技研 No.252 標準・一般用計算尺
珍しい技研の計算尺が外箱も説明書も揃った未使用の状態で出てきましたので、「ここで会ったが盲亀の浮木、優曇華の花」というような親の敵にでも遭遇したわけではありませんが、千載一遇の機会とばかりに張り切って入札したら1,100円という当時の定価にしても約2割引という金額で落ちてしまいました。後からなんと技研の同じ計算尺が2本出てきましたが、1月のコーア計算尺の大量発掘のように技研の計算尺が3本、箱説揃いの未使用で出てくることなど、今世紀中にはないかもしれません(笑)今回入手した計算尺はNo.252という10インチ片面標準・一般用計算尺で、RELAY/RICOHにするとNo.116、HEMMIではNo.2664S-Sに該当するDI尺が加わった表面9尺と滑尺裏に4尺を有するものです。スタジア尺、No.9590のときに技研計算尺に関する謎を提起していますので計算尺メーカーである技研については割愛しますが、昭和40年代には技研ブランドの計算尺がありませんので今回のNo.252も昭和30年代に販売されていた計算尺ということになります。技研の計算尺としてはNo.251同様に数の捌けた機種のようで、もしデッドストックで地方の文具店などから発掘される技研の計算尺があったとしたら、おそらくNo.251かNo252である確率が高そうです。表面がK,DF,[CF,CIF,CI,C,]D,A,DAの9尺、滑尺裏がT2,T1,L,Sの4尺でS尺にはCOSの数字付きです。本体は一連の技研計算尺同様に塩化ビニールを素材としたプラスチックの成型品で、カーソルもプラの一体成型品です。尺のレイアウト的にはHEMMIのNo.2664S-Sとまったく同じで、滑尺裏のS尺は逆数付き(COS)ですが、HEMMIと異なり順目盛です。逆数目盛付なので裏の目安線を使ってD尺だけで三角関数が読める点が、逆目盛ではなく逆数も刻まれていないために裏の目安線を使うには表にDI尺を備えざるを得なかったRELAY/RICOHのNo.116とはDI尺が加わった理由が異なります。CF,DF尺は√10切断ずらしです。ゲージマークはCの他にラジアン換算用の3つのゲージマークがあり84度以上6度以下の微少角はラジアンに換算してから算出する必要があります。珍しいことにこれらのゲージマークはC,D尺の双方に刻まれています。CI尺CIF尺の両逆尺は目盛も数字も赤で入れられ、DI尺は数字のみ赤で入れられています。
値段も含めて非常にバランスの良い計算尺ですが、さほど世の中に残っていない理由は販売網の脆弱さによりHEMMIやRELAY/RICOHを押しのけて国内に出回らなかったことと、おそらくHEMMIのプラ尺を含めてOEM製品の製造のほうが忙しかったからあまり自社ブランド販売に力が入らなかったからでしょうか。技研ブランドの計算尺は昭和30年代には消滅しますが、これはHEMMIに対抗して販路を拡大してゆくよりは、HEMMIのプラ尺とFUJI計算尺その他のOEM製造だけに徹していた方が利口だと思ったからかもしれません。
今回の技研No.252は当方が12年間在住していた世田谷は千歳烏山のリサイクルショップからで、雨漏りにでも曝されたのか水濡れのシミと一部湿気で黴びた外箱と説明書が付属していましたが、本体はビニール袋にくるまれた未使用品でした。38年1月1日現在の価格表が掲載されている全52ページの説明書はベクトルや複素数の計算まで詳しく解説された豪華版で、かなり技術的な応用まで踏み込んだ内容はHEMMIのNo.2664Sを遙かに凌ぎ、FUJI計算尺の両面・片面計算尺用の短冊形と冊子型の汎用説明書の倍のボリュームがあります。ところで、山菱に技研の文字が入った技研のマークは某組関係を表すのではなく、「山梨の山の字に技研の二文字を組み合わせた」ものなのでしょう。サンリオだって創業者が山梨出身だから「山梨王」をカタカナにして社名にしたっていう話ですし、甲斐商人は山梨のどこかをあしらった商標を付けるのが好きなのかな?(^_^;)
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