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November 18, 2007

IDEAL RELAY No.109 航空用計算尺?

 この計算尺に関してはまったく予備知識がなく、けっこうな「珍尺」だと思われます。製造年代および正確な用途が詳しくわかる方、ご教授ください。当方がわかる範囲で推測すると、どうやら簡易的な航空計算尺であるような気がします。というのもE-6B系統の丸形航空計算尺のような温度補正目盛が赤で刻んであり、おそらく対地速度を高度・温度で補正するためのもので、秒速・時速に対する到達距離と時間などの換算がメインの機能のような計算尺と考えます。そのため航空用計算尺の一種と推測しますが、戦後のものだとすると、日本でどういう需要があってこういうものを作ったのかが不思議な感じがします。アメリカでは第二次世界大戦のおかげで大量に使用された丸形のE-6Bが航空計算尺のスタンダードですし、こういう簡単な計算尺が米国に輸出できる余地がありません。また日本では敗戦後、事実上の占領政策がサンフランシスコ講和会議により解消されるまで飛行することさえ禁じられていたわけですし。刻印は旧字体で「理研光學工業株式會社 發賣」とありまして、リコー創業者の市村氏が設立した日本文具が社名変更した東洋特専興業もしくは戦後になってからの日本計算尺/リレー産業系統のものだと言うことが解ると思いますが、恐ろしいことに戦前ヘンミの「A型カーソル」のような逆Cタイプのカーソルがついていました。フレームに刻印がまったくありませんし、HEMMIでは開戦後にはすべて改良A型カーソルになってしまいましたので、まちがいなくオリジナルのカーソルでしょう。当方が判る尺の種類としては表面はK,A,B,C,D尺がありますが、通常CI尺の鎮座する部分にはいろいろと補正目盛のようなものが刻まれています。一番下の尺は見当がつきません。滑尺裏は何と逆尺のLL1,LL2,および小文字のq尺というのが刻まれていますが、このq尺というのは何でしょう?宮崎治助氏のP尺Q尺とも違う物のような気がしますが、中のゲージマークを見ると秒速/mから他の速度単位への換算尺のような気がします。
 この計算尺の裏側に型式名を表すオーバルシールが裏面に残されていましてそこには「SLIDE RULE IDEAL RELAY #109 ノット」と書かれており、RELAYのNo.109というのがこの計算尺の品名のようです。「IDEAL」と「RELAY」の商標が併記されたものを他にも見たことがあるような気がしますが、戦後のリレー産業以降のことでしょうか?それにしては「理研光學工業株式會社 發賣」の文字が古すぎて似つかわしくないような気がします。薄いボール紙に黒い擬皮紙をあしらった戦前ヘンミ計算尺そっくりな楕円断面のケースに入っていましたが、戦時中計算尺のようにケースにはまったく刻印がありません。計算尺側にも「made in Japan」のような原産国表示もありません。計算尺上部にメトリックで25cmのスケール、下部にインチで10インチのスケールが刻まれているので、国内向けの計算尺なのでしょう。上固定尺右側に単発航空機のシンボルマークが刻まれていますが、リコー系の計算尺でこういう特殊なマークがある計算尺も初めてです。戦前尺によくある症状で裏板が腐食して崩壊寸前でした。この裏板の表面メッキ部分と中のアルミ部分の電位差によって湿気が引き金となり一種の電池と化して電気分解してしまうようなのです。その電位差による腐食を促進するのがこの裏板を本体に繋いでいる金属の鋲とネジで、表面部分と中の部分を導通させて電位差を等しくしようとする作用が電気分解に拍車を掛けているようです。アルミからメッキなどの表面加工を排除するか、ラッカー仕上げであれば防げた問題なのですが、当時はメーカー側も予測できなかった現象なのでしょう。0.5mmの厚さで長さが30cmのアルミ板が市販されていますから、何とか似たような裏板を自作できそうな気もしますが、本体からどうやってピンを抜くかが問題です。さらに電気分解で酸化したアルミニウムが溝を押し上げ、溝部分が変形していますが、どうやって元に戻すかというのも問題です。湯で煮て平坦な金属板に挟み上下に圧力を掛けて乾燥させるという手段はセルロイドのほうが変形しそうで恐いですが、何か手段があるかも知れません。
Relay109

RELAY No.109 表面拡大画像はこちら
RELAY No.109 裏面拡大画像はこちら
RELAY No.109 滑尺裏面拡大画像はこちら


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Comments

YOSHIさん

 圧力の関係はてっきりQNHによる高度補正の関係かと考えてましたら、
ピトー管圧力と速度の関係でしたか。ご教授ありがとうございます。
 ピトー管関係の数式は父親が戦時中、工業学校で使っていた航空力学本が
数冊あり、たぶんここを参照すれば出てくるかもしれませんので捜してみます。
 この計算尺は愛知から出てきましたので、おそらく三菱の関係者が使用して
いたのではないかと想像してましたが、しかしこういう特殊な計算尺が市販されて
いたというのがオドロキです。古いRELAY計算尺には電気尺以外殆ど特殊な計算尺
は見当たりませんし…

Posted by: じぇいかん | November 19, 2007 10:07 PM

解らないのを放置するのはできない性分で、困ったものです。昨夜のコメントへの追加です。

やはり一番下の尺はピトー管の水柱の値ですね。D尺左端1の下は48ですが、4.4√48=100km/hとなります。同様に14.4√100=144km/h、D尺右端の下は4820ですが、14.4√4820=1000km/hとなります。

もちろん、一番下の水柱の√をとって、それに14.4を×というようなことをしなくて良い、尺の動かし方があるはずです。

それにしても、これが戦後のものだとすれば、講和条約発効のころに販売されたのでしょうね。

この尺を考えた方は、戦前の航空機開発技術者だったのでしょうか?音速近くの速度まで計算できるというのには、胸が熱くなります。

朝鮮戦争の時、まだB29が編隊で飛んでいたり、P38かブラックウイドーの双胴機が上空高く朝鮮半島に向かっていったのを思い出します。

講和後は、軽飛行機からデパートなどの広告チラシが撒かれたものです。

この国の発展を願った技術者が大勢いたのだということや、当時の国際情勢を思い出させてくれる尺ですね。

Posted by: YOSHI | November 19, 2007 08:06 PM

始めまして。いつも楽しませていただいています。この尺は小生も狙っていたのですが、落札時刻に移動中で悔しい思いをしていました。何だか、片思いの恋人を友人にとられたような気分でした(失礼)。

さて、恋人というのは気になるもので、一生懸命観察しています。小生は、本職「化学」、生業「環境」の人間ですから、この尺を見たとき「化学系」かと思っていました。

こうしてじっくり見させていただくと、航空機系でしょうね。判る範囲で記載します。

赤のオーバーレンジのMは、1000km/h=277m/secの換算ですね。A,BのMは1/πですね。

一番下のkg/m2 と mmWはmmW=mm水柱ですから、kg/m2=mmWとなります。どうもここは、ピトー管による差圧で速度を求める式と関係ありそうです。
重力の加速度gや水の比重等を含む式がありますが、要約すると速度 m/s=4.04√hとなります。hはピトー管で計った水柱の高さ(mm)です。
これをkm/hに換算するとkm/h=14.5√hとなります。滑尺裏のqと関連するかもしれません。

小生くらいの年齢になると、ボケ防止に最適の尺になりそうです。人様の持ち物であそばせていただく非礼をお許しください。

Posted by: YOSHI | November 18, 2007 10:36 PM

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