HEMMI No.254Wの前・後期型の矛盾
学生用として主に内田洋行を通じて高校に納入されていたのがHEMMIの両面計算尺No.254Wですが、高校によってはHEMMIのP253やRICOHのNo.1051系なども納入に食い込んできたのは周知のとおりです。このNo.254Wは特に丈夫なクロース張りのケースに収められ、固定尺調整用のプレートドライバーを付品として添付してあるところなど、高校生用計算尺としての内田洋行計算尺課のこだわりを感じさせますが、それだけではなく使用する先生の好みに合わせて工業高校土木科向けのスタジア尺や電子科向けなどの特注品が245W-Sというスペシャルバージョンに特注で応じていたようで、幾種類かのバリエーションが存在するなど興味がつきません。
ところで一般的にはNo.254Wはドイツの計算尺のように上下の固定尺および滑尺が同長の前期型と一般の両面計算尺と同様なK&Eタイプの後期型に分類されているようで、当方もその分類に従って同長型を前期型、一般型を後期型としておきましたが、実は2年ほど前に後期型の254Wを持っていなかったので、札幌から1300円ほどで落札した254Wがちょっとした物議をもたらしてくれました。それまで同長型の254Wは何本が持っていましたが、その一番古い刻印が「OK」なので昭和39年11月の生産ものだったのですが、当然後期型として入手した254Wの刻印は「OA」で昭和39年の1月生産ものということになります。となるとうちの一番古いNo.254Wは後期型ということになるのですが、これでは合点がいきません。となるとNo.254Wのスタイルに関しては「前期型と後期型の分類が無意味」ということになります。それではなぜ同時期に同長型と一般型が混在してしまったのでしょうか?それは確たる証言があるわけではないので、想像するしかありませんが、高校の新学期を前にして予想以上の発注を内田洋行が集めてしまい、他の両面計算尺とはまったく部品が異なる同長型の用意した材料(エージングに1年余り掛かるわけですから急に部品を調達するわけにはいきません)では足りなくなって、窮余の策からNo.251やNo.153の目盛りを切っていない材料を流用して一般型のNo.254Wが出来たのではないかと。というより高校の新学期に間に合うよう内緒で混ぜられて全国に配られたのかもしれません。そうなると一般型の254Wは当初はピンチヒッター的な存在だったのでしょう。同長型の254Wはパーツの特殊性から常に先を見越して部品を加工しておかなければならないという部品見込み生産のリスクのため、後にNo.251や153と同じパーツを使う一般型の生産に正式にシフトしてしまったのでしょうが、それはいったいいつ頃のことなんでしょうか。何せ一般型は昭和39年生産という古いものしかもっていないので新しい年代の生産ものに関してはわかりません。でもまあ昭和44年以降のNo.254W-Sなんかは一般型のものしか見かけないので、このあたりが同長型と一般型の生産の境目なのでしょうか。
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