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April 29, 2008

アマチュア有線(磁石式電話機)

 相変わらず無線の方はローバンド以外はまったく聞こえず無線の交信からはご無沙汰していますが、そんなコンディションの悪さもあって、最近はついにアマチュア無線ならぬアマチュア有線のほうに手を出してしまっています。事の発端は少し前に旧国鉄で使用していた木箱の携帯電話「磁石式電話機(携帯用)電12118号C」というものを入手したことでした。そもそも当方と磁石式電話機との関わりというのは、地元の小学校によく昔の日本映画に出てくる壁掛けで手回しのクランクがついたデルビル式とかいう電話機が1セット、体育館の入り口と職員室前廊下のほんの20mくらいの距離を隔てて置いてあったことから始まります。当時すでに自動交換機の時代で、普通にダイアル式の黒電話を使ってましたので、おそらく電電公社が不要になった磁石式の壁掛け電話機を小学校に教材用として設置してくれたのでしょう。たぶん小学校二年くらいのときに、クラスを2つに分けてこの電話機の通話実験をさせてくれたのですが、無情にも当方の順番になったところで授業終了のチャイムが鳴り、結局二度とその磁石式電話機を使う機会は訪れませんでした。そのため、このデルビル式電話機がどういう音が聞こえたか未だにわからないまま今日の携帯電話時代を迎えてしまいました。
 鉄道電話に関して補足しますが、旧国鉄は鉄道沿線に通信網を持っていまして、その通信回線が今みたいに「光ファイバーケーブルの束」というわけにいかないので、電信柱に横木を何本も渡して単線の電線を何回線も張り、その電信柱が見た目で「ハエタタキ」などと呼ばれたりしていました。そういう通信網の中で沿線電話回線とでもいうものがあり、駅間におかれた電話機による閉塞連絡や、500mごとに設置された端子箱に列車乗務員が携帯用の電話機をつなぎ、駅との通信するというものでした。運転事故等の非常の連絡の場合には列車防護措置を施した上、機関助士が重い木箱の携帯電話機を持って端子箱まで全力疾走する必要があり、鶴見・三河島事故の後は年に何度か非常訓練でこういう光景が見られたようです。その後駅間も自動閉塞化が進み、主要幹線沿線の回線は自動交換機化され、列車の携帯電話機も一部ダイアル呼出機となったようですが、国鉄末期から分割民営化の時代にはローカル線の末端あたりにも列車無線が普及しましたので、沿線の端子箱に携帯電話機をつないで連絡を取り合うのは閉塞機用の他には、保線や信号関係の構内・区間連絡に限定されるようになったようです。まあ、そこいらの経緯は鉄道関係者じゃないので詳しくはわかりかねますが。
 ところが鉄道で列車無線と併せてこういう沿線電話回線システムがしっかり現役で生きている場所がちゃんとありまして、そこはSL列車で有名な大井川鐵道です。動いている車両もクラシックですが、通信システムからしてSL時代そのままなんですねぇ(^_^;) 一つの回線にすべての電話機が並列にぶら下がっているわけで、そのためある電話がクランクを回して呼び出しを掛けるとすべての電話のベルが鳴ってしまいます。そのため、特定の電話を呼び出すため、あらかじめモールス符号のような特定呼び出し符号を決めておき、クランク回転の断続でこの符号を送ることによって呼ばれた電話機は受話器を取って通話するというシステムです。非常の際などはあらかじめ定めておいた一斉呼び出し符号を送ることで一度にたくさんの電話機に対し、一方的に指令を送ることも可能です。まあ、このシステムが言うなれば無線的なのですが、それもそのはずで、以前は同じ有線回線を使って和文モールス符号を送出し、特定場所の呼び出し・交信をしていたわけで、その回線を誰でも使えるように電話に置き換えただけですから当然でしょう(笑)この鉄道沿線電話に使用された電話機が同然のこと我々が見慣れたダイアルのない物で、側面に手回しのクランクを備えます、このクランクが発電器につながってまして交流50Vくらいの電圧を発生し、それを電話線に流すことで相手のベルをならすという物です。各電話機に3V程度の直流電圧を加えてやる必要があり、固定電話には3Vの箱電池、携帯機には電池ホルダーに単一型電池を2本使用します。M旧国鉄では固定電話機は最終的に昭和33年頃から登場した沖電気の41号M型準拠品が採用され、携帯機は昭和40年代初頃までは同じく沖電気の木箱入磁石式電話機 電12118号が採用されています。その後耐候性を意識してかビニールレザー入りの軽い携帯電話機が採用され、その後には自動交換機に対応したダイアル付きの携帯電話機も一部で使用されたようです。コレクション的には革製のスリングが付いた木箱の携帯電話機がSL時代を彷彿とさせていいと思うのですが、意外にアース棒が欠品が多く、実際に入手したのはごく最近のことです。あまり外見が良くないのはわかっていましたが、届いてみるとゴム足の一本が欠品で、クランクの軸が釘で代用されてました。旋盤があればこんな軸を削り出すことは訳もないのですが、市販のねじを使ってクランクが回せるように改造しました。長らく山陰方面で使用されていた携帯電話機で、昭和45年頃までは山陰本線の鳥取あたりの客貨車区で使用され、そこから鳥取電気支区で使用されたものです。蓋の上部には智頭支区の名称書きを消された跡もありました。そのような歴戦のつわものでしたが、オシロをつないでクランクを回すとちゃんと交流が出ていることがわかり、発電器が生きていることだけは確認できました。しかし、この一台では通話機能を確かめようもなくしばらくはオブジェになってました。
 ところが最近、高校同期の一技一通から卓上から壁掛けまで何台もの4号電話機等が送られてきて、その中に41号M型電話機が2台ありました。この41号M型はオクでも1,000円くらいで落ちてしまうので、一台入手しようと思っていたところ、予期せずに転がり込んできた事になります。せっかくなのでこれを家の一階居間に設置して電話線を二階にのばし、二階の鉄道携帯電話に接続してインターホン代わりに活用することにします。送られてきた41号M型は一台が昭和37年沖電気製で電電公社のラベルと検印がついていましたので公衆回線につながれていたものです。もう一台は昭和41年の沖電気製でこちらの方は構内電話機として使われていたようで、沖電気のラベルだけがついていました。37年製のほうは中の部品に腐食が多く、41年の方は中身もきれいでそのまま使えそうでしたが、41号Mにありがちな落下によるボディの欠損がありましたので、2台の部品をいいとこ取りでニコイチにして組み立ててしまいました。
 公衆回線には約48Vの電圧が加わっているため、電話本体に電源を必要としない黒電話などは停電でも使えます。しかし、41号M型をインターホン代わりに使用するためには外部から3Vの直流電圧を加えてやる必要があります。この電源は磁石式壁掛電話の時代から3Vの平型電池というのが使用されてきましたが、このFM5という形式の平型通信用電池はナショナルでは今年の3月についに製造中止にされ、富士通ブランドの物はまだ入手出来るようですがこちらのほうも風前の灯火です。3Vの給電は41号Mの青線、茶線から外部に電源線を引き出すか、専用ローゼットの青線、茶線ターミナルから電源線を引き出し、FM5電池のターミナルにねじ止めすれば完了です。実は現役の構内電話として使用されている41号M型電話にはACアダプタ仕様のものもあるようですが、停電だと用をなしませんし、磁石式電話の趣味性という観点からすると邪道でしょう(笑)あとはツイステッドペアはもったいないのでインターホン線とかベル線などの名称で売られている単芯平行コードでL1,L2を木箱の携帯電話機のL1,L2端子につなげば使用できるはずです。
 短い電線でお互いの端子をつなぎ、クランクを回すと当たり前の事ながら呼び出しのベルが鳴りました。41号Mのベル音は澄んだ涼やかな音、木箱の携帯電話機はこもった音がします。2つの電話機の受話器をあげ送話、受話の変調具合を調べましたが41号Mのほうは特に問題がないようでしたが、木箱の携帯電話のほうは送話は問題ありませんでしたが、受話のほうが「最初が良くても途中で感度と明瞭度が急に低下する」「送話ボタンを何回か動かすと改善するものの、すぐに同じような現象が起きる」というトラブルが発生しました。木箱の携帯電話機はフックスイッチがない代わりに受話器に押すと送話状態になるプッシュスイッチが付いています。そのため、この接点周りが接触不良を起こしているのを疑って接点洗浄を行い、さらに送受話器パーツは4号電話機の受話器部品とまったく一緒でしたので、これらを交換してみましたが、同じような症状がやはり出てしまいました。どうも4号電話系に特有のカーボンマイクが湿気による経年劣化を起こしていたようで、がさがさ音と送話中の音量音質低下はまずこの送話器のカーボンマイクに原因があることを疑った方が良さそうです。
 最初に二階で木箱の携帯電話機を使い、一階を呼び出して会話したときの印象は、「あれ、こんなに潤いのない音だったっけ?」でした。4号電話機と同じカーボンピックアップのためかプロセッサーが掛かったような高音が強調され低音がまったくない堅い音質で、明瞭度はいいのですが、忠実度という点からするとなんか別人と話をしているような感じでした。そういえば、今はあんまり感じなくなりましたが、電話の声と実際の声が全く違ったっていう話は昔はよくありましたよね?あれは当時の電話機の特性が忠実度はある程度犠牲にしても、当時の低い回線品質による漏話やノイズに負けずに明瞭度を上げるための設定だったかもしれません。これは通信の本質ですが、今は回線の品質が向上してわざわざ忠実度を犠牲にしてまで明瞭度のみ高める必要がなくなったのかもしれません。
木箱の携帯型電話機を床に転がしておきましたがやはり使い勝手が悪く、さりとて磁石式電話機の卓上型はもう手持ちがないため、酔狂にも4号MR磁石式電話機を一台オクで入手してしまいました。3号Mと41号Mは中古市場にも豊富にあるのですが、それに比べると4号Mは少ないような。格好は4号A自動式と全く異なり、発電機を内蔵している分だけごろんとした大きな電話機です。形としては流線型電気機関車のEF55によく似ています(笑)函館からやってきたこの4号MR型は旧国鉄の「鉄電」だったというふれこみだったのですが、実際はどうなんでしょうね。

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