FUJI No.102 10インチ片面計算尺
またもやFUJIのプラスチック製計算尺ですが、FUJIの計算尺もその前身の技研計算尺も8インチの学生尺はその値段の手軽さゆえか、不思議とよく出てきますし、No.2125系統の10インチ検定用計算尺も最近は良く出てきますが、その中間の10インチの一般用片面計算尺が殆ど出てこないのは何ででしょうか。まあ、あまりにも片面計算尺のスタンダートで大ベストセラーのHEMMI No.2664Sが普及しすぎたため、同種の計算尺だったRICOHのNo.116と同じように、単に割安感だけでそのシェアに食い込むことが困難だったのは明らかですが、技研時代の10インチ片面尺ならいざ知らず、FUJI時代でも後期に当たる滑尺が薄い緑に着色された10インチの通常用片面計算尺に遭遇するのは極めて稀です。今回入手したFUJIの10インチ片面計算尺のNo.102は、表がL,DF,[CF,CIF,C]D,A,Kで滑尺裏が[S,ST,T1,T2]の表9尺ですがHEMMIのNo.2664S-SやRICOHのNo.116と違う点は表がDの逆尺のDIではなくLを持ってきたことが異なり、言うなればNo.2664Sの滑尺裏のL尺を表に持ってきたというような感じでしょうか。どうしてDI尺でなくてL尺なのかその理由はわかりませんが、技研時代には11尺装備の検定用計算尺No.251以外にL尺が表にある片面計算尺がないので、電子工学その他の対数関係の計算の便を図るためのことだったかもしれません。というよりも、もしかしたら8インチプラ尺でよく似ているNo.82-Dの滑尺裏のL尺を表に持ってきて9尺にアレンジしただけというのが正解かもしれませんが。ということで、L尺が表にあったほうが無線従事者国家試験に持ち込むなら2664S-Sや116よりも都合がいいのですが、1アマ試験に使うためにFUJIのNo.102を選ってまで持ち込める人がいるわけもありません。まあ、最近数のたくさん出てくるFUJIの2125Dなんか、ゲージマークも豊富ですし、2πマークを始めとしてC尺D尺以外にもπマークがあるので、こちらのほうがお薦め機種ですが(笑)欲を言うと1/2πマークあたりがある計算尺が電子工学には便利なんですが、「0.1592」という数字は覚えられないことはありませんので、あえてここまで過保護な計算尺はいらないでしょう。
入手先は函館からでした。以前函館から古いHEMMIのNo.259を入手したことがありますが、FUJIの計算尺が前回は室蘭のものが、今回は函館からですから意外にFUJIの計算尺は道南方面に出回っていたことになります。滑尺が薄い緑に着色されていますので、昭和40年代でも末期以降の、ひょっとしたら50年代に突入してからの製品だと思われますが、技研もFUJIもまったく製造刻印がないために、詳細な製造年を特定する術がありません。しかし、8インチにはありますがHEMMIの10インチ片面計算尺に滑尺が着色されたものが見当たらない(実は技研が製造したHEMMIの10インチ計算尺に滑尺が青いものがあるようですが)ために、けっこう新鮮に感じられます。この滑尺の緑というのは、オリジナルがドイツのFABER-CASTELLで、向こうが印刷による着色であるのにこちらは樹脂の成型色を緑色にしている違いがありますが。実はこのNo.102は片面計算尺としてはあまり許容出来ない特徴がありまして、実は裏側に目安線がまったくなく、いちいち滑尺を裏返さないと三角関数計の数値が計算できないのです。HEMMIの片面プラ尺シリーズが末期になってコストが見合わなくなってしまったからか、No.P45Dを始めとして裏側に目安線がないモデルが急増しますが、製造元の技研のモデルでも同様にコスト面から裏の目安線を止めてしまったのでしょう。HEMMIはモデルナンバー末尾を変えたり新しいナンバーを付けたりしましたが、技研は更に姑息でNo.82-Dのように同一ナンバーながらいつのまにやら裏側の目安線がないモデルにすり替わってしまったものもありますが、今回のNo.102もそうなのでしょう。そういえばNo.82は8インチ計算尺を意味しますので、No.102は型番からいうとNo.82-Dの10インチ版ということが出来るようです。構造的にはNo.82-Dの後期型の拡大版でしかありませんし。No.82-Dの後期型と同じミントグリーン色のプラスチックブリッジで上下の固定尺が繋がれているだけの構造の片面計算尺で、その手法はHEMMIのプラスチック製両面計算尺と同じです。操作感はHEMMIのNo.P253あたりと同じですが、こちらは片面尺なので上下固定尺と滑尺が同寸です。裏側の上部にスケールがあるのも82-D同様ですが、No.102は長いなりに25センチのスケールになっています。片面計算尺といっても構造的には両面計算尺そのものですから意外に幅広で、幅が4.3センチありますので、これは物差し部分を除いたNo.2125-Dあたりに匹敵しますが、ほんの1ミリほどNo.102のほうが細いのでカーソルが共用できません。しかし、試してみると滑尺が白い最初のNo.2125のカーソルはNo.102のカーソルと同寸で互換性がありました。ケースも縦にグルービングの入った緑蓋白ボディのブロー成形ケースでNo.2125-Dとまったく同じケースに入っていました。それにしてもどういう存在意義のある計算尺かよくわからない計算尺ですが、これで何となく世の中にNo.102は見当たらず、No.2125系統がけっこう沢山ある理由がわかるような気がします。そもそも安い計算尺ですからNo.102とNo.2125なんかそれほど価格差があるわけではないでしょうし、どちらを買うかといったら最上位機種のNo.2125のほうに決まってます。そういえば、以前にFUJIのNo.502という5インチ尺が出てきて、こちらもNo.82-D同様の尺種類を備えてましたので、もしかするとNo.502とNo.82-DおよびこのNo.102の3本は兄弟尺なのかもしれません。さすがにHEMMIのように兄弟に20インチはいませんが、このプラスチックの厚さで20インチ尺を作ったらたわんでしまって使いにくいでしょうし(^_^;)
FUJI No.102の表面拡大画像はこちら
FUJI No.102の裏面拡大画像はこちら
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