HEMMI No.254W 高校生用尺の疑問
今年になってから通信技術用の計算尺であるHEMMIのNo.256が頻繁に出てくるようになり、さほど希少尺でもなくなってしまったのにも係わらず、いまだに入手出来ていません。電子工学用のNo.266ほど使いである計算尺ではないのですが、一応通信士・無線技士の端くれですから持っていないというのも沽券に係わります(笑)でも、1人で2本も3本も確保している人がいて、あたしゃその理由がわからない(^_^;)そういえば海外のオークションで1本、No.266が出ていて、タイトルに機種名が付いていなかったため、どれくらいで落ちるか経過をワッチしていたところ、40ドル付近で最後までいったため、どうなることかと思ったら、ラスト10秒で330ドル近辺を付けた2人が突然現れ、10秒間の急展開で結局339ドルで終了というのがありました。最後の10秒で300ドルもつり上がるのも恐ろしいものですが、今回のNo.254Wもラスト10秒でたまたま落札した計算尺なのです。もっともこちらは他に1本の合計2本でたかだか20ドル少々の争いに過ぎませんが(笑)
このHEMMI No.254Wは先週入手した珍尺、No.254W-Sの本家であるノーマル型で、高校生用の計算尺です。フルLOGLOGデュープレックスというわけではありませんが、P253にマイナスのLL尺を追加したより高機能な計算尺です。外国製計算尺ような上下同寸の形態といい、新しいデザインのケースやオーバルマークといい、旧来のHEMMIらしさを感じさせない計算尺です。しかし先発の両面尺P253がありながらなぜ254Wの発売に至ったのかということを考えると、HEMMIの計算尺を学校関係に一手に取り扱っていた内田洋行の意向がかなり反映されていたというように見るべきでしょう。刻印「OA」のものが確認されていますので、製造開始は昭和38年末から39年初旬と思われます。たぶん昭和39年度の新学期向けの生産開始だったのでしょう。またこのNo.254Wは前期型と後期型があり、前期型は固定尺上下同寸型で、後期型は上固定尺が短い普通の両面型の形態になっています。双方とも普通に見かけられますが、割合的には前期型の方が若干数が多いような印象です。殆ど内田洋行経由の高校向け計算尺みたいなものなので、外国に輸出されたことがなく、それゆえ海外のコレクターの需要が高いためか、他の高校用計算尺とともに代理入札業者の手で海外流出することが多いようですが、さほど高額で落札されるような計算尺ではありません。後のNo.254WNのように刻印違いや文字の色違いなどがあまり話題にされることはありませんでしたが、年代別に細かく観察するとゲージマークの追加や目盛単位の変更などの違いがあるかもしれません。また、No.254Wというネームの物はすべて√10切断ずらし尺装備で、これは計算尺検定試験や計算尺競技も視野に入れてのことだと思いますが、特にπ切断が必要な分野には前出の電気電子スペシャルのNo.254W-Sがあります(笑)
入手先は神戸からです。戦前のNo.40がセットになっていましたが、年代差からいって同一人物の持ち物ではないでしょう。箱は赤蓋でベージュっぽいクロスの貼箱に入っていましたが、片面がきれいなのにどういう訳か反対側の角がはげちょろけ。なんかネズミが囓ったような貼箱でしたが、中身は比較的にきれいでした。刻印は「OK」ですから昭和39年11月製。40年度の新学期に向けて準備された製品のようです。ひとつ気になったのですが、この上下固定尺同寸のNo.254WはC尺D尺の4から5までの目盛の切り方が1/20と1/50の両方あるようです。今回のOK刻印は1/20で0.5単位の目盛間隔が広いタイプでしたが、KIMさんのHP上にある254WはOB刻印なのに明らかに1/50の0.2単位の物のように見えます。ということは、後から細かい1/50に目盛の切り方を変更したのではなくて、どうやら当初から同一型番で違う目盛の切り方が混在していたということになるのですが、その理由がいまひとつわかりません。ちなみに刻印 PIの254W-Sは裏も表も1/50で0.2刻みの細かい目盛でした。さらに後の上下同寸でない普通の形態になった254Wにもこの2種類の目盛単位が混在しているようですが、もしかして需要期の新学期を迎える前は254Wの目盛を刻むラインがパンクして、他のLOGLOG尺の型を流用して間に合わせたためにこういう混乱が生じたのかもしれません。とはいっても√10切断の似たような計算尺ってあったかしら?う〜みゅ、わからない。No.254Wの上下同寸初期型にあってはどうやら4から5が1/20刻みのほうが多い様な感触ですが、特に検定試験用を意識してP253と同様な1/50刻みの方も学校側の要求によってチョイス出来たのでしょうか?誰か、お〜せ〜て(C)小梅太夫
さて、「ゲージマークの違い」うんぬんの可能性について書きましたが、表のLL尺があるほうのC尺D尺にはCマークはおろかπマークもありません。これは表のC尺D尺にありとあらゆるπ関係マークがおごられた254W-Sに対して激しく不満なのですが、裏のC尺D尺には2664Sと殆ど同じ種類のゲージマークを備えます。これだけだと電気系の学生には少し使いにくいかもしれません。ところが何と254WでC尺D尺の4から5が1/50刻みになっているものはちゃんとC尺上にπがあるじゃあありませんか?(@_@;) ということで結論としてNo.254Wの上下同寸型には4から5が1/50刻みでC尺上にπマークのあるものと、1/20刻みで表にまったくゲージマークのないものの2種類が同時期に存在した。その理由は今のところ不明、ということです。
いろいろと疑問の多いNo.254W高校生用計算尺
HEMMI No.254Wの表面拡大画像はこちら
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