HEMMI No.P43S 8" 学生用
学生用8インチマンハイム型計算尺は長きに渡り各社からいろんな型式が発売されました。そのルーツは戦時中に発売されたNo.2640で、非常時の材料節約の観点から学生用計算尺を8インチと定めたのがそのままになって学生用の計算尺というと8インチというスタイルが定まったようです。戦後、新制中学校の数学に計算尺の項目が正式に加わり、No.2640にあわせてずらし尺を備えたNo.45も使われました。昭和30年代も半ばを過ぎるとマンハイム尺よりもずらし尺の方が多用されたようで、HEMMIでいうとNo.45Kが定番となりますが、同時期に発売されたマンハイム版がNo.43Aとなります。40年代に入ると毎年新学期に多用される竹製計算尺の製造コストが高騰したため、塩化ビニール素材のプラスチック製とした8インチ計算尺が発売されそれぞれNo.P45S及びNo.P43Sとなりました。(30年代発売のプラ尺にP45Kがありますが、P45SはP45Kよりさらにコストダウンを図った物です)製造は山梨の技研系で、末尾にSの付くものは裏に補助カーソル線の窓がありますが、後に発売されたD付きの物は更なるコストダウンで補助カーソル線窓も無くなり、三角関数を計算するためには滑尺を裏返す必要がありました。神戸からNo.50Wと共に入手したNo.P43Sは「ヘTA」刻印ですから昭和44年1月の明らかに山梨製です。この頃の技研系計算尺同様に滑尺部分が薄いブルーに着色されています。ゲージマークは中学生用らしくπマークしかありません。昭和40年代の竹製学生尺同様にカーソルのCI尺C尺部分に「÷×」の記号が加わったプラ一体型のものが装着されています。この時代の8インチ学生尺は竹尺もプラスチック尺も換算表は裏面に貼られず別添えのカードとなり、青蓋の塩ビケースに入っていました。入手価格はたったの100円で、久しぶりの100円計算尺です(笑)しかし、この時代はP43系とP45系の生産数の割合はどれくらいだったのでしょうか?中古市場でも明らかにP45系の方が数も豊富に出回っていたような気がしますが。やはりこの頃になると時代のニーズからか、中学生に購入された計算尺はずらし尺を備えたNo.P45系の計算尺が主流で、そのためにマンハイムのNo.P43系はごく少数派だったのでしょう。そして我々の世代が中学生であった40年代末には計算尺の記述があってももはや世の中では必要とされない技能となり、実際には計算尺の授業が省略されてしまったりして、学校でも一般社会でも計算尺に触れたことのない世代が増えていきます。
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