HEMMI No.P265ビジネス用計算尺
昭和30年代末期に発売された商業用計算尺のことに関しては以前に書いてます通り、外貨の換算機能があったために日本における変動相場制実施とイギリスポンドの10進法移行により昭和46年早々からこれらの機能が無意味になるのを見越して作られたと思われる計算尺がこのHEMMI No.P265ビジネス用計算尺です。英ポンド換算尺が消えて単位と時間の換算尺に置き換えられたような計算尺ですが、特筆すべきはNo.P263がベストセラーであるNo.P253と同じボディを使用していたのにも係わらずまったく新しい上下の固定尺と滑尺の長さがまったく同じプラのボディになったことです。おそらく山梨の技研が製造に係わったと思われますがベースはFUJIのNo.102あたりでしょう。FUJIのNo.102は片面計算尺ですが、HEMMIのNo.P265は両面を使用しますので当然の事ながら両面使えるカーソルが付属します。このカーソルはHEMMIのものとしてはあまり見ない3本ネジを使用しているカーソルです。昭和40年代半ばのHEMMI製プラ計算尺の多くが薄いブルーの成形色の滑尺を備えますが、このP265もご多分に漏れず滑尺が薄いブルーです。
このHEMMI No.P265 ビジネス用計算尺は計算尺末期に差し掛かった頃に発売されたことと、ビジネスの現場には卓上電卓がすでに普及し始めていたこともあり、他の専門分野の計算尺と異なり、あまり売れなかった部類の計算尺のような気がします。そのためか各地の文房具店のデッドストックとして未開封新品で発掘される計算尺の代表格であり、かえって中古で出てくるケースの方が珍しいような気がします。一時はNo.P263コマーシャルよりいい値段がしていたようですが、最近は牛の涎のようにつぎつぎと出てくる関係で相場が下がり、1,000円くらいに落ち着いてきましたので、やっと我が手中にもP265が落ちました。あまり使用された形跡はありませんが開封品の中古です。未開封品を入手したらスキャナーに掛けられませんから(笑)発掘場所は栃木は宇都宮で、製造刻印は「S1」ですから昭和43年の9月。No.P265としてはごく初期の生産ロットなのかもしれません。手に持った最初の印象は、P263などよりも更に薄いということでした。実際にNo.P263よりさらに薄く厚さは4ミリほどしかありません。驚いたことにこの初期の生産ロットと思われるこのP265の固定尺を繋ぐブリッジは、よく知られている鮮やかなアイスブルー色ではなく、滑尺と同じブルーグレーの成型品になっています。こんなP265は始めて見ました。固定尺の上下には両方とも溝が切られていてカーソルの突起がその溝に嵌って左右に移動するのはFUJIのNo.102同様の手法です。どちらにしてもこのNo.P265はヘンミらしいところがまったく無く、FUJIの計算尺そのものではないでしょうか?
内容的にP263との相違点は外貨換算機能とダースの換算などを省略し日数の計算機能の他に月日と曜日の換算機能と時間の換算機能が強化されています。更に単位の換算機能は全て日本語で単位が刻まれたので直感的に操作が可能になりましたが、まさかこの計算尺がこのまま輸出に供されたわけではないでしょうから国内専用の計算尺ということになります。商業分野の計算は双方とも複利の計算、利益率、成長率などの機能を備えて同等です。キャッチフレーズは「ビジネスマンのハンド・コンピューター」ですが、どちらにしても今のご時世、ビジネスの世界に再登場出来るようなビジネスツールではありません(笑)
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