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October 05, 2008

HEMMI No.P36S 換算用計算尺

 単位の換算という仕事に関しては計算尺のもっとも得意とする分野で、いちいち計算器を叩くよりも一度目盛りを合わせると連続して数値が読める計算尺のほうが便利なことがあります。世の中の単位として尺貫法が人の体に刻み込まれていた昭和の初期、オフィシャルな計量単位をすべてメトリックとするように尺貫法が改訂され、公文書から学校教育、はたまた町中の計量単位まで尺・寸、貫・匁、升・合からメートル・キログラム・リットルを使用するように強制されるに至り、体感的にまったくなじみのないメトリック単位の強制に町中が軽いパニックを起こしたようです。これは最近のSI単位への移行どころの騒ぎではなく、このころ日本では初めて各種の単位換算専門計算尺が出来たようで、多くは雑誌の付録のような紙製円形計算尺でしたが、市販の物にはブリキのプレス製で滑尺が2本ある換算用計算尺もあります。この滑尺2本というのは換算する単位の種類を増やすために片面尺を2本上下に接合した事と同じで、上下の滑尺が関係して連続計算などが出来るわけではありません。
 この時代にヘンミでは換算専用の計算尺は作りませんでしたが、それは練習用の計算尺であっても一般の物価に比べるととても高価なもので、換算専用のチープな計算尺を作る手段を持たなかったからでしょう。とはいえ、昭和一桁代ですでにヘンミではプラスチック製の計算尺を作っていますので、この技術を応用すればリーズナブルな換算尺が作れたのではないかと思います。
 実際にHEMMIが換算専用の計算尺を発売したのは昭和40年代になってからで、安価にするためか、竹とセルロイドのものではなく塩化ビニールを主体としたプラスチック製です。生産は一連のプラ製計算尺と同様に山梨技研系のOEMでしょう。長さが5インチのポケットサイズであることでもわかるとおり、デスクトップで使用するのではなく、現場で使用するための換算尺です。長さ・重さ・広さなどの換算以外に計算機能の全くない計算尺で滑尺の表裏で A:メトリックから非メトリックへ B:非メトリックからメトリックへ、というように滑尺を裏返して使用するようになっています。実はこのHEMMIの換算尺は本体の刻印が「No.P36」なのに外箱と説明書の表記は「No.P36S」とSの付く物ばかりです。本体に「SPECIAL」に該当する「S」が末尾に付いた P36Sは見たことがありません。世の中がそろそろメトリックだけで事足りる時代になってからの換算尺だったからか、「殆ど売れなかった計算尺」だったようで、今でも地方の文房具店あたりのデッドストック発見率が結構高い計算尺です。意外と企業のノベルティーや記念品としての需要があってもよさそうなのですが、このP36は「どこにも企業名を刻印するスペースがない」という重大な欠点があり、5インチプラのNo.P35がけっこう記念品などのベースとしてよく使用されたのにも係わらず、企業名がどこかに刻印されたようなNo.P36は見た記憶がありません。この欠点はコンサイスの換算尺に比べるとかなり損をしてしまったようです。
 入手先は大阪の八尾市で外箱はありませんでしたが説明書と皮ケースの付いた本体ビニール未開封の新品でした。刻印は「QB」ですから昭和41年の2月製造です。なぜか新品の8インチ学生尺のケースに入っていました。この換算用計算尺ですが、今となっては現場がSI単位に完全統一されてしまい、仕事上では単位の読みかえの必要がなくなってしまったため、あれば便利という状況ではなくなってしまいました。
Hemmip36s1_2


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