HEMMI No.274 学生用
最近では珍尺落ちして希少尺になってしまったような感があるNo.274ですが、それでもヘンミ計算尺末期に出現した製品故に諸外国にはまったく輸出されなかった事も影響するのか、今でも時折とんでもない金額で取り引きされる計算尺です。内容的にはNo.P253の竹製版であるNo.264の裏面にC尺を加え若干表面のレイアウトを変え、No.259同様の本体サイズにワイド化した高校生用の計算尺です。レイアウト的にはほぼ技術用のNo.251と同じですが、No.251のDF,CF尺が米国好みのπ切断ずらしであるのに対してNo.274は√10切断ずらしであり、またNo.251の三角関数尺はT,S,STなのに対してNo.274はTI2,TI1,SIと逆尺で、しかもT尺が45°を中心に2分割されています。また、6°以下84°以上の微少角はNo.251はST尺で読むのに対し、No.274のほうはC尺上のラジアンと度・分・秒の変換ゲージマークを使って読むタイプの尺度です。このように内容的にはあまりNo.251と変わりばえするような計算尺ではないため、さほど食指を動かされる計算尺ではなく、ましてそこそこの金額を出すのであればNo.254WNあたりのほうが全然良いと思わせてしまうような計算尺です。そういう計算尺ですから何となく計算尺コレクターにとっては帳尻合わせ的に入手する計算尺の代表格でしょうか(笑)
No.P253の竹版であるNo.264はR刻印の昭和42年製が一番古いらしく、当時のケースは紺帯の入った模様貼箱で、終末期は青蓋の塩ビブロー成形プラケース入りでW刻印の昭和47年製らしいのですが、このNo.274に関しては紙の貼箱入りが見あたらず、塩ビのプラケースもしくはビニール皮ケースしか見たことがありませんので、おそらくすべてのNo.274はW刻印の昭和47年からZ刻印の昭和50年まで製造が行われたということなのでしょう。ということは、おそらく何らかの理由でNo.264の製造を昭和47年の半ばでNo.274に切り替えたことになります。その理由とは、確証が得られてはいませんが計算尺の需要が急速に落ち込み、製造ラインを整理するため、No.250などのナローモデルの新規製造を終了にして、竹製両面尺の継続生産はNo.255D/259Dなどのワイドボディーだけを残したため、ほぼ工業高校特納品であるNo.264は、やむを得ずワイド化してNo.251のレイアウトに近いNo.274にモデルチェンジし、製造を継続したという事なのでしょう。そうでもなければこのようなつまらないモデルチェンジの意味を見いだすことが困難です。
大阪の高槻から届いたNo.274はヘンミ計算尺最末期の製造である昭和50年「Z」刻印を密かに期待していたのですが、製造刻印は「YB」ですから昭和49年2月の製造でした。年代からしても当然の事ながら両面計算尺用のブロー成形の青蓋プラケース入りです。計算尺末期の製造でもあり、工業高校特納ということで短い高校時代のみの使用期間という理由もあったのでしょうが、中のビニール袋も残った状態で殆ど使用されていないきれいな個体でした。但し固定尺側面にローマ字で個人名がきれいに刻印されていました。大阪方面から入手したいかにも工業高校で使用されたような計算尺にはたまにこういうきれいな記名刻印入りが出てきますが、新学期を前に記名サービスする納入業者もしくは文具店があったようです。
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Comments
YOSHIです。更新楽しく読ませていただいています。奇遇です。小生が今年始めに入手した274もYBでした。2月ですから、新学期に向けてロット生産したのでしょうね。新学期を過ぎると造ってもそれほど捌けるものではなかったでしょうから。YA、YCはあってもそれ以降の月が無く、ZもA,B,Cくらいしか無ければ、想像どおりなのですが。
場合によってはY、Zくらいの年になるとBしかないかもしれませんね。
Posted by: YOSHI | March 13, 2009 10:43 PM