HEMMI No.259 機械技術用(後期型 KK刻印)
機械技術用の両面計算尺で、実質的に標準モデルとなると誰しもNo.259Dを連想すると思われます。このNo.259Dは昭和40年代に他の両面計算尺と比べてもかなり大量に使われたようで、今でも常にオク上には一本は出品されていますが、人気が非常に高く中古のものでもかなり高価に落札されています。ところが、Dの付かないNo.259はNo.259Dに比べるとかなりの少数派です。これは電気用のNo.255DとNo.255においても言えることですが、昭和20年代後半から昭和30年代中期においては両面計算尺の売価というものが物価に比較すると高価で、まだまだ個人で気軽に購入出来るような物ではなかったのでしょう。それが池田内閣の所得倍増ではありませんが個人所得の増大とともに、もはや昭和40年代に入ってからの両面計算尺は「清水の舞台から飛び降りる」思いで買うような高額商品ではなく、個人でも購入できる範囲の計算ツールと化しましたので、このあたりが「20年代30年代の両面計算尺は数が少なく、40年代の両面計算尺はそれに比べるとかなり多い」という理由なのかもしれません。
昭和26年に他の新系列の計算尺とともに発売されたNo.259機械技術用計算尺は昭和39年末に製造されたDI尺追加のNo.259Dにマイナーチェンジするまでの約14年間に型番はそのままで恐ろしく見かけが異なる物が2種類発売されています。発売当初から昭和32年の「H」刻印のものまでは表面がL,K,DF,[CF,CIF,CI,C,]D,LL0,LL/0,の10尺、裏面がLL/1,LL/2,LL/3,A,[B,T,S,ST,C,]D,LL3,LL2,LL1,の13尺ですが、昭和33年「I」刻印からはLL尺が表面に移動し、表面がLL/1,LL/2,LL/3,DF,[CF,CIF,CI,C,D,LL3,LL2,LL1,の12尺で裏面がL,K,A,[B,T,S,ST,C,]D,LL0,LL/0の11尺です。この後期型のLOG尺を表面に配置するデザインは、以後254Wなどの学生用両面尺も含めて「ログログデュープレックスの標準レイアウト」となりました。また、後のNo.259DはNo.259の後期型裏面にDI尺を加えたマイナーチェンジ版になります。
前期型のNo.259は「HC」刻印のものを、No.259Dは「WA」刻印の物を入手していましたが、今回後期型のNo.259を入手したことで、No.259機械技術用計算尺の3つのバリエーションがすべて揃ったことになります。今回入手したNo.259の入手先は山形県の新庄市で、製造刻印は「KK」ですから昭和35年の11月製です。殆ど使用されずにしまい込まれたものらしく、ケースはたばこのヤニでコートされていましたが、中身は竹の両端もきれいでクリーニングだけでほぼ新品同様になりました。緑の貼箱は後期のラージロゴなのですが、本体に装着されていたカーソルはバネが両端2点で接触する前期型となります。このカーソルバネの形状変更はもっと以前に行われていたと想像していましたが、昭和35年末でも旧タイプのものが使用されていたとは知りませんでした。またNo.259の20インチ版であるNo.279にも尺のレイアウトが異なる前期型と後期型がある他にDI尺が加わったNo.279Dの3種類がありますが、こちらの方を三種類とも入手するのは相当困難が伴いそうです。なにせ20インチ両面の機械技術用計算尺はオクでも2万を下ることはありませんので、これは他の人にお任せしましょう(笑)そもそも20インチの両面尺なんぞ、辛うじて電気用のNo.275Dを一本持っているだけですし(^_^;)
HEMMI No.259前期型(HC刻印)とHEMMI No.259後期型(KK刻印)の表面比較
HEMMI No.259機械技術用(後期型)表面拡大画像はこちら
HEMMI No.259機械技術用(後期型)裏面拡大画像はこちら
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