ケネリ・ヘビサイド層
8月も過ぎて梅雨前線が何と北海道の北端あたりに掛かっているというのですから、日本列島沖縄から青森まで梅雨明けしたのがわかろうものですが、その影響かどうも今週はEs層によるハイバンド伝搬がはかばかしくありません。とはいえ、21メガ辺りは時間によって1エリア近辺が強力に開く時間があるものの、その時間も短くなり、8から聞くと6エリア九州の末端から3エリアあたりまでと韓国内がいっしょに聞こえることが多いみたいです。JAIAアワードのカードも追加がなさそうなので一応終了し、まもなくまた4アマ養成講習が巡ってくるので、一応復習がてら無線工学の見直しをやってましたが、しばらくやっていないとE層発生高度やF層発生高度、E層・F層の日変化・季節変化・サンスポ増減との相関関係なんかが曖昧になってしまいました(^_^;) 4アマの養成講習には電離層の性質を問う問題は見当たらず、2アマ試験あたりのB問題の穴埋めに出てきそうな問題ですが(笑)このうちD層に関しては1次減衰なんかで取り上げられるくらいで、アマチュアの短波帯伝搬に関係ないからか、あまりアマチュアの無線工学解説には出てきませんが、E層は「ケネリ・ヘビサイド層」F層は「アップルトン層」なんて呼ばれることがあるようです。
この電離層の存在という概念は1902年にアメリカのケネリーとイギリスのヘビサイドの2人がほぼ同時に予言しその存在と高度を実験によって証明したのがイギリスのアップルトンなのです。そのためケネリ・ヘビサイド層として存在が仮定されていた電離層はアップルトンによってE層と名付けられましたが、これはアップルトンが上空に向かって垂直にいろいろと周波数の異なる電波を放射し、反射してくる電波の電界強度「E」を計算しているうちに自然にE層と命名したとアップルトンがデリンジャー現象の発見で名を残したアメリカの物理学者ジョン・ハワード・デリンジャーに送った手紙の中で明らかにしています。又、アップルトン層とも言われるF層はE層の外側にその存在を発見したためにF層と名付けられ、D層はE層の下に発見したためにD層とし、最初からA層〜C層はなかったということは以前にも書きました。
さて、最初に電離層の存在を発見した1人であるオリバー・ヘビサイドはエジソン同様に正規の教育を受けていなかった一介の「電気技師」だったのにもかかわらず、電気の諸現象を数値計算によって証明しようとした能力がエジソンとは基本的に異なります。また、回路のインピーダンスの概念や、1アマの工学には係わってくる複素数「i(電気の世界ではj)」の使用、またラプラス変換による微分方程式の解法、ヘビサイド定理、ヘビサイドの階段関数など、すべて独学であみ出したようです。交流をベクトルという概念で解析したのはこのヘビサイドですぜ(^_^;) ヘビサイドがいなかったら1アマ試験に複素数もベクトルもなかったのでしょうが(笑)
ホイートストンブリッジで有名な物理学者のチャールズ・ホイートストンの甥なのにもかかわらず、なぜ高等教育を受けられずに一介の電気技師として独学で電気物理を学ばなければいけなかったかは、エジソンと比べて殆ど伝記的な資料が見当たらないために当方もよくわかりません。ただ、1912年のノーベル賞候補にもノミネートされたのにも係わらず、イギリスでは「単なる1人の技師のたわごと」以上の評価を上司から受けずに、最後まで貧乏な技師で生涯を終えたことは、島津製作所の一介の技術者でありながらノーベル賞を受賞した田中さんとは正反対の人生だったようです。
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