HEMMI No.135 5"ダルムスタット尺
ダルムスタット形式の計算尺というのは、計算尺の世界でいうと非常に新しい部類に入る計算尺で、日本では戦後になって初めて加わった計算尺のようです。HEMMIでは昭和26年頃から新系列の計算尺として10インチ片面計算尺の筐体が共通化したときに加わった新たな130番台の計算尺No.130が最初で、珍しい6インチの計算尺No.136に遅れて発売されたのが5インチポケット型ダルムスタット尺 No.135です。不思議なことに昭和30年代には既に生産していたはずなのに、30年代の5インチ尺に付属する豚革製のサックケースに入っている物があまり見当たらず、40年代の牛革ケース入りのプラカーソル付きの物ばかりのような気がします。以前からNo.135はデッドストック出現率が何故か高く、かなりの数がオクで出回りましたが、それ以後はさっぱりで最近あまり見かけなくなりました。それに対してフルサイズのNo.130およびNo.130Wはオク上では希少品です。ダルムスタット尺という名前が計算尺マニアの心をくすぐるのかNo.135がさほど珍しくない計算尺にも係わらずけっこう中古相場が高い計算尺でした。No.130と比べて面白いのは、ポケット尺の薄い筐体ゆえにNo.130のように固定尺側面に三角関数尺を配置する事が出来ず、Tan尺をトップに、Cos表示だった実質的P尺がちゃんとP尺表示になっています。そのためポケット尺にも係わらず9尺を詰め込んだ計算尺で、ちょっと込み入りすぎて目盛が見にくいかも知れません。No.2634がその幅を理由にCIF尺を省略した7尺なのに比べてその込み入り様がわかるという物です。もっともNo.2634はNo.2664のサブセットであり、No.2664Sの説明書に書かれている「やむを得ずCIF尺を省略した」というのは虚偽の事実ですが(笑)
No.130が戦後の発売にも係わらず、尺種類の刻印もなくボックスタイプの目盛(馬の歯形)を持つ何故か昭和の始めに逆戻りしたような外見でしたが、さすがにNo.135は普通の物差し型目盛で、No.130のサブセットとはいえども構造上尺配置が変わったため、T,K,P,S尺のみ尺種類の刻印が付いています。また5インチのリッツ尺No.74のカーソル上に刻まれた副カーソル線が主カーソルを挟んで左右対称であり、円の断面積関係だけに対応してkW-hpの変換には何故か対応していないようなのですが、No.135のほうは左右非対称でちゃんとkW-hpの変換に対応してます。そのため、同じブラスチック製の副カーソル線付きカーソルですが、No.74とNo.135のカーソルは別物ですから注意が必要になります。また、No.74のC,D尺延長部分の最小は.88ですが、No.135のC,D尺延長部分の最小は.9となっています。
岡山の倉敷から入手したNo.135の製造刻印は「RE」でしたから昭和42年5月製。RE刻印が広島から出たのだったら洒落が利いていて面白かったのですが(笑)電気が関係する計算はπの絡む2乗の計算が多いため、日常的には机の上にNo.2664Sを転がしておくよりNo.130のほうが使い勝手が良く、そのため持ち歩くのだったらNo.2634よりNo.135のほうが好みです。べき乗計算もNo.135なら対応してますし、No.149Aをポケットに忍ばせるよりもある意味「粋」かもしれません。というのは単にNo.149Aを持っていないためのひがみにも聞こえますが、何とでも思ってください(^_^;)
HEMMI No.135 5インチダルムスタット計算尺表面はこちら
HEMMI No.135 5インチダルムスタット計算尺裏面はこちら
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