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September 27, 2008

HEMMI No.64 システムリッツ計算尺

 システムリッツの計算尺であるNo.64は基本的な内容を変えずに昭和一桁の時代から昭和39年の末にNo.64Tにモデルチェンジするまで一般・機械技術用計算尺として三十数年に渡って発売され続けてきました。もっとも刻印から見るとNo.64とNo.64Tは1年ほど生産がオーバーラップしていた時期がありそうです。このNo.64がもっとも輝いていたのはやはり戦前で、機械や電気の別を問わず技術系の計算尺としては両面型のNo.153とともに多用されてきました。戦争の進展とともに「軍事技術」につながる分野での需要が急増してきたことにも原因があったかもしれません。ところが戦時中に√10ずらし尺を備えるNo.2664が出来、戦後は各専門分野の計算尺が発売されるに至り、No.64の占有率は相対的に下がり、No.2664Sの時代になっては完全に少数派に陥った観があります。それでもNo.64TからNo.642Tにモデルチェンジしてまで作り続けられた計算尺ですので、海外はもちろんのこと、国内でも戦前派の技術者を中心に計算ツールとしての根強い要求があったのでしょう。
 今回入手したNo.64は戦後のものですが、戦後のNo.64には延長尺部分の始点の相違でおおまかに前期型と後期型の2種類が存在します。前期型は戦前のNo.64同様にA,B尺の左の始点が0.785なのに対して後期型は0.8、C,D尺が前期型0.89に対して後期型は0.9です。この違いは電気用計算尺のNo.80Kも同様で、この延長尺の始点の違いで前期型と後期型が存在します。手元にやってきたNo.64は箱こそスモールロゴの緑貼箱でしたので、20年代末期の前期型を期待してましたが、刻印が「JJ」ですので昭和34年10月製の後期型です。計算尺の内容的には以前から使用していた「NB」刻印の昭和38年2月製と外見は殆ど変わりませんが、構造的には昭和34年物が裏板と固定尺の接合が一部ネジを使用した古いタイプで、昭和38年物は換算表だけネジ留めで裏板と固定尺の接合は上下ともにピン接合という違いがあります。また34年物はπの足が釣り針型でρマークも尾が巻いた旧タイプですが、38年物は2664S同様に新タイプに変わっています。さらに下固定尺サイドのスケールは34年物は単なる10インチのスケールですが、38年物は13-0-13センチメートルのスケールに変わっています。さらに34年物は妙に金色っぽいアルマイトの裏板が使用されていました。出所は札幌で、地元でも老舗の自動車短大の名前と所持者名が裏板に彫り込まれていましたが、おそらく在学中に使われただけでそのまま放り出されていたらしく、程度は悪くありません。その点、伝説的な研究室の主で計算の鬼といわれたT氏の愛用品だったNo.64はセルのはげや打ち傷などもあり、決して程度は良くありませんが「仕事を成し遂げた道具」としてのすがすがしさを感じさせます。届いたNo.64はカーソルをよく覗くとなんかおかしい感じがしました。よく見るとカーソルガラスが表裏反対にはめ込まれており、カーソル線と目盛りまでの距離があるために違和感を感じたようです。このカーソルグラスはカーソルバネを縮めながら慎重にカーソル枠から外さないといけませんが、これが慣れないと難しく下手にカーソル枠からドライバーでこじったりするとガラスはすぐに割れてしまうので注意が必要です。以前リコーの片面尺のカーソル枠が緩かったために、溝にはまりこむ部分をちょっと内側にラジオペンチで曲げようとして見事にカーソルグラスにヒビを入れた事があります(^_^;) 3本線カーソルはなかなか予備が手に入らないので慎重にバネを縮めてグラスを外し、裏返しにして通常の状態に戻しましたが、前オーナーはカーソルグラスが裏返っていようとまったく気にしなかったようで、これでこの計算尺が真剣に使われていたのかどうかが何となくわかろうという物でしょう(笑)
Hemmi_no64
 HEMMI No.64 システムリッツ計算尺(JJ刻印)表面拡大画像はこちら
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September 26, 2008

技研 No.120 5インチポケット型計算尺

 珍しい山梨は技研工業製の5インチプラスチック計算尺のNo.120です。技研にはA,D,C,D配置のマンハイム尺と√10切断ずらし尺の2種類がありますが、技研ブランド末期の昭和38年のプライスリストにはそれぞれNo.125とNo.126という品番で掲載されており、No.120という型式の計算尺はありません。内容的にはNo.120とNo.126はまったく同一の計算尺ですので、以前入手したスタジア尺のNo.9590と後のNo.2501の関係のように、いつの時期からか一斉に型式番号の改番が行われたようです。昭和38年のプライスリストによると250番台が10インチ片面計算尺、200番台が8インチ学生用、125番台が5インチポケット、100番台が4インチポケット、2500番台が両面型および特殊タイプになっているようです。もっともNo.250だけがこの分類には当てはまりませんが(^_^;)
 構造的には10インチの片面尺をそのままスケールダウンして薄くしたもので、固定尺及び滑尺ならびに裏板を含めて技研お得意のプラスチック構造です。黒のサック式ケースが付属していたはずですが、説明書も含めて残念ながら今回は欠品でした。内容的にはHEMMIの5インチポケット尺のNo.2634とほぼ同じですが、サイズは技研のNo.120のほうが3ミリほど幅広で長さも5ミリほど長いだけなのに、印象的には二周りほど大きく見えます。またHEMMIのNo.2634は滑尺裏がTI2,TI1,L,SIとT尺が2分割でS尺とともに逆尺ですが、技研のNo.120はS,L,Tの3尺ともに順尺です。さすがにRELAY/RICOHの5インチ片面尺のように裏の目安線窓が片側だけというようなコストダウンは施されておらず、目安線窓もちゃんと両サイドに設けられています。HEMMIでいうとNo.2664SのサブセットがNo.2634ですから、技研のNo.252のサブセットとでもいうべき存在がNo.120イコールNo.126のようです。もっとも両方とも技研の計算尺で揃えることにこだわった人なんぞ、誰もいなかったでしょうが(笑)
Gikenn120
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