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July 06, 2006

問屋算盤

 今回は同じ計算用具でも計算尺ではなくて問屋算盤(そろばん)です。問屋算盤のイメージとしては番頭さんが帳場に座って難しい顔をしながら珠を弾いているあのイメージですか。純情きらりの徳井優さん演じる味噌屋の番頭さんとはちょっと違いますが(笑)当方も元は丁稚から始めて大番頭までこなした商人の出ですが、時代はとうに変わっていて電卓・パソコンの時代になっており、こんな鷹揚な計算用具は使ったことがありません。といいますか小学校を出てからそろばんなんか触ったこともなかったのです。
 われわれが子供時代ですから昭和40年代前半は、まだ一般商店に電卓など入っていなく、大きな問屋や事務所で一部出始めの一台数十万円の電子計算機(なんて言ってましたな)か、もしくは手動のタイガー計算機があればいいほうで、八百屋や魚屋の店先では5珠のそろばんを40年代末頃まで使っていたものでした。問屋算盤と一般の事務用そろばんの違いは、一般の事務用算盤がかけ算・わり算の置数のために23桁や27桁の長手のそろばんなのに対し、問屋算盤は足し算引き算の帳簿計算が多いために13桁か15桁にして、そのぶん珠が大きく珠の入れ・払いの操作性を高めているような感じです。さらに問屋算盤の梁(5玉と1玉の境の横桁)には桁数が漢字で彫り込まれていて、位取りを間違えないように出来ているのが定位点というドットマークしかない普通の事務用そろばんとの大きな違いです。また後ろに板が張り付けてあって、これは一説によると客との値段交渉を他の客に悟られないいための目隠しという話もありますが、補強の為の函構造になったのではないでしょうか。番頭さんが丁稚どんの頭をひっぱたいてもばらばらにならないよう、責め具として函構造で丈夫な物になっているという話もあるようです(笑)
 この問屋算盤の多くが5珠算盤ですが、戦後の問屋算盤には普通の4珠のものも見られます。戦前の問屋算盤は梁に彫り込まれている桁の単位が「厘」まで彫られている物が比較的に古く、次に最低桁が「壱銭」、戦後の物は「円」単位になりますが、これが問屋算盤の年代確定の目安になるでしょう。また古い物はこの単位が彫り込まれているのに対して、戦後の問屋算盤は焼き印を押して色入れしただけのものがあるようです。また算盤の裏側には商店名が入っている物が多く、問屋やメーカーが各お得意先に今で言うノベルティー商品として配った事が多かったようです。それも戦前はわざわざ彫り込んで色入れしたような一手間が入った細工をしている物が多かったのですが、戦後の物は印刷になったものが殆どのようです。中には黒檀の枠に黒檀の珠、それでなくとも樺珠あたりを使った高級な問屋算盤もあるようですが、残っている多くの物はこのようなお得意さまに配った粗品の栓木(せんのき=ハリギリ)で出来た問屋算盤が殆どです。
 さて、今は4珠のそろばんだけが使われますが、昔の算盤はなぜ5珠のそろばんだったのでしょうか?どうやら学校教育で昭和13年あたりから4珠のそろばんを使い出したらしいのですが、大正末年に近い生まれの父親に尋ねたところ、「学校で使ったのは5珠のそろばんで、商売やっているところの息子は商売用のでかい算盤を学校に持ってきたのもいた」ということでした。また「5番目の珠は単なる飾りで、学校では5番目の珠に関係なく繰り上がり計算を教えていた」という話なんですが、ほんまかいな? さらに「高等科に上がった頃に下の学年が4珠のそろばんを使うようになったが、これは日中戦争が勃発して不要不急の珠を廃止したから4珠のそろばんが出来たのだ」と歴史の生き証人は断言してますが、信じていいのかどうか当方には判断がつきません(^_^;)
 さて、右脳の機能訓練のために入手した戦前の5珠と戦後の4珠の問屋算盤ですが、おまけに15桁の5珠携帯用算盤まで付いて3台でたったの1,000円。入手先は「北のウォール街・小樽」からでした。小樽は戦前まで北海道の金融および商業の中心だった古い町です。今でこそ観光の街というイメージでしょうが、戦前には対岸貿易で栄えた町でもあるのです。手垢と埃にまみれた問屋算盤はそれだけで一つの使い古された道具としての魅力はあるのでしょうが、一軒の商店の栄枯盛衰の怨念に取り憑かれているような気がして手元に置いてたまに珠を弾いてみようなどという気が起きません。今回の問屋算盤は2台とも古いながらも未使用品とおぼしき物でした。昔はこんなものが得意先から重複して何台ももらうことがあるのでしょうから、当然使われずにしまい込まれたものも多かったのでしょう。しかしこの手の物は使い手がいませんので、コレクターズアイテムの「5玉が2つある江戸末期か明治初期の問屋算盤」以外は値段がつきません。そのために2台+おまけの1台でこのような値段です。
 さっそく使ってみますが、なんか足の指でも弾けそうな珠の大きさで、入れ・払いのストロークが大きすぎて早く珠を弾けません。さらに御破算にするまえにそろばんを手前に傾けて珠を払いますが、事務用のそろばんは何でもない動作でも問屋算盤は重いので少々気合いを入れなければいけませんし、頻繁に御破算を繰り返せば左の手首がおかしくなりそう。トニー谷が振っていたのは問屋算盤じゃなかったよな?なんて書いたら歳が知れますが、問屋算盤なんてやっぱり現代の仕事のスピードにはついてゆけない計算用具なのかなぁ?それにこのご時世、消費税何%なんていう問題が絡むようになると、ますますそろばんの計算速度では仕事が成り立ちません。
 この問屋算盤、そろばん塾のCMではありませんが、珠を弾いても「ぱちぱっち」といい音がせず、どっちかというと「かしゃかしゃ」言うのは、珠が樺や柘、紫檀・黒檀みたいに固い材料じやないからでしょうか? でもまあ、右脳の体操用としては十分としておきましょう。5珠のほうは戦前の「厘」まで単位のあるもので、「糸問屋・村西商店」の彫り文字、4珠のほうは戦後の「円」単位の焼き印桁入りで「前川(株)小樽支店」名入り。おまけの携帯15桁そろばんにも「信楽・山辰商店」の名入りでした。小樽に信楽の算盤って信楽焼のタヌキでも大量に扱っていた問屋でもあったのでしょうか?(笑)

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