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November 21, 2008

POCKET CALCULATOR(ポケット計算機)

Mbcpocket ポケットカリキュレーターという非常にわかりやすい名前のスタイラス計算器ですが、クラフトワークの名曲と違い、どのボタンを押しても音楽は奏でませんから念のため。そもそもボタンらしきものは何にもありませんが(笑)会社の名前からしてポケット計算機株式会社という会社が昭和30年代の末に発売していたスタイラス式の加算機で、その名の通り小型でポケットに収納できる大きさの加算機ながら9桁の有効桁を有するものです。スタイラス式計算器は基本的には加算減算に特化していますが、国内では算盤があまりにも普及していたためにこの手のスタイラス式計算器が算盤を押しのけて普及する余地が無く、そのためその殆どはアメリカあたりに輸出することを目的として作られました。しかし、このポケットカリキュレーターは日本国内で本格的に普及させようとして競技会を開催するという案内が付いていて、一等の賞品は何とスバル360が一台当たるというのです。各地方で予選会を開いて、決勝大会は東京で交通費宿泊費も主催者負担で開催するというふれこみなのですが、「地方大会の出場者が100人以下の地区は開催を次年度に繰り延べ」などという但し書きが付いていますから、この計算機の売れ行きを考えるとおそらく東京を含めて競技会など一度も開催されないうちに会社ごと無くなってしまったのではないでしょうか?この競技会が実際に行われたかどうかご存じの方はご教授ください。このMBCの商標が付いたスタイラス計算機はドイツのADDIATORのような縦長のタイプも存在し、やはりアメリカあたりへの輸出がメインだったようですが、本格的に国内に普及させようとした意図が今ひとつわかりません。
 このスタイラス計算機の内部はラック(歯つきレール)が桁の数だけ並んだ単純な構造で、上に引いて操作する帰零レバーを備えます。歯車式加算器のように自動的に桁を繰り上がるような構造ではありません。たとえば3+8を計算しようとすると3は単純にスタイラスの先端で下端まで引くだけですが、このとき8のポジションは赤になっていますので、このときは8のポジションから逆に上端に引いて上端右の桁上がりポジションを下げると次桁が一桁上がり、表示窓に「11」を得るものです。減算は逆操作すればいいのですがこの「表示が白と赤のときには逆に引く」というお約束ごとだけ覚えておけば、それほど操作は難しくないと思います。いちおう乗除も出来るのですが、算盤での乗除同様に一桁ずつ操作してゆくので、その計算速度は計算尺の比ではありません。本体はプラスチックの成型部品をまったく使っていない単純なプレス部品により構成されている総金属製です。バネさえも一本も使われていない単純な構造で、おそらく町工場で作られた部品を内職のおばちゃんあたりが組み立てていたのではないでしょうか。川崎から届いたポケットカリキュレーターはよく無くなっている鉄製のスタイラスも残っていますし、例の競技大会の案内が記された説明書も残っていました。機構的には問題ないのですが、かなり使い込まれた個体で、内部には削れて生じたと思われる金属粉だらけで、あまつさえスタイラスを差し込むことによって出来る傷によりラックの赤表示部分が削れて白くなっています。とりあえず外側ケースの爪を起こして分解し、内部清掃とグリスアップを行うことにします。内部はリセットレバー、ラックのベースプレートとラックが9本という至極単純な構成で、ネジ一本さえありません。ラックはすべて同一形状の部品です。最初は赤がはげた部分を脱脂して焼付塗装してしまおうかと思いましたが、赤がはげて醜い部分は日常激しく使用された下3桁のラック3本に限るので、あまり使わない上3桁のものと交換することによって日常使用には差し支えないと考え、この3本を交換します。グリスアップしてラックの動きはスムースになったのですが、真ん中の桁のラックがリセットレバーを本体に戻す操作に連動して下がってしまうようになりました。あまりにもベースプレートとの摩擦が無くなってリセットレバーとの接点の摩擦のほうが大きくなったことが原因のようです。ベースプレートとラックのはまりこむ部分をラジオペンチで曲げ、意図的に摩擦を大きくしてリセットレバーのリリースと干渉しなくなりました。このスタイラス式計算機の操作具合ですが、う〜む流石に算盤の国に受け入れられなかった訳が実感できます。慣れれば計算速度も向上してくるのでしょうが、加算する数字がラックの赤表示か白表示を判断して上に引くか下に引くかの判断でタイムロスがどうしてもつきまとうため、どう熟練したとしてもその計算スピードは算盤の足下にも及びません。せめて自動的に桁の上がり下がりをしてくれれば少しは使い勝手は向上するのでしょうが…。MBCマークですが、これはどうもアメリカで大量に売られた「MAGIC BRAIN CALCULATOR」の略のようです。おそらくこのMAGIC BRAIN CALCURATORはアメリカ国内の登録商標らしく、かなり色々な形状のスタイラス計算機が発売されていましたが、このポケット計算機株式会社というのは古くからそのMAGIC BRAIN CALCULATORの製造供給元だったのでしょう。おそらくポケット計算機やポケットカリキュレーターの登録商標を取っていたのではないかと思われますが、今その商標は流れ流れてどこが持っているのでしょうか?そういえばラジコンやプラモデルというのも一般名称化していますが、れっきとした登録商標です。

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