フライトコンピュータ(航空計算尺)
昔はけっこうな軍用機ヲタだった時代があり、横田基地張付きと厚木基地張付きのグループと交際があり基地の公開の時は何年か通っていた時代がありましたが、自分でカメラを抱えて基地の金網の外に張付くヒマと時間がありませんでしたので、もっぱら資料収集マニアになってました。2回目の引っ越しあたりで、おそらくダンボールに数個はある軍用機関係の英語/日本語資料並びに未組立の輸入品軍用機プラモデルなどすべてゴミに出してしまい、軍用機関係からはスッパリと足を洗いました。そのころの基地張付きグループにけっこう無線系に強い人間がいて、米軍機の立ち寄り情報のラジオテレタイプ信号をキャッチしてテープストリーマ付き8ビットのマイコンで暗号解析し、輸送機など何処の基地から何時頃着陸予定で搭載品は何か、などということをほぼ90%掴んでいたというのだから恐ろしい。その情報が横田張り付きグループの重要な情報源になり、軍用機撮影のスケジュール決定の手助けになっていたというのですから某国スパイも顔負けです。その軍用ヲタ連中の中で、使いもしないのに「特殊無線技士丙」の手帳型従事者免許を持っているのが自慢な男がいて、航空関係の資格を何か一つ、仲間に見せびらかしたかったのでしょうが、はっきり言って仲間には嫌われてました(笑)航空無線通信士免許だったら、航空ヲタの中でも「意外にすごい」なんて言われたかもしれませんが、その当時のわたくしは特殊無線技士丙も航空無線通信士も区別がつきませんでしたが
(^_^;) ABLのマニアというわけではありませんでしたが、エアバンドレシーバをSONYのICF-8650とR-517の2台も持っていて、R-517には固定クリスタルが3波入るようになっており、未だに横田のATISのクリスタルが入りっぱなしで手元に残っています。そういう門外漢でもいちおう今では航空無線通信士のライセンス持ちなんですから、世の中はどうなるかわかりません。ただ航空通の取得はABL趣味の延長というわけではなく、純粋に無線系資格のうち英語試験のある一番簡単な通信士資格が欲しかっただけです。そのため、航空関係の一応資格持ち(航空無線通信士/航空特殊無線技士)なのにも係わらず、最近は日本の空にどのような航空機が飛んでいるのかもまったくわかりません。航空装具もノメックスのフライトスーツにグローブ、フライトブーツにフライトジャケット一式以外はすべて他人にあげるか引っ越しの際にゴミに出してしまいました。
そういう非航空ヲタで最近は航空装具にまったく興味はなかったんですが、今回入手した品物は特別です。それはフライトコンピュータとよばれる航空計算尺で、今ではこんな手動ではなく電卓型のコンピュータによって航路計算などがされるのにも係わらず、基本はこの手動計算尺でナビゲーションするのが決まり事のようで、練習船では六分儀の天測により位置を計測するのが現代ではまったく必要のない技術であるのと同じように、GPSの時代になっても航空学生はこのフライトコンピュータを使ってのナビゲーションが必須科目になっているようです。そのため、機械や電気を始めとする技術の世界からは計算尺が消えてしまった今でもこのフライトコンピュータは未だに複数のメーカーから製造され続けているようで、中でも円形計算尺で有名なコンサイスからは用途別に何種類かのフライトコンピュータが作られているようです。でも、航空従事者でない単なる計算尺ヲタが新品を購入するにはあまりにも高価な計算尺で、ごく普通のものでも2万円近くしますし、普段の計算用に使用するというわけにもいきません。航空ヲタが身の程を知らずに購入して持て余したフライトコンピュータの中古が出たとしてもけっこう高額で取引されるようです。
ということで、当方の計算尺コレクションの中でも永遠に欠品カテゴリーとなるかと思われましたが、航海計器として出品され「計算尺」の検索ワードがつかなかったために、思いがけなくも発見し、初回出品価格で捕獲に成功した「掘り出し物」でした。しかし、何に使うのかと尋ねられても困りますし、速度と距離の換算くらいの使用法しか今のところわかりませんので、完全にコレクション扱いです。自分で使わないカテゴリーの特殊な計算尺には手を出さないはずだったのに、目の前に人参ならぬ珍しい計算尺をぶら下げられると、思わず食らいついてしまうのは悲しい性と言うべきでしょうか(^_^;) このフライトコンピューターは基本的には円形計算尺に横風による偏角計算盤っていうのかな?そういう四角いチャートがついているのが特徴です。こちら真横の風が何ノットで、どれくらいの距離を進んだらどれだけ別の方角に流されるのかという計算すらまったく理解してませんから不要のものですし、地上を車で走っている限りも必要のない計算面であることは確かですが。
さて、このフライトコンピュータは山口県から出品された物でした。山口県といえば空自も海自も航空学生の訓練が行われる土地であり、もしやと思いきや届いたフライトコンピュータの皮ケースには桜に錨の代紋が入ってました(^_^;) さらにプラスチックだとばかり思っていたこのフライトコンピュータは何と材質がアルミという金属製航空計算尺で、コンサイスを始めとするフライトコンピュータが殆どプラスチック製なのと比べるとさすがは「軍用」です。原型は海軍兵学校のあるアメリカメリーランド州はアナポリスのWEEMS SYSTEM OF NAVIGATIONという会社の米海軍向きE-10という1956年型のフライトコンピュータを、フライトシミュレーターなどで有名な日本のJPCが昭和33年からライセンス生産しているものの改良タイプのようです。金属製ですから殆ど手を掛けずにきれいになりましたが、一時期海○は救難飛行艇の事故が続いたりして、その殉職者の遺品が巡り巡って当方の計算尺コレクション入りしたのだったら、ちょっとイヤかも(笑)
フライトコンピュータというと、ちょっと計算尺好きとしてのコレクションとしては異質かもしれませんが、現代にまだ生きている計算尺としてコレクションに加えることは良いことだと思いますし、未だにお金さえ出せば誰でも入手が出来るというのがうれしい事ですが、逆にいつでも入手が出来るということがコレクションに航空計算尺を加える人が少ない理由かな? 昔の物価にするとヘンミの両面計算尺は現代の貨幣価値で2万〜3万円くらいの水準のものだったと言われていますので、決して高価な物ではないと思いますが、われわれにはまったく実用にはなりません。まあ、飛行機乗りではないのにまったく実用にならない計算尺付きのブライトリングをはめているイッピは沢山いますけどね(笑)さすがに大型円形計算尺ですから腕時計の回転ベセル程度の大きさのブライトリングの計算尺とは精度が比較になりませんが。
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