HEMMI No.P23 中学生用
昭和30年代の前半に団塊世代の中学進学を迎え、コストの安い中学生用の計算尺が大量に必要になったため、各社でおおよそ150円から200円程度の8インチ計算尺が各種発売される事態となりました。文部省から標準的な仕様が示されたわけではないのでしょうが、各社とも200円以内に定価を抑えるため、中学数学の範囲では扱わない滑尺裏の三角関数と対数をすっぱりと切り捨てて、表面だけに尺が刻まれた計算尺が各種出現しています。その中でも竹を使用するとどうしても加工コスト面で不利になるためか早くもプラの成形で作られた8インチ計算尺が出現しますが、計算尺の雄HEMMIで中学生用の低コスト計算尺を作るとこうなるというのがこのNo.P23およびNo.P24の2種類のプラ製計算尺になります。No.P23のほうはA,B,C,D,尺に逆尺のCI尺が加わったマンハイム型、No.P24のほうは√10切断のDF,CF,CI,C,D,尺にA尺が加わった計算尺です。発売当時の価格はベージュのけっこう丈夫な貼箱に入って180円。その後コストの上昇による価格改定により270円を経て最終的には300円となっていますが、それにしても竹製計算尺はコスト的に敵ではありません。さほど内容的には変更のない計算尺だと思っていましたが、初期型と後期型では裏側の固定尺どうしを留めるブリッジの成形色が違い、初期型が臙脂色、後期型がP253などと同じミントグリーン色です。さらに今回初めて気が付きましたが、初期型と後期型の一体型プラカーソルは同じくHEMMIの刻印が入れられている専用品ながら、初期型と後期型ではカーソル面の厚さが異なり、さらに後期型にはカーソルの上下にギザギザが追加されました。もしかしたら別なOEM先からの仕入れかもしれません。発売はまだ表面に形式名と一緒に製造刻印が黒で入れられていた「I」刻印のものが一番古いのではないかと思いますので昭和33年の新学期向けのための発売でしょうか?最終型300円のタイプのみ貼箱表面に貼られている形式名のシールデザインがマイナーチェンジされてますので、興味のある人は確認してみましょう(笑)またP23がいつ頃まで作られていたかは判然としませんがP24のほうはRL刻印ですから昭和42年12月製を確認しており、そのNo.P24の滑尺上のCF,CI,C尺にはご丁寧にも「÷×÷」の刻印が追加になってました。入手したNo.P23は刻印が「MA」ですから昭和37年の1月製。以前入手したNo.P24が刻印「ND」で昭和38年4月製ですからこの間に裏のプラスチックブリッジ成形色とカーソルの形状に変更があったことになります。そういえば8インチの計算尺が学生用のスタンダードサイズになった理由というのがHEMMIの説明書によると「教科書からはみ出さないサイズ」ということなんですが、戦時中にNo.2640を発売したときは、明らかに物資節約による「戦時処置」なので、これは後から取って付けたようなこじつけでしょうね(^_^;)
HEMMI No.P23 中学生用計算尺表面拡大画像はこちら
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