液晶が白いまま表示しないPC-9821NP
最近のパソコンの設定は、あまりにも個人でカスタマイズする余地に欠け、面白みが薄れてしまったために、もう一度PC-98のDOS環境に回帰しようと思い(もちろん今のネット環境に対応はできません)、いろいろとPC-98ノートをジャンクで入手してきましたが、1989年から1994年にかけてのNEC PC-9801ノートにはコンデンサーの電解液に起因するコンデンサー液漏れ不良という重大な欠陥を抱えており、経年劣化で十中八九は電源が入りません。また運よく起動している個体でもしばらく使っていれば確実に動かなくなります。うちのPC-9801nx/cなんか電源系やグラフィック系の主要な液漏れコンデンサーを交換してしばらく快調に使っていたのに、新しいHDDパックをフォーマットしている最中に突然電源が落ちました。その点はマザーボードが欠陥電解コンデンサーからチップコンデンサーに変わった1994年以降のPC-9821ノートのほうがはるかに安心して使えますし、そのまま起動する個体も多いようです。ただ9801系ノートに比べて大きくて分厚くて重いというのが欠点ですが、DOSで快適に使うには我慢するしかありません。また画面表示が480X600なのでWINDOWS95にも当然ながら対応していますし、PC-9801系ノートのようにそもそもの設計不良でヒンジが破壊して液晶部分がしまらなくなることもありません。
このPC-9821NPは1994年の発売でintel486DX4 75MHzという当時としては高速で、さらに液晶パネルが高価なTFTカラー液晶というものです。そのため当時のノートPCとしては高額な84万円(驚)もっとも半年後には64万円に値下げになったようですが、それにしても個人でしかもノートPCにこんなにお金をかけるのは清水の舞台から飛び降りるというより東京スカイツリーの天辺からパンジージャンプするような覚悟が要ったでしょう。もっともこれ以前にMacintoshのデスクトップとモニターを買いにいったときは財形貯蓄を100万円取り崩しても周辺機器までは買えませんでした。パソコンや周辺機器の価格が劇的に下がったのがWINDOWS95によりパソコン出荷激増以降のことで以前はメモリー1MBあたり1万円、HDD1MB(SASIの時代ですが)あたり1万円していたのが、今や5月の連休中に買ったHDDが2TBでたったの5980円です。1MB1万円の定義に当てはめると2TBのHDDの換算金額たるや200億円ですか?あんまり単位が大きすぎて混乱します。もっとも出始めの3.5インチ2HDフロッピーディスクでも一枚2000円してました。
そのPC-9821NPを昨年の12月ごろにオークションで落札しました。内蔵クロック用バックアップ電池がだめで、電源を落とすと日付が狂ってしまうのが鬱陶しいですが、それ以外は完璧に起動しました。しばらくはそのままの環境で使用し、DOS版のTURBO HAMLOGなんぞで遊んでいましたが、先月、しばらく入力待ち状態でそのまま放っておいたら画面が真白になる状態が発生しました。明らかにグラフィック系の基盤のコンデンサー抜けが起因する故障と推測できます。ネットで調べると、液晶パネル裏側のTFTコントロール基盤に例の欠陥コンデンサーが多用されており、ここの液漏れが原因の故障のようでした。9821NPは本体左右のヒンジを開くと液晶パネルが上に抜け、逆向きに液晶パネルをはめ込んでプレゼンなんかに使えるというギミックが仕込まれており、液晶部分をはずしての作業が非常に楽なんですが、ねじをはずしてプラスチックのはめ込みを剥がす液晶パネルの分解が大変でした。TFTコントロール基盤にはかなりの欠陥コンデンサが使用されており、高周波周りのため、高周波特性の悪い高インピーダンスの安物電解コンデンサを使うと通電不良を起こしたりするのを恐れて高周波特性が優れ、かつ低インピーダンスなタンタルコンデンで液漏れコンデンサを置き換えることにしました。本当は全部のコンデンサーを無条件で交換したいところなのですが、タンタルコンデンサーは高価で全部交換すると部品代だけで5k円を超えますので、33μF 25Vのコンデンサー3本(@250円)と47μF 16Vのコンデンサー(@220円)2本の交換に留めます。液漏れコンデンサーの電解液は魚の生臭さのような独特な臭いがしますが、この電解液は漏れた部分のパターンを腐食しますので、リレー洗浄スプレーを掛けて徹底的に洗浄するか、薄めた酢酸溶液を綿棒につけて中和させてからふき取ります。ところが47μF 16Vの液漏れコンデンサーが込み入ったところに配置されていて、筒を囲っているプラのケースの接着をこじって剥がそうとしたらパターンまで剥がしてしまいました。実体顕微鏡を久しぶりに持ち出して観察するとこのパターンは裏からのスルーホールでかしめてあるだけのようで、表面のパターンにはどこにもつながっていません。このスルーホールにパターンを半田付けしようとしてもうまく行かず、何時間か試行錯誤した挙句、このパターンがマイナスの接地側だったことにやっと気がついて、2本分のコンデンサーの接地部分をまとめて一本にして、件のスルーホールと導通のある部分と半田付けして一件落着しました。この基盤はLCDパネルに出力部分が半田付け処理されており、剥がして裏側からジャンパーを引き出してくるわけにはいけなかったのが手間取った原因です。タンタルコンデンサーに交換し、液晶パネルを組み立てなおして本体にはめ込み、電源ボタンを押しても液晶に表示しませんでした。コンデンサーの極性はしつこく確認したはずなので、なんでかと思いましたら、電源が入ってからコンデンサーに充電する時間が少し必要だったのか、もう一度起動しなおしたらちゃんとメモリーチェックが画面に表示されて無事に起動しました。その後、何時間かつけっぱなしにしましたが、二度と画面が真白になる現象には遭遇していません。
こういう手を掛けたジャンクは愛着が湧くというもので、使いにくいDOSSHELLのままだったものをファイラーとページャーの往年の定番「FDとMIEL」をインストールし、エディターは手持ちのMIFESを組み合わせたら劇的にDOS環境の使い勝手が上昇。DOSSHELLを止めてAUTOEXEC.BATをFDが立ち上がるように書き換えました。これで各ディレクトリーの移動やファイルの書き換え、実行ファイルの起動なんかも瞬時に可能になったところで、久しぶりにアンダーグラウンドな不謹慎ゲームの代表、FD12枚組みの「上九一色村物語」をインストール。98DOSのグラフィックと音源を極限までに叩く幻のゲームを今動作させています。この上九一色村物語の入手に関しては当時面白いエピソードがあったので、後日別途でネタをあげる予定です。
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