HEMMI No.50W 10"技術用
従来のマンハイム型10インチ計算尺にCI尺が加えられた大正15年型計算尺にさらにK尺を加えた旧No.102のネーム変更版であるNo.50は技術用の計算尺のスタンダードとして数多く生産されましたが、戦後昭和26年頃にNo.2664などの10インチ片面尺と本体を共通化するため、ナローボディからワイドボディに生まれ変わったのがこのHEMMI No.50Wです。戦前戦後のNo.50/1はA,[B,CI,C,]D,K,の6尺を納めるには実に適当でよくまとまった計算尺なのですが、部品共通化という流れからワイドボディになったため、少々間延びしたというか格好の良くない計算尺になってしまいました。なにせこの尺本体にはNo.2662のように尺を10本も収めることが出来るのですからNo.2664より更に一本尺の少ないたった6尺装備のNo.50Wが必要以上にワイドな尺本体を使用しているというのが判ると思います。戦前のNo.50/1と並べてみると良くわかりますが、長さもNo.50Wは1cmほど長くなります。これは左右に延長尺を持つNo.64やNo.130などに合わせて尺本体を共通にしたためです。
神戸から届いたNo.50Wは「DJ」刻印なので昭和28年10月製です。さらに「S」が加わったら当局のサフィックスなんですけどね(^_^;)このNo.50Wは国内物にもかかわらず上部のスケールがインチで下部のスケールがメトリックという米英仕様でした。神戸在住の外国人向けでしょうか?(笑)戦前のナローモデルのNo.50/1と比べるとA,B尺上にMマークが無くなり、C,D尺上のC及びC1マークは上のC尺上のみになります。滑尺裏はS,L,Tで変わりありませんが、戦前のNo.50/1のSINはA,B尺に対応した目盛だったものが、このNo.50WはC,D尺対応の目盛になったのが大きく変わった点です。このC1マークというのはかなり古い時代から存在するゲージマークですが、新しい年代の計算尺には存在しません。何のゲージマークかというと円の断面積を計算するCゲージが目外れを起こすような数のとき、D尺に取った数値をC尺上のC1に合わせ、右基線の示すA尺の数値がその円の断面積となる目外れ対策用ゲージマークなのです。円筒の体積計算などの目外れには有効ですが、桁の読み替えが当然必要になります。延長尺を持ち副カーソル線付きカーソルが出てから影が薄くなったゲージマークのようです。
裏の換算表はNo.60やNo.130と同じ三角形などの図形が含まれていないもの。裏側には昭和32年までのモデルの例どおりに真ん中に「SUN HEMMIJAPAN DJ」が黒で入れられ、同列右の端に型式名「NO.50W」が入っています。裏のアルミ板固定方法は一部ネジ止め併用で、戦時中からの構造を踏襲、換算表もネジ止めです。しかし、このNo.50WはNo.130やNo.64と異なり、SINやTANの6度以下84度以上の微小角を簡単に求めるのが困難で、それだけでも技術用の看板を掲げるにはちょいと物足りない点です。でもまあ、逆尺K尺付きとはいえシンプルなマンハイム尺に多機能を望む方が間違いでしょうし、これはこれでいいのです。シンプルな片面尺故に無線従事者国家試験でこれを使っちゃいかんという試験官もいないでしょうし、4インチのNo.30を持ち込むよりはよっぽど役に立つと思いますが、これだけNo.2664Sが溢れている世の中、わざわざNo.50Wを捜し出して試験に臨むのもムリがありますけどね(^_^;)
HEMMI No.50W 技術用表面拡大画像はこちら
HEMMI No.50W 技術用裏面拡大画像はこちら
| Permalink | 0
Comments