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September 15, 2006

戦前のHEMMI No.40学生用

 Logo40 HEMMI製10インチ・マンヘイム型片面計算尺の系譜は大正時代のJ・HEMMI No.1から始まり戦前戦後のNo.40からNo.40RKと綿々と受け継がれ、昭和40年代末まで作られました。それを考えるとモデルチェンジはありながらも一番長生きした計算尺の系譜だということも出来ます。また、このマンヘイム10インチ尺は戦前戦後と通じてもっとも多くの代理店OEMブランドとして外貨を稼いでくれた優良商品だったようです。今回のNo.40は「"SUN HEMMI"」時代の物になりますが、この時代はまだ√10切断ずらし尺などというものが一般的ではなく、こんな簡単なABCD尺でも貴重なものだったため、後のNo.40RKのように「練習用」というような不当な扱いではなくもっと高尚な計算尺だったのでしょうが、多くは「旧制中学校」で使用されたもののようです。PAUL ROSS氏によると、この戦前のNo.40は昭和7年から戦後の昭和24年まで作られたようで、昭和24年にCI尺とK尺が加わったNO.40RKに生産がシフトされたようですが、だんだんとずらし尺を備える中学生用8インチ尺などが登場してNo.40シリーズはコンセプトが曖昧になり、「練習用」などというタイトルが付けられ、さらに他の中学生尺同様にプラカーソルにマイナーチェンジしながら40年代後半まで作られています。
 さて、オリジナルのNo.40はABCDの4尺しかない計算尺ですが、「CI尺がないとかけ算はどうやるんだ?」と真剣に悩んでるあなた、「対数を利用してかけ算わり算を行う」という基本原理を忘れてますぜ(笑)かけ算にCI尺は要らないはずなんですが、連続計算の利便性を追求するあまり、逆C尺のCI尺が出来たのです。2×4だとするとD尺の2の所にC尺の1を合わせ、C尺上の4の所にカーソルを合わせてその位置のD尺の数値を見ればいいわけですな。「それじゃC尺の5以上は目外れするけど、どう計算するのか?」という声が当然上がるでしょうが、そう言うときはD尺上の2にC尺の1ではなく右端の10を合わせればいいのです(^_^;) わり算は逆をたどれば良い訳ですね。 これがC尺D尺のみでかけ算わり算をする基本ですが、こういう操作が面倒くさいので、だんだん逆尺とかずらし尺が増えていったわけで、だんだんと過保護になりすぎて、いきなりABCD尺しかない計算尺を渡されたら面食らう計算尺コレクターがいるんじゃないの?こういう計算尺を渡されて「わり算は出来ますがかけ算が出来ません」じゃ恥ずかしいかも(^_^;) 当然AB尺上でも同じ事が出来るわけですが、CD尺で位取り計算するよりも精度的に劣るわけです。そういえば日本の計算尺にはあまり見当たりませんがW1尺W2尺とかいうものがあって、確かW1が1からπまで、W2がπから10までの1から10を2本の尺でカバーするようになっていてより高精度の計算を出来るようなそういう目盛だったような。実際にいじったことがないので確証はありませんが。まあ上には上があるもので、20インチの超精密計算尺の中には1から10までの一つの尺度を4本のパートに分割して尺種類を設定している物もあるようです(@_@;) でもまあ、ABCD尺で裏が三角関数の10インチマンハイム尺のシンプルさに敵うものはありません。
 このNo.40は神戸から入手したNo.254Wのおまけみたいな物でしたが、こっちとしてはこのNo.40の価値割合が意外と高いのですけど(笑)「"sun"」のマーク付きですから当然戦前尺と解釈していいはずなのですが、大戦前のものなのか戦時中のものなのか、それとも戦後すぐのものなのかの判別が難しいところです。本体に「made in JAPAN」の刻印が無かったので戦時中の製品かと思いかけましたが、箱に型番のNo.40というシールが残っていて、その中にmade in Japanが入っており、裏の換算表は全て英語表記でしたので、大戦前の製品だと解釈して構わないでしょう。後の貼箱のように四角いケースではなく一枚のボール紙を丸めて作られたような楕円の断面を持つ貼箱です。さすがは流線型時代の産物(笑)表面は昔の辞書の表面のような黒革もどきの紙です。トレードマークは銀の箔押しでした。後のNo.45あたりと同じようにセルロイドが張っているのは表面だけで、後は竹の断面が見えていますが、ここいらがセルロイドで覆われたNo.47と違うところか、カーソルの滑りが今となっては今ひとつです。さらにカーソル枠を作ったプレスの型屋の腕があまり良くなかったと見えて、カーソル上の枠の下端が水平になっていません。もっともこんなものはカーソル線の垂直が出ていれば計算精度には係わる箇所ではありませんが。新しいNo.45Kあたりと違ってまんべんなく飴色と化したニス塗りの竹の部分の風合いは、さながら室内ニス塗りの旧型客車の内装みたいで時代を感じさせるものです。裏に1-4 某というようにクラスと名前が毛彫りされていました。おそらく旧制中学の1年になって購入したものでしょう。元の持ち主も生きていれば80歳近いはずですが。
 そういえばこの戦前のNo.40は身幅が戦後の中学生用計算尺で市場に溢れている8インチのNo.45と同寸ですから、当然のことカーソルもそのまま流用出来ました。カーソル無しの戦前計算尺でもNo.45からカーソルが流用できるのはありがたいのですが、45Kのプラカーソルが使えるかどうかは試していません。というのは手持ちの45Kを上級アマ受験者2人に上げてしまったからなんですが(笑)
No40
HEMMI No.40(戦前型)表面の拡大画像はこちら
HEMMI No.40(戦前型)裏面の拡大画像はこちら

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