違法中継局摘発の反響
報道によると道東は中標津の電気店主が電波法違反(総務大臣の免許を受けずに中継無線局を開局)の容疑で北海道総合通信局の告発を受け5日に中標津警察署に逮捕されたとのことです。警察によるとこの店主は1月の上旬から2月の下旬の間、自宅など2カ所にアンテナを建て、受信した民放FM局のラジオ番組を免許不要の無線局が認められている出力の150倍にあたる75,000マイクロボルトで送信した容疑とのことですが、おそらく電波法施行規則第6条の「322MHz以下の電波を使用するものは電界強度が3mの距離で500μV/m以下」の免許不要微弱無線設備基準の150倍ということなのでしょう。 取り調べに対しこの店主は「出力が弱く違法なことはしていない」と容疑を否定しているようですが、数字を突きつけられれば言い逃れは出来ないでしょう。電界強度的にみると、おそらく往年のFMトランスミッタなどの市販品を改造して送信用のアンテナに接続できるようにした無線設備ではなかったのかと想像してしまいますが、ご存じのようにFM放送帯を使用していた旧規格のワイヤレスマイクは昭和61年に10年の移行期間を設けて平成8年5月より使用出来なくなりました。当時のFMワイヤレスマイクはたぶん出力が100mWほどあったのではないかと思いますが、よくマンガ雑誌に広告が載っていた往年の光波無線製カッパマイクを購入してこれをトランスミッタにし、FMラジオをレシーバーにして近所の仲間と無線ごっこをした経験のある人もいるかもしれません。また、SONYあたりのFMトランスミッタをラジカセに繋いで、ミキシングマイク機能を使って誰が聞いているのかもわからないDJ番組を延々とやっていた人もいるかもしれません(笑)けっきょく電波の届く範囲を広げるために高出力化に走り、ある日電管の電波探索に引っかかって警察に踏み込まれた海賊放送局の噂なども昔は耳にしたものです。
ところが今回のケースはDJヲタの海賊局摘発という色合いとは少々異なり、放送インフラの地方格差という問題から地元では極めて同情的な意見が多く聞かれ、事件報道の後にも翌日に「放送インフラ格差」の問題として新聞に取り上げられるようになりました。首都圏在住者には想像もつかないことだと思いますが、北海道の末端部分では民放FM局はおろか、昼間はNHK以外の民放AM局さえ受信できない場所がまだまだあるのです。このいわゆる「不感地帯」は10年前からまったくその範囲が狭まらず、その原因として札幌に設置された放送局の老朽機器更新と地上デジタル対策に追われて億単位の設備投資が要求される中継局設置が滞っていることによります。20数年前、まだ中標津に線路があったころに一度車で出掛けたことがありますが、中標津周辺ではNHKしかラジオが入らないのでTOBUといショッピングセンターのレコードショップに飛び込んでなるべく長〜いミュージックテープとして高中正義のベストをGBM用に購入したことがあります。線路が無くなって20年経つはずですが、今だに昼間には民放局が入らないとは思いも寄りませんでした。
ということで、この電気店主は一種の「実力行使」で独自に不法中継局を開局したのでしょうが、この逮捕劇により「放送インフラの地方格差」問題が広くマスコミに取り上げられることで、地域の状況が改善される問題提起になることまで計算していたのであればけっこうな「策士」ですが、単に「出力が弱く違法なことはしていない」と本気で信じていたのであればただのアホかもしれません。ともあれ「法令に違反」していたことが確かですから擁護出来ませんが、個人的には今どき「高出力違法市民ラジオを開局して周囲のTV画面が真っ暗になったという通報を受けて逮捕」されるほんまもんのアホが引き起こす電波法違反事件とは意味合いが違うと思いたいのですが。まあ、この事件をきっかけに誰かの言う「電波特区」が実施されることにより試聴組合を設立して「私設の中継局」などが開設許可になるような環境の変化でもなければこの「放送インフラの地方格差」は今後も解消しないでしょう。本来は放送事業者が「難視聴地域100%解消」を第一目標に目指して真摯に取り組むべき問題なんですけどね(^_^;)
| Permalink | 0
Comments