KEUFFEL & ESSER No.4053-3 末期型
K&E 4053-3の歴史は大変に古く、おおよそ1909年末から半世紀以上も基本を変えずに発売続けてきましたが、時代とともに材質やカーソルなど多種多様のパターンが存在し、本国アメリカでは専門のコレクターが存在するような計算尺です。しかし、日本ではこの手の計算尺は初心者用と片付けられてしまうからかあまり注目もされませんが、日本ではCI尺K尺を備える計算尺はHEMMIの大正15年型を待たなければいけないわけで、当時としては大変に進歩的な計算尺であったことには間違いありません。また構造的にも固定尺の片方をべースプレートにねじ止めし、わずかな調整幅を確保しています。それによって欧州系片面尺のように両固定尺を金属の裏板でつなぎ、その裏板を反らすことによって両固定尺間隔を調整する構造の計算尺よりは合理的な構造になっています。また上下の固定尺は同一の形状で、分厚いマホガニー製ベースプレート側面にスケールを刻んでいる構造でした。しかし今回のK&E 4053-3は終末期に製造されたもので、それまでベースプレートを含めてマホガニーにセルロイドを貼りこんだ構造でしたが、コストダウンの産物かベースプレートが物差し状の塩化ビニール系の樹脂素材に変わりました。このK&E 4053-3は4053-2と4053-5というパターンモデルが存在し、-2は8インチのレンズカーソル付き、-5は20インチモデルです。当然のことなが10インチの4053-3が一番多く製造されたことは疑いありません。この計算尺は終始三角関数系の滑尺裏面を使用するためには滑尺を抜いて裏返して使う構造になっており、裏側のカーソル線を使うような構造になっていませんが、それも固定尺をねじ止めにして調整できる構造にしたため、裏側、カーソル線の精度が出ないというのが理由なのかもしれません。また滑尺を裏返して使用するためS尺がA尺に、T尺L尺がD尺に対応する形式の計算尺です。カーソルは初期がアルミフレームのスクエアなタイプからフレームレスカーソルが長い間続き、1930年代にフレーム付きカーソルに変更になりますが、戦前のフレーム付きカーソルは例の「経年劣化で樹脂がぼろぼろになるカーソル」ですが今回の年代のものは材質が変わったのか大丈夫なようです。換算表も張り付けの時代を経て樹脂製バックプレートは印刷にコストダウンされています。こんな計算尺にはもったいないような明るい高級茶革のハードケースが付属してました。滑尺裏にシリアルナンバー937275が刻まれており、おそらく3順目の番号ではないかと思いますが、この計算尺としては末期の1950年代半ばを過ぎたころの製品でしょうか。入手先は東京の立川市。旧米軍立川基地あたりから出たアメジャンの一部だったのかもしれません。
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