HEAVEN No.82 8"学生用計算尺
製造メーカーを特定するような刻印がまったくないためにどこの誰がいつ頃作ったのか皆目見当の付かない8インチ計算尺です。8インチということで、学生用として国内で作られた計算尺であることは間違いないと思われます。団塊の世代が中学に進学するにあわせてHEMMIやRELAY、はたまたFUJIや技研などの計算尺専業メーカー以外からもこのようなコストのいかにも安そうな8インチ計算尺が多数出現しています。その殆どは実際に製造までこなしていたメーカーではなく、特定の計算尺製造工場からのOEMで品物の供給を受けていたケースが殆どのようです。つい最近、そのような工場のものだったのか計算尺の目盛り入れの原版が多数発掘され、その原版には「HATO」と「HEAVEN」の異なる2つのメーカー名が確認できて驚いてしまいました。中には表面9尺でDI尺付きの技研っぽい原版もありましたが、あながちこれらのプラ製計算尺の産地はすべて山梨近辺の会社が係わっていたかもしれません。
この計算尺は本体にメーカー名がまったく刻まれていませんので、おそらく外箱の違いだけでいろいろな会社の計算尺に化けたOEM専用商品だったのでしょう。外箱が失われてしまえば氏素性もわからなくなってしまうのは困りものですが。構造的にはスケールを刻んだ平面のプラスチック板に上下の固定尺を接着してあるだけの薄い計算尺ですが、オールプラスチックの計算尺ではありません。ここが単なるプラ板を接着して作ったペナペナな安物計算尺とは一寸異なります。竹を芯にした固定尺および滑尺にセルロイドではなく薄いプラ版を接着して目盛りを刻んだ後のHEMMI No.410Sのような竹とプラスチックのハイブリッド計算尺なのです。裏板にオーバル型の窓があいていてそこに透明プラ版が接着されており片側のに福カーソル線を持ちます。ということで、滑尺裏にもちゃんと三角関数尺と対数尺を持ちます。表面はK,DF,[CF,CI,C,]D,Aの7尺、滑尺裏はS,L,Tの3尺です。この手の計算尺ならプラの一体型カーソルが付きそうですが、まだプラカーソルの複雑な形を抜く金型が作れなかったからか、金属枠のカーソルが付属していました。そのことから推察するとやはり昭和30年代半ばの製品でしょうか?ゲージマークはC,D尺上のπの他には円の断面積計算用のCおよび度・ラジアン変換用ρ゜マークのみです。ずらし尺度は√10切断ずらしで、裏側の三角関数尺はデシマルで入れられています。上部には20cmのスケールが刻まれています。
上下固定尺と裏板の接合はピンねじで固定されているわけではなく単に接着剤で固定されているだけで、そのため使用中にバックプレートと固定尺が剥がれてしまったのか、黄色いゴム系ボンドで接合し直してありました。ところがこの黄色いボンドがあちこち余計なところに付着して醜い状況に
(^_^;) この黄色いボンドを剥がして透明なシアノアクリレート系接着剤で貼り直しましたが、上下固定尺がピンで位置決めされているわけではなく、一端バラバラになると上下の位置決めに大変苦労しました。カーソルの枠は安いどぶ漬けメッキで経年でふくれあがってきています。内容的にはHEMMIのNo.2664並で8インチ学生尺にしては高級な部類なのですが、本体が華奢でとても愛着が湧きそうもない計算尺です。これを使うのだったらHEMMIのNo.45Kのほうがましかな?ちなみにこの計算尺はまるでコームケースのような黄土色と黒の2トーンカラーのビニールサックに入ってましたが、確か以前似たような計算尺を滋賀のKIM氏も入手していたはずだな<KIM氏(笑)
後日KIM氏の調査によりHEVEN計算尺のNo.82と判明しました。起毛のコームケースのようなサックケースがやはり決め手でした。
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