Relay No.83 8" 学生用計算尺
RELAYの8インチ学生用計算尺の中でも異色な存在なのがこのNo.83で、何が変わっているかというとこの計算尺に限って√10ではなくπ切断ずらし系の8インチ計算尺なのです。何となく10インチ片面尺RELAY No.112の縮小版というような計算尺ですが、同時期のRELAY 8インチ学生用計算尺はNo.82,83,84の3本が好みによって選択出来たわけです。ところが日本におけるずらし尺度は、片面尺に限ってはほぼ√10切断で統一されてしまった観がありますので、π切断ずらしの片面尺はNo.112同様にさほど国内では要求されなかったからか、No.82とNo.84に比べると圧倒的にレアな存在です。おそらくアメリカへの輸出主導で用意された計算尺なのでしょうが、残っているのはRELAY時代のものが殆どでNo.84がRICOH計算尺最末期の昭和49年まで作り続けられていたのに、このNo.83はRICOH時代の物にはまだお目に掛かっておりません。しかしながらπを含む計算の多い電気物理関係の計算には√10切断の計算尺より便利だと思われます。無線従事者国家試験に持っていくのでしたらHEMMIの学生用8インチ尺 No.45Kあたりより適していると思いますが、わざわざπ切断のRELAY No.83を探し出す労力を払うよりはその分しっかり勉強したほうがよさそうですね(^_^;)
入手先は茨城の日立系企業城下町のひとつで、以前HEMMIのNo.256通信用計算尺を入手した場所からです。製造刻印は「DK-3」ですから昭和30年の3月製と少し時代の遡ったもので、K刻印独特の「艶のある」セルロイド表面を持った計算尺でした。No.80,81と異なりちゃんと裏面左右に補助カーソル線窓と滑尺裏にS,L,T尺を持ちます。表面はK,DF,[CF,CI,C,]D,A,の7尺です。CI尺のみ目盛りも数字もすべて赤で刻まれています。π切断ずらし尺にも係わらずC,D尺上、さらにはA尺上にもπマークを備えますが、No.84と違ってラジアン変換用の3種のゲージマークが省略されてしまっているのがウィークポイントでしょうか。ケースは丹頂黒箱ですが、リレー産業時代の製品ですから「RELAY INDUSTRIAL CO.,」の社名が金箔押しで入っています。裏の換算表は漢字仕様で国内向けのものであることがわかりますが、この時代のアメリカ向け輸出仕様の型番は「☆Relay☆ R-XXX」なのにも係わらず、1957の北米向けカタログには該当商品がなぜかありません。√10切断のNo.84該当品はR-816として存在するのですが、何でカタログ上に存在しないでしょう?1959年の北米向きカタログにはしっかりとNo.83という日本仕様と統一された型番で掲載されているようです。
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