HEMMI No.2664S(末期型)
HEMMIの計算尺は本体がプラスチック製で40年代発売のものは最初から塩ビのブロー成形で作られたプラスチックケースに入れられて発売されましたが、従来から発売されていた竹製の両面計算尺も片面計算尺も計算尺末期に製造されたものは塩ビのプラスチックケースに入れられて発売されてます。それというのも相次ぐ資材と人件費の高騰で、HEMMIの計算尺も40年代にはいると段階的に値上げされるのですが、ついに包装資材のコストダウンをせざるを得なくなり、紙製の貼箱を廃して自動成型器でどんどん出来る塩ビのブロー成形のケースを採用したのでしょう。ヘンミの従来型両面および片面計算尺が塩ビのプラケースに変わった時期は昭和47年で、昭和47年前半生産のものには紺帯・緑帯の紙製貼箱で生産されたものがあるので、おそらく年度が改まった47年半ばから全面的に切り替えられたのかもしれません。この塩ビのケースが高校特納用以外の計算尺の生産が終わった昭和50年まで変更がありませんでした。しかし片面計算尺用のプラケースは表面に模様の無いものと両面計算尺用のプラケースのようにすべり止めのためか模様の加工を施されているものの2種類があるようです。片方しか手元にないので、なぜ2種類のプラケースが存在するのか、時代に差があるのかはわかりかねます。プラケースへの変更はすでに計算尺が活躍表舞台から去りつつある時期だったからか、各地の文房具店から発掘される計算尺はこの青蓋プラケースの付属したものが意外に少なくて、それ以前の紺帯・緑帯の紙箱入りのほうが圧倒的に多いような感触です。このプラケースの付属したモデルの外箱蓋部分には追加で「プラケース入」のシールがわざわざ貼られているものがあります。なお。RICOHの計算尺が耐久性に劣った透明スチロール樹脂から塩ビの成型品に変わったのはHEMMIより早く、だいたい昭和43年から44年ころの出来事だと思われますので、RICOHの計算尺に限っては塩ビの青蓋ケースはごく普通の存在なのですが、末期の両面計算尺の一部はフラップ付きのビニールシース付きで売られたモデルもありました。
我が手元にあるHEMMIの片面計算尺の中でもこの末期の青蓋プラケース付きのモデルは昭和47年製のNo.2664Sの1本だけです。何故かって、そりゃ中古の計算尺しか買いませんからねぇ(笑)このNo.2664Sは計算尺空白地帯と思われる西伊豆のとある小さな町のリサイクル屋さんからやってきたもので刻印が「WI」ですから昭和47年9月の生産になります。さすがに計算尺末期のものだけあって殆ど使われた形跡のない計算尺でしたが、30数年動かされたことの無かったカーソルがセルと接触していた部分が茶色く変色してました。この部分をカルナバ入りのクリーナーで磨くと見た目では殆どわかりませんがほんのわずかだけセルが肉痩せしてしまいました。形態的には末期型のNo.2664Sで40年代半ばのNo.2664Sにまで刻まれていた下固定尺側面の13-0-13のスケールが省略され換算表のネジ止めが無くなり、換算表抜け留めの突起がアルミのプレートに施されています。それくらいの違いしか無いだろうとたかを括っていたら、実は40年代の後期モデルとこの末期モデルはゲージマークの書体が異なっていました。中期後期モデルはゲージマークに関しては一貫して同一でしたが、末期型はπの書体が小さくなり、更にラジアン度変換用のρの尻尾が極端に短くなります。だからどうしたと言われると返す言葉が見つかりませんが、まあ興味ある方は比べてみてください。また、このゲージマークの変更がプラケース付属と同時に行わたのかということはわかりません。たぶん緑帯貼箱が付属していた頃にすでに変更があったかもしれません。また、カーソル上の刻印が長い間、上に「JAPAN」下に「SUN HEMMI」だったものが、この末期型のカーソルは上に刻印が無くなり、下のみ「HEMMI JAPAN」と入るようになってます。このカーソル刻印の変更は少なくとも昭和45年には行われていたようです。下固定尺側面のスケールが省略されたのも昭和45年あたりからでしょうか?そうなるとこの末期モデルは昭和45年頃には出現していたかもしれません。
換算表ネジ止めがいつ無くなったかの考査ですが、実は同じNo.2664S系統でも手持ちのNO.2664S-Sの「SA」(昭43年1月)はネジ止め無しなのにも係わらず、No.2664Sの「TE」(昭44年5月)はネジ止めになってます。NO.2662の「UD」(昭45年4月)はネジ止めがありません。機種に違いがあるとはいえ、これじゃこのネジ止め工程をいつ省略したのかもわかりませんな(^_^;)
HEMMI No.2664S末期型表面拡大画像はこちら
HEMMI No.2664S末期型裏面拡大画像はこちら
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