HEMMI No.255D 電気用
電気用両面計算尺のHEMMI No.255Dは戦後になって新たに発売されたNo.255の裏面にDI尺を追加したマイナーチェンジ型で、昭和30年代の最末期から一般向け計算尺の生産終了である昭和50年3月頃まで作り続けられたようです。これというのも電気系の国家試験には当時まだ計算尺持込可でも電卓禁止という試験が多数あり、その必要性から一定の需要があったからでしょう。今では逆に電検試験などは指定電卓持込可のようですが、いつのまにか計算尺不可となってしまい、現時点で電卓不可計算尺持込可という変則的な試験は、当方の知る限りは無線従事者国家試験だけのような気がします。ともあれ電気物理のように枯れたというか、古くから完成されてしまったアナログの技術に関しては、有効桁三桁の計算尺との相性が非常に良い事から、古今東西各種の電気用計算尺が存在しており、実際の現場ではかなり後まで愛用されたことは確かです。
当方の手元にも年々電気系計算尺が増殖し、片面計算尺はHEMMIのNo.80初期型からRICOH、FUJIに至るまで、両面型はHEMMIの戦前ユニバーサル型No.153から20インチのNo.275Dに至るまで転がっているのですが、No.255系統は3種類のパターンモデルがある中で初期型のNo.255しか持っていませんでした。No.255D自体は電気技術系統でかなりの数が使われたためか決して珍しい計算尺ではありません。しかし意外と落札金額が高騰するのと極力塩ビケース入りのNo.255Dを物色していたために今回年末の帳尻合わせで初の入手となりました(笑)内容としては送電線展開のための双曲線関数と度・ラジアンの直接変換以外はごく普通の内容で、表面はπ切断ずらしのCF,DF尺となっていますので、一般乗除算用としての日常使いにも不自由はしないでしょう。逆に電気物理系用途としてはNo.153のほうが使いやすいと思います。
No.255の発売は他の戦後新シリーズの計算尺と同じく昭和26年のようですが、昭和31年のG刻印までのものは尺のレイアウトが後の255/255Dとまったく異なり、表面がL,K,DF,[CF,CIF,CI,C] D,χ,θ、裏面がSh1,Sh2,Th,A,[B,Tl2,Tl1,SI,C,] D,LL3,LL2,LL1 となっています。昭和32年のH刻印のものから表面がL,K,DF,[CF,CIF,CI,C,] D,LL3,LL2,LL1、裏面がSh1,Sh2,Th,A,[B,TI2,TI1,SI,C,] D,χ,θとなり、昭和40年頃にさらにDI尺が加わったNo.255Dにマイナーチェンジし、昭和50年まで生産が続きます。箱は昭和33年までが「SUN HEMMI BANBOO SLIDE RULE」のスモールロゴが入った緑の貼箱、昭和40年までは「HEMMI」のロゴが大きくなった同じく緑の貼箱、昭和41年から紺色の帯が入った薄いベージュ地模様の貼箱となり、昭和47年の半ばからポリエチレンのブロー成形で作られた角形の青蓋プラケースに変更になり昭和50年の製造中止までこのケースが付属します。このケースは40年代後期のプラ製両面計算尺用に付属する角形青蓋プラケースと長さ・厚さも異なり、プラ両面計算尺用ケースは長さが0.6cmほど長く、厚みは1.5cmと薄いのに、竹製両面計算尺用ケースは1.8cmほどある厚いケースです。大は小を兼ねるような気がしますが、プラ尺は山梨で生産されたようですので、プラの両面尺用ケースも山梨で独自に用意したものなのでしょう。入手先は山口の岩国からで、おまけにNo.P43Sの未使用だけど開封品が2本と裏のアルミが腐食ですっかり抜けたオキュパイド時代のNo.2634が付いてきました。製造刻印が「WK」ですから昭和47年11月の製造です。殆ど計算尺末期の製造ですからろくに使われずにしまい込まれたものらしくきれいな計算尺でしたが、プラケースは湿気が外に抜けないためか金具付近のセルが茶色く変色し、かび臭さを感じさせるような状態でした。茶色く変色した部分はメラミンスポンジできれいになりましたが、プラケースのかび臭さには我慢が出来ず、中性洗剤を溶かした温湯に丸ごと浸け置き洗いしたのにもかかわらずまだ少しかび臭さが残っています。何かいい脱臭法ないでしょうか?(^_^;)
HEMMI No.255D 電気用(WK刻印)表面拡大画像はこちら
HEMMI No.255D 電気用(WK刻印)裏面拡大画像はこちら
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