HEMMI No.50/1 機械用計算尺(戦前型)
10インチマンハイム型計算尺のHEMMI No.50のルーツはJ.HEMMIのNo.1に逆尺のCI尺が追加された、いわゆる大正15年型計算尺のJ.HEMMIの旧No.100がルーツのようで、HEMMI計算尺が逸見次郎の個人会社から、大倉龜が経営のトップに就任した後の合資会社逸見製作所設立の過程に於いて、さらにK尺が加わって出来た旧NO.102が新型式番号体系に移行して出来たのがこのNo.50のようです。後の片面計算尺を見慣れた目から見ると、マンハイムのA,B,C,D尺に逆尺のCI尺と3乗尺のK尺が加わっただけの表面6尺で、後の学生用8インチ尺より寂しい内容と言われても仕方がありませんが、当時としてはこれでも世界基準のスタンダードな内容の計算尺だったわけです。旧NO.102に交代して昭和一桁台から昭和26年頃に10インチ片面計算尺の筐体が共通化され幅広型のNo.50Wにモデルチェンジするまで長い間、片面計算尺のスタンダードとして生産され続けましたが、時代の進行により色々なバリエーションがあり、初期の物はセルロイド両端が鋲止めでA型カーソル付き(見かけが逆C型カーソル)で、3本線付きの/3も平行して生産され、昭和2桁に入るとセルの両端に鋲が無くなり、更に時代が下るとA型改良カーソル(四角い金属枠カーソル)付きになりました。また、太平洋戦争開戦直前か、目盛が従来からの馬の歯型から単なる縦線のみで刻まれた普通の物差し型に変わりますが、これは物資不足時代に突入して塗料を少しでも節約する配慮からでしょうか?(笑)位取りの為のインジケーター付きのカーソルが付属した物はNo.51/1、51/3として区別されていますが筐体は同じです。このNo.50には「薄手型」と称するNo.50/1Fとπ切断ずらし尺を持つNo.50/1πの2つの同名異尺がありますが、薄手型はともあれ、π切断ずらし尺を持つNo.50/1πのほうは、当時あまりCF,DF尺の馴染みがなかったためか、はたまた技術屋には普通のマンハイム型のほうが好まれたためか、あまりお目に掛かる事のない計算尺です。昭和14年の逸見計算尺価格表によると、50/1型は9円、50/1Fは7円80銭、50/1πは10円の価格設定でした。ちなみに両面型のNo.153は17円50銭で、双方ともに日払いの日当が50銭くらいの時代にとても高価な物であったことには変わりありません。このNo.50はA型カーソル(逆C型カーソル)が付属した美品ではないとあまり値段が付かない計算尺です。ポケット型で兄弟尺のNo.30やNo.34RKあたりよりも値段が付かないのは納得できませんが、10インチの片面計算尺にしては後の2664Sあたりと比べると内容が寂しすぎるからでしょうか?でもNo.50はこれでいいのです。個人的には初期型の鋲止めでA型カーソル付きがよかったのですが、久々に出てきた今回のNo.50はA型改良カーソル付きで、目盛も普通の物差し型です。実用性は増したもののやはりコレクション的にはちょっと損をしています。年代的にはA型カーソルが付属していながら物差し型目盛が刻まれているNo.50/1が存在するので、それより後の開戦直後あたりの製造ではないでしょうか。まだこの頃は戦前の楕円形断面の黒い貼箱が付属していますが、戦争末期になると単なる黒い紙箱のケースになり、裏の換算表も省略されてしまったようです。京都から届いたNo.50/1はmade in Japan刻印もない開戦直後の生産を証明する個体のようですが、ぬぁぁぁんと裏のアルミ板が腐食して喪失してました。 裏板のない計算尺掴んじゃった〜〜、あ゛〜〜〜ヘタこいたぁぁ〜〜○| ̄|_ と誰かのネタじゃありませんが。裏側にアルミテープを貼って換算表を嵌めたら見かけはごまかせるかもしれないって「そんなの関係ねぇ〜、そんなの関係ねぇ〜」(呆)
HEMMI No.50/1 戦前型表面拡大画像はこちら
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