NIKKEI No.150F 5"ポケット計算尺
RELAY/RICOH計算尺の製造元である三愛計器/リコー計器は戦後の一時期に東洋特専興業から日本計算尺に社名変更した時代がありました。しかしこのNIKKEI計算尺の日本計算尺株式会社はRELAYの日本計算尺と混同されているようですが、その生産された計算尺の特徴ある構造からして、どうやらRELAY/RICOHとはまったく関わりのない別会社のようです。そのNIKKEI計算尺のキャッチフレーズが「狂い絶無・破損しないカーソル・断然値段が安い」というものでした。NIKKEI計算尺は国内では主に学生用の需要をねらった片面の8"計算尺および5"のポケット尺がリリースされていましたが、輸出用には本体構造が異なりますが、HEMMIのNo.250,255,259初期型コピー物と、本体構造までHEMMIそのままの両面計算尺もあったようです。これら両面計算尺はさすがに写真しか見たことがありませんが、後者はどうやらHEMMIのOEMだったかもしれません。国内に出回った形式は5"ポケット尺がNo.150F,No.170、8"学生用がNo.200,No.250,No.260,No.270などがあったようですが、何年頃に発売されていたのかはよくわかりません。おそらく昭和30年代初めから昭和30年代中頃あたりまでの存在だったと思われます。本社が東京の世田谷区ということで、たぶん自社で素材から加工まで一貫生産していたわけではなく、生産はどこか外注先にやらせて、自身は輸出などの販売を手がけていたのではないかと思いますが、あまりにも資料が少なく当方も良くはわかりません。構造的にオリジナリティを感じさせるものになっており、裏側に全面を覆う金属のバックプレートを持ってきて、ピンで上下の固定尺をつなぐという構造になっているのが一番の特徴で、この構造で実用新案が出願されていたようです。
届いたNIKKEIのNo.150Fをよく観察して驚いた事には、このNo.150Fは固定尺、滑尺ともにバルサ材のような木を2枚組み合わせて作った「木製計算尺」でした。その表面にさらに経木のような薄皮を接着して表面に白いペイントを塗り、そこに目盛りを刻んでいるという内容です。そりゃ「断然値段が安い」のは当然でしょうが、粗製濫造期のコーア計算尺などと違って巧妙な構造で製作されており、さほど安っぽさは感じさせません。また、50年ほど経過している計算尺にも関わらず反りがないのも特筆されるでしょう。8インチ計算尺はケースに「BAMBOO SLIDE RULE」としっかり型押しされているのでこの木製構造は5インチのNo.150Fだけなのかもしれません。
内容的には√10切断系5インチ計算尺で尺種類は表面がDF,[CF,CI,C,]D,A の6尺、裏面が T,L,Sの4尺です。上部にスケールはなくスクエアな断面になっています。ゲージマークはC尺上に度、分、秒からラジアン変換用の3種のゲージマークの他にCとπマークを備える標準的な内容です。カーソルは上下の金属にアクリルの板を挟み込んだものです。裏の換算表は金属のバックプレート直接印刷されており、漢字および西洋の度量衡単位にはひらがなでふりがなを追記しているというものですから、そのまま輸出するわけにはいきません。輸出仕様には別のバックプレートが用意されていたのでしょう。アメリカでは電子パーツの通信販売等を手がけるラファイエット社のOEMが一部あったようですが、ラファイエットの主な取引先はRELAY/RICOHで、どうやってNIKKEIがそこに食い込んだのかはわかりません。また、NIKKEIブランドでも米国内に出回ったようですが、どこがディストリビュートしていたのかも判然としません。活動期間の短さといい未だに殆どのことがわからない、現時点でも謎の計算尺メーカーです。
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