって電卓じゃなくて計算尺を配るなんて、どういうセンスをしているのでしょう? そういやいにしえの昔、商売をやっているところに問屋や企業は自分の社名入りの5珠問屋算盤を配ったようで、社名入りで未使用の5珠算盤は今でもいろんな所から出てきます。そういう商家に計算用具を配る習慣で、事務用の計算尺を配ったというように理解すれば、10インチ片面尺の社名入りというのもわかるような気がしますが、それにしても(^_^;) ご多分に漏れずしまい込まれて未使用のまま当方の所にやって来たわけですから、その会社のナイスなセンスに乾杯!(笑)No116
上が最終型RICOH No.116で下がHEMMIのNo.2664S-Sです。CF尺のオーバーレンジとA尺の位置以外の違いがわかりますか?
RICOH No.116 最終型表面の拡大画像はこちら
RICOH No.116 最終型裏面の拡大画像はこちら

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