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December 03, 2008

IDEAL RELAY No.601 6インチ技術用計算尺

 6インチの計算尺というのはどうもポケットサイズとするには中途半端なサイズからか、あまり多くの種類を作らなかった計算尺のようです。欧米では標準10インチ尺に対してポケット尺は5インチと相場が決まっており、日本ではそれに4インチも加わった5インチとの混成軍を形成してました。それでもHEMMIは戦前から50系マンハイム、60系リッツ、80系エレクトロ、90系スタジアにそれぞれ6インチのラインナップを揃え、戦後発売の130系ダルムスタッドにも6インチを用意するなど、けっこう6インチの計算尺にはこだわっていたようですが、そもそも全世界的に見ても6インチの計算尺というのは殆ど見かけません。6インチ計算尺のメリットというのは、どうやら10インチの目盛細密度を実用上そのままにスケールダウン出来る下限の長さということでしょうか。一応ポケット尺として発売されてますので、その殆どが4,5インチのポケット尺同様に薄い構造の計算尺となっているものが多いようです。また世界的に見ても8インチ計算尺というのも小数派ですが、これは戦時中で物資逼迫期にあたり、旧制中学生用計算尺のNo.2640を10インチとせずに8インチと定め、材料を節約した事が、後々まで学生用計算尺が8インチとなった発端のようです。
 東洋特専興業時代ですから戦中戦後のRELAY計算尺にもちゃんと6インチの計算尺があったのは今回初めて知りました。この時代のRELAY計算尺は型式の刻印を打たずに裏側に型式名の入った楕円形のシールを貼ったようで、今回のRELAY計算尺は幸いなことにこのシールがしっかり残っていました。そのシールにはIDEAL RELAY No.601となっています。この「IDEAL RELAY」の商標は本体に刻まれないのであまり知られていませんが、少なくとも戦時中には使われていた商標らしく、以前に入手したRELAYの航空用計算尺に付いていたシールと同名異形式のシールです。このNo.601という計算尺は昭和34年のカタログには無く、代わりにNo.602という計算尺が掲載されています。また、6インチ電気尺のNo.605、6インチ両面計算尺のNO.650,651,652までありましたので、RELAYはある意味HEMMIよりも6インチ計算尺に固執していたのかもしれません。入手先は愛媛の今治でおそらく戦時中の物だと思われます。この当時のRELAY計算尺は東洋特専興業が製造元でしたが、その多くを親会社の理研光学の販売網に載せて全国にばらまいたらしく、東洋特専興業製造の刻印と理研光学発売の2種類の刻印がありながら、今残っているのは圧倒的に理研光学発売刻印の物が多いようです。当方の所有のものにも東洋特専興業製造刻印の物が一本もなく、なぜか理研光学発売刻印の物は4,5,6,10インチと8インチを除き各サイズが揃っていることを見ても、圧倒的に理研光学販売網で売られたもののほうが多そうです。物資逼迫時代のためか、ケースは皮サックではなくてステープルファイバーの表面を皮で模したHEMMIで言うところの代用革サックが付属しています。恐ろしいことにHEMMIではまったく知りませんが、戦争末期で金属が無くなったときにRELAYではカーソルのフレームまで竹に化けたことがあったようです。このNo.601は電気尺を除く後の600系と異なり、AB,CD尺の左右に延長尺を持ちます。しかし、L尺が滑尺裏でST尺が無いことからシステムリッツというわけでもありません。尺配置は表面がA,[C,CI,C,]D,Kの6尺、裏面がS,L,T,の3尺です。RELAYのポケット尺の大半がそうであるとおり、裏面の補助カーソル線窓は一カ所しか開いていません。このNo.601というのは当時売られていたHEMMIのNo.54という6インチ計算尺にオーバーレンジの存在も含めてそのままの丸コピー商品のようです。なぜか50系マンハイムタイプ計算尺の中にあってはこの拡大レンズカーソル付きのNo.54と普通カーソルのNo.55だけがオーバーレンジ付きで、これをそのままコピーしていますが、なぜ本家No.54,55だけにオーバーレンジが付いたのかは考えてもわかりません。HEMMI No.54はNo.47などと同様にその殆どをPOST 1453としてアメリカに渡っていますので、オーバーレンジがこの計算尺に存在する理由は、考えようによっては最初からPOSTの要求だったのかもしれません。
 四国の今治から届いたIDEAL RELAY No.601は皮サックではなく代用革サック入りでしたので、中に湿気をため込んで裏板がボロボロになるようなこともなく、保存状態は戦時尺にしては良好でした。代用革サックはもうこの戦争も末期にさしかかった時代はスフの薄布を重ねたものではなく「和紙に革もどきの紙を貼った紙サック」です。よくもこんなものが残っていたものですが、このケースだったら耐久性はともかく中の計算尺にとっては最良の保存ケースだったのでしょう。この6インチの計算尺は5インチ計算尺のように目盛密度を疎にしてしまうとまったく存在意義を失います。そのため10インチ計算尺同様に刻まれた目盛はさすがに6インチに凝縮されてしまうと判読しにくくなり、実質的に拡大レンズがないと苦しい感じですが、HEMMIが拡大レンズ付きのNo.54を標準としたのもその辺に理由があるのでしょう。ゲージマークはA,B尺上にπと1/πを表すMが存在し、C,D尺上にはC,π,C1のみです。6度以下84度以上の微少角を求めるための配慮が一切無いのはHEMMIの戦後型マンハイム尺No.50Wになっても変わりませんでしたが、そういう計算目的の為には最初からシステムリッツ尺を使えということでしょうか?そういえば同じ6インチのIDEAL RELAY No.600番台にちゃんとシステムリッツタイプの計算尺がありまして、こちらのほうは表面 K,A,[B,CI,C,]D,Lで裏面が S,S&T,T となっています。
Relay601

 IDEAL RELAY No.601 6インチ技術用表面拡大画像はこちら
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