RELAY No.112 の刻印違い
π切断ずらしのCF,DF尺を持つ片面計算尺というのは日本ではごくごく少数派ですが、RELAY/RICOHでは10インチの技術用はおろか8インチの学生用まで用意されていました。しかし、双方ともに今ではなかなかお目に掛かることがないため、おそらく√10切断ずらしの製品に比べてわずかな数量しか製造されなかったのは確かでしょう。なぜHEMMIの片面尺にπ切断ずらしのものが見当たらないか不思議ですが、おそらくπを含む計算における滑尺操作を省略する利便性のために、わざわざπ切断の片面計算尺を作るのが不合理とでも考えたのでしょうか。π切断尺の選択肢としては機械技術用や電気用などの両面計算尺を選ばせるという戦略だったかもしれません。
その少数派π切断片面尺としてHEMMIのNo.2664をπ切断にしただけの内容とでも言うべきモデルがRELAYのNo.112です。なかなかオクにも登場しない計算尺ですが、2月にたまたま1本出てきましたので押さえておきました。過去にも1本入手済ですので、さほど興味もなくそのまま保管してしまったのですが、改めて前回入手したNo.112と2本並べてみると、驚いたことに刻印の違いはおろか、微妙にサイズが違うのです(@_@;) 2本を並べることで、同じ尺度は持ちながらも本体はベースが別物だということが判りました。ちなみに以前入手した「J.S-1」刻印・昭和36年1月製の長さが28.4cmで身幅が4.03mmに対し、今回入手した「G.K-2」刻印・昭和33年1月製は長さが27.9cmで身幅が39mmしかありません。丹頂黒貼箱の同じようなケースが付属していましたが、こちらのほうも微妙に長さとロゴが異なっていました。ゲージマークの種類は同じながらデザインが微妙に異なり、裏側の刻印などの配置はかなり異なります。製造工場が違うのでといってしまえばそれまでなのですが、何かそれじゃあ納得出来無いなぁ(^_^;) ちなみに後のNo.116系とも長さが異なり、No.116のほうは28.9cmありますので、旧No.112は同じ10インチ片面計算尺ながら1cmも短い計算尺ということになります。そのNo.116にしてもHEMMIのNo.2664Sの29.5cmよりも短い計算尺なのですが…。それにしてもHEMMIは戦後に10インチ片面計算尺はすべて本体のサイズを統一したのに、RELAY/RICOHは同一モデルにもかかわらずサイズの異なるものがあるというのは今回初めて気がつきましたが、どうやら製造記号が「K」とされる製造工場は独自の10インチ片面計算尺の既成モデルを持っていて、そのサイズが佐賀の「S」と微妙にサイズが異なったためにこういう現象が生じたのでしょうか。仕上げも構造も微妙に異なっていまして、K刻印のものは裏板を止めるピンが片側8本に対しS刻印が10本、S刻印のものには換算表のずれ止めのために裏のアルミ板にプレスで付けられた突起がありますが、K刻印のものにはそれがありません。厚さも下固定尺部分でK刻印のものが10mmに対しS刻印のものは11mmで、滑尺部分の厚さにしてもK刻印のものが5.8mmなのに対し、S刻印のものは6.3mmあるため、同一モデルなのに滑尺さえ互換性がなく、共通なのは尺を刻んでいる表面の幅が双方とも34.5mmという事のみのようです。さらに付属の丹頂黒貼箱はK刻印のものは金の箔押しで押されているメーカー名が「SAN-AI KEIKI CO.,」となっている対し、S刻印のものは「SAN-AIKEIKI CO.,LTD.」となっており、それ以前は「RELAY INDUSTRIAL CO.,」という時代もあったようです。同じ丹頂黒箱ながら箔押し違いで3種類が存在することになります。こちらのほうが殆ど間違い探しのようですが(^_^;) 入手先は滋賀の草津市からで、ちょうど50年前の製造ながら殆ど使われずにしまい込まれたらしく、中身も箱も殆ど傷んでいない上の部類に入るコンディションのものでした。50年前の定価がラベルで残っていて、それによると950円とあります。当時失業者救済事業での1日の賃金が254円、すなわちニコヨンの時代ですから今の最低賃金ベースで日給に換算すると2万円近くにも値するのでしょうか。そこまでいかなくともラーメン一杯30円くらいの時代ですからいかに高価なものだったかがわかります。
RELAY No.112 技術用計算尺(G.K-2刻印)の表面拡大画像はこちら
RELAY No.112 技術用計算尺(G.K-2刻印)の裏面拡大画像はこちら
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