HEMMI No.2640 中學校生徒用計算尺
HEMMIのNo.2640はどうにも影の薄い学生用計算尺です。どうやら昭和40年代半ばまで作られていた8インチ計算尺らしいのですが、昭和30年代から中学生用としてはNo.45やNo.43のほうが多く使われたのは歴然としています。そのため、新しい時代のNo.2640よりも古い時代のNo.2640のほうの出現率のほうが圧倒的に高いような感じで、最末期のプラカーソル青白塩ビケースの未使用品が学生用8インチ尺にしてはけっこういい値段が付いたりすることもあるのですが、中古のNo.2640のほうは千円まで値段を付けることの方が珍しいような不遇の計算尺です。戦時中から昭和40年代半ばという長期間にわたって作られた計算尺ゆえに、カーソルやケースなどにも製造年代なりに色々なバリエーションがありますが、基本的には表l,A,[B,CI,C,]Dの6尺、滑尺裏はS,K,Tの3尺という8インチ計算尺で、品番の2600番台が示すとおり紀元2600年(昭和15年)以降に発売された計算尺であることがわかります。さらに8インチの計算尺としてはもっとも初期の発売に属し、以前は旧制中学用として使われたNo.40の10インチが戦時体制のおり材料節約で8インチになり、その分尺を増やした旧制中学用計算尺がNo.2640ではないかと想像したら、いくら影の薄い計算尺でもそれなりに興味を引かれます(笑)
さて、戦中の2640に特徴的な点としてCI尺が「逆C」と表記してあることが上げられます。cyno_yさんのブログでこのあたりの経緯を詳しく取り上げておられますが、おそらくいままで旧制中学で使用されたNo.40あたりはA,B,C,Dのみのマンハイム尺だったために馴染みのないCIとするよりも逆Cとしたほうがわかりやすかったからではないかと思います。学生用計算尺ゆえの配慮ではないでしょうか。初めて戦前のNo.40を手にしたときにC,D尺と三角関数の尺とが合わないためになぜかと思ったらA,B尺の方に三角関数尺が対応していたためにちょっと面食らいましたが、このNo.2640の一番上のl尺というのもA,B尺に対応したL尺ということなんですね。C,D尺に対するDb尺と同じ事なんですが、最初見たときにはなんで戦前の学生尺の一番上にDb尺が載っているのかと首を傾げてしまいました
(^_^;) 戦中モデルのNo.2640は裏面の副カーソル線セルロイド窓が一つですがこれは戦前No.40同様です。物資の乏しい戦時中ゆえに逆Cのロゴも尺の数字も黒で入れられていますが、これが戦後すぐの製品になると逆Cロゴも数字も赤くなり、裏の副カーソル窓も左右の2つ開けられるようになります。更に戦時中のNo.2640が甚だ簡単な紙サックのケースに入っているのに比べ、戦後の2640のケースはまともな蓋付きのケースが復活しているようです。裏に各種換算表が付いていて、この換算表にもいろいろなパターンがあるのですが、最終モデルのプラケース入りNo.2640に限り、No.P45S同様に別添えの換算カードとなっており本体に換算表は装着されていません。カーソルがプラスチックになったのはNo.45Kが出たあたりの昭和37年頃からでしょうか?ところが、今回届いた戦中モデルのNo.2640はケースこそ簡単な疑皮紙の紙サックなんですが、裏の副カーソル線セルロイド窓がちゃんと2つ開いているのですから、こういう分類もあてになりません。印刷の消えかかったラベルがケースに残っていてそこには「ヘンミ計算尺 中學校生徒用計算尺 NO.2640 ○傳\4.00(税込)」というように解読できます。
実はこの戦時モデルのNo.2640は例の戦前尺売り立て品のうちの一本で、他のNo.96やNo.91などが落札されたときに売れ残ったもので、2回目に入札したもののこちらもあまり高い入札をしなかったものですから他の人にさらわれてしまった計算尺でした。ところが当初の落札者から連絡が無く、次点入札者も入札辞退したために終了から10日目にして次々点入札者の当方の所に回って来たものでした。こういうケースでオクの落札が回ってきたのは初めてのケースですが、ここしばらくオークションの入札は登録だけでIDを取得できるため、新規IDによる落札トラブルが絶えないそうで、今回もそういう落札者だったのかもしれません。18年4月まで600万人のIDが無料登録の効果でいまでは1800万人分あるそうで、そもそも日本の人口の16パーセント分もオークションIDがあること自体がおかしいような気がします。まあそのおかげでというわけではありませんが、今年最後の計算尺として720円でNo.2640とおまけの塩ビケースのNo.45K(但し中身とケースの年代が合わず本体刻印 NC)の2本を入手しました。さすかにこれが今年最後の計算尺入手となります(^_^;)
そういえば東京タワーの設計者である内藤多仲が使用していた計算尺がこの8インチの学生尺No.2640だったということが某会議室で話題になっていましたが、8インチ学生尺の有効性を主張し続けてきた当方の言い分も馬鹿にした物ではないことが証明されたような(笑)
HEMMI No.2640の表面拡大画像はこちら
HEMMI No.2640の裏面拡大画像はこちら
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