ACU-MATH No.1311 LOG LOG DECIMAL TRIG
日本ではあまり出回っておらず、知名度も今ひとつ無いアキュマスの両面計算尺です。というのもこの会社の歴史は同じアメリカのK&Eなどと比べると非常に新しく、1938年創業ということですので日本でいうと昭和13年ということになります。しかも当初は中西部ミズーリ州の片田舎の町で木製尺を製造していたという会社ですので、その後は順調に発展というわけにはいかず後に権利関係が転々と変わり、工場もミズーリ州セントルイスからイリノイ州マウントオリーブ、ニュージャージー州マウンテンサイドと移転していったようです。創業当時の名前は創業地の地名から Festus Mfg. Coとでしたが1939年にACU-RULEになりイリノイに移転した1954年あたりからACU-MATHの名前に変わったようです。後にスターリングプラスチックという会社の一部門になったらしく、見慣れないSterlingの商標のOEMでいろいろなプラ尺を製造していようです。意外と日本製かもしれないと思われていたプラ尺がACU-MATHのOEMで東南アジア方面に出回っていた例も否定できません。アキュマスの計算尺は取り立てて重要かつ特殊な計算尺は見当たらず終始教育現場に特化したようなチープな学生用計算尺が多いようですが、特筆されることとしてわりと早い時期にマグネシウム合金を芯にし、表面にプラスチックを貼り付けた薄い構造の両面計算尺を生み出したことでしょうか。
このアキュマス No.1311はLOG LOG DECIMAL TRIGという愛称で、内容的にはK&Eの4081-3に相当し、アメリカではもっとも普通に利用された計算尺とほぼ同じ内容の計算尺です。日本ではHEMMIのNo.254Wあたりの計算尺に該当しますので、こちらのほうも一般技術者よりは高校生用の需要を当て込んだ所もあったのでしょうか。表面がLL02, LL03, DF [CF, CIF, CI, C] D, LL3, LL2で裏面がLL01, K, A [B, T, ST, S] D, L, LL1という内容です。同じく金属を使用した計算尺としてPICKETの計算尺がありますが、PICKETは金属の表面に目盛りを刻んだのに比べてACU-MATHは表面がプラという差がありますが、一般的には尺の種類を極限まで詰め込んだ種類のあるPICKETの計算尺のほうが人気が高いのは否めません。
入手先はドラマ「カーネーション」の舞台となった泉州岸和田で、なんでこんなものがだんじりの岸和田から出てくるのか不思議なものですが、明らかに戦後のもののようですからもしかしたらやはり米軍のアメジャンの中に混じっていたものがいまに伝わったのかもしれません。良質で丈夫な革ケースが付属している例が多い米国製計算尺ですが、さすがに破損の心配が無いマグネシウム芯の計算尺だからか、リコーのポケット尺のような簡単な皮のサックケースに入っていました。
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