新旧のコンサイス重量計算器
コンサイスの市販された金属材料系円形重量計算器には2種類あって、主に銅・鋳鉄・砲金の板と丸棒の重量を計算し、素材が洋銀製(実際は黄銅にクロームメッキ)の「金属重量計算器」と、金属はもちろんのこと非金属を含んだ板・管・棒・線・球の重量を求めるためのビニール素材で作られた「重量計算器」です。金属製の方は使用環境が過酷な鋳物職場などの高温な場所でも熱の影響で歪んだり曲がったりしないように金属素材としたもので、コストダウンで後にビニール素材にモデルチェンジしたわけではありません。この重量計算器にはそれぞれ大まかに分類するとカーソルの付いていない前期型とカーソルの付いている後期型があるようです。当初カーソルが付いていないものはすべてカーソルの欠品かと思いましたがそうではないようで、それぞれ円盤を止めるパーツなど差異が認められます。「重量計算器」の方は現行品で、今でも入手することが出来ますが、実際に現場ではいちいち計算機を叩くよりもこういう専用計算具を使う方が今でも楽なんでしょう。
実は昨年、根本が腐食して倒壊の恐れがあった鉄管煙突を、業者に撤去させようとしたら8万円だなんて言われて、計算尺を使い外径から内径と引いて鉄の比重で鉄管の総重量を計算するとおおよそ82kgと出たため、途中で上下を二分割すれば1人で撤去可能と判断、8メートルの煙突の上部にロープを掛け、薄皮一枚分残して切断機で切断し、ロープを緩めて蹴り倒すとうまい具合にその部分がヒンジみたいになって下に垂れ下がり、ロープをかけ直してヒンジ部分を切断し、徐々にロープを緩めて無事に煙突上部の軟着陸に成功。今度は下部にロープを掛け、ステー部分を切断して徐々にロープを緩めると下部の部分も地上に降ろすことが出来ましたが、計算上で総重量が100キロを超えていたら、おそらく1人では手を付けなかったと思われます。まあこんな管の重量なども円柱の外径から内径を引くなどという面倒くさいプロセス無しに計算出来るのでしょう。ちなみに無事に二分割して地上に降ろした鉄管煙突はサビだらけながら鉄材高騰の折り、業者が喜んでトラックで持っていってくれました。
このコンサイス重量計算器はどうやら戦前の「藤野式鐵・鋳鐵重量計算器」あたりが原型らしく、コンサイスでは今でも現行商品であることから金属関係の現場には未だに相当数が残っているのかもしれません。今回のコンサイス重量計算器もおそらく廃業した金属加工業の現場辺りから出た物で、新旧まとめて何と一度に4枚入手しましたが、おまけにマイクロメーター3台と中型のダイアルゲージ付きノギスも1台付いてきました。元値からすると当然コンサイスのほうが刺身のつまみたいなものなのでしょうが(笑)内訳としては洋銀製金属重量計算器が1枚、カーソル無しの重量計算器が2枚、カーソル付き重量計算器が1枚です。この4枚のうち、1枚のみが非常によく使い込まれて真ん中のディスクの透明部分はすり傷だらけでしたが、他の3枚は半透明のビニール袋が開封してありながら殆ど使った形跡のないもので、もちろん説明書も揃っていました。新旧の重量計算器の違いは、カーソルの追加が最大の違いですが、その他にも材料選択線の赤以外は黒のモノカラーの印刷だったものが新型は赤の目盛を多用している。旧型は「球・棒・線」などの形状を表す文字が中心から放射状に打たれているが、新型は全て上を向くように打たれている。新型の裏にはヤード・ポンドとメトリックの換算値が円周上に印刷されたなどの違いが認められます。また旧型は透明部分を持つ真ん中のディスクが一番下のディスクと同じ径のため、手で回すのにはさほど苦労しないのですが、新型は透明部分の径が小さくなり、回りにくくなっています。考えようによっては現場で扱うマテリアルがそう色々と変わるわけではないので、一度鋳鉄なら鋳鉄にマテリアルを選択すれば、容易にずれないようにして、結果的におかしな数字をはじき出さないようにする改良だと思われます。カーソルの追加はさほど必要性を感じませんが、コンサイスはフライトコンピュターにもE-6B一族には見られないカーソルを持ってますので、コンサイスなりの一種の改良なのでしょう。旧型の重量計算器は当時の定価が\500でしたが、現在の価格は\2,520です。旧型の説明書は単色の活版刷りですが、新型はモノクロの軽オフセット印刷です。新型の説明書にあっても内容は基本的に同じで、カーソルの使い方については解説されていないところが妙ですが、旧版は横開き、新版は縦開きという違いがあります。
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