PowerBook 170 ジャンク再生奮闘記
1991年春に発表されたPowerBookの第一世代である100,140,170の中で、170はIIci並みのCPUとモノクロTFT液晶を搭載したため、80万円前後という非常に高価なパソコンでした。そのためサブ機として使用するためには高額すぎてパワーブック100しか買えなかったユーザーは多いと思います。当然当方はパワーブックはおろかデスクトップのマッキントッシュさえ1993年まで導入が遅れましたが、その時でさえ財形貯蓄をおろして100万円を握り締めて買いに行かなければいけないほどマッキントッシュは高価なパソコンでした。マッキントッシュが値崩れして並みのパソコンになれ果てたのはパフォーマーなんかが矢継ぎ早に出始めた1994年夏くらいなことで、当方も富里のSTEPで仕事用にモニターも付属した発売直後のLC630を20万を切るくらいの値段で購入しましたが、そこにはすでにパソコン界のポルシェの片鱗さえもうかがわれないものでした。でも一年以上前に100万で購入したマックより速くてハードディスクも大容量なのは紛れも無い事実でしたが。 そのパワーブックを最初に手にしたのは1993年の夏のことで、当時30万円を切るパワーブックということで話題になった145Bです。自宅でデスクトップのマックを使用し、会社にはケンジントンのバックに詰め込んだパワーブックとスタイルライターIIを持って通勤してました。これも都内なのにも係わらず自宅から恵比寿まで車通勤だからこそでしたが、このパワブック145Bは248,000円くらいの定価で登場したところをヨドバシカメラで税別198,000円という20万円を切るプライスを提示されたために思わず購入してしまったものです。ところが間もなく定価改定で198,000円くらいの価格になったため、泣けました。その後仕事場でもLC630を個人的に導入してしまったため、145Bは誘導雷よけでデスクトップの電源を落としたような状況下でパソコン通信のレス書きをしたり、実家に帰省したときにパソコン通信の未読を落とすくらいにしか使ったことはありませんでした。モノクロ2階調の液晶画面ではカラーを前程にしたアプリケーションがうまく表示できなくなったことも出番が少なくなった原因でした。
第一世代パワーブックの170を触ったのはFSAKE自宅オフで出掛けた先のキッチンの脇に置かれていたもので、そのときはすでに現役から引退し、当方の145B同様にパソ通のレス書きくらいにしか使われていないようでしたが、薄く黄色っぽいフィルターが掛かったようなTFT液晶は当然のことながら階調のあるはっきりとした表示でした。処理能力的にはパワーブック145Bと同等ですが、コプロセッサーを搭載し、TFT液晶のモノクロ液晶モニターを備えた170は当時としても最高級の部類に入るノートパソコンでした。もっともパワーブック初のTFTカラー液晶モデルである180Cが出たあとは中古相場も一気にさがったようですが。
このパワーブック170ですが、10年ほど前に一種のオールドマック再生改造ブームの折にはけっこう高く取引されたようですが、さすがに最近ではさほど値段がつかずに取引されているようです。また、モノクロTFT液晶のパワーブックは170にしてもその後継機の180にしても液晶パネル自体の劣化でしばらく通電していると四隅が黒くなる現象がほとんどの個体に生ずるという困った問題を抱えていますので、ジャンク扱い以外が見つからない事が原因でしょうか。どうもこの液晶パネルの劣化というのは高温多湿の保管で劣化が早まるように思われます。中には液晶パネルの表面がとろとろに融けてしまったものも見受けられますが、そういう厳しい保管環境におかれていたものでもパワーブック100系統は、たとえバッテリーや内蔵電池が完全にだめになっていても、ACアダプターさえつないで電源スイッチで数回ブートパルスを送ってやれば起動を始めるものが多く、完全に液晶の表面が融けかかったパワーブックがポーンという起動音と共に起動を始めるのは何か上半身だけになってもターゲットを追い続けるターミネータみたいで、何か恐ろしささえ感じさせます。
今回、取り上げたPB170は140、150、165Cの4台セットジャンクとして1000円で入手したもので、3年ほど前のことでした。状態は液晶劣化はあったものの、起動FDを入れると起動が可能のものでしたが、メモリーとSCSIの2.5インチHDDが当然のことながら欠品でした。SCSI2.5インチHDDは10年ほどまえのオールドマックブームの際には万の値段が付くほどの貴重品でしたが、現在ではオークションを念入りに探せば入手できないということはありません。今回、秘蔵の未開封東芝540MBを開けたのですが、うまくターミネーションが効かず、外付けHDDをつけないとSCSI0のディスクとして認識してくれません。どうしても解決できなかったのですが、ひょんなことからアップルマークつきの純正2.5"SCSI HDDの中古を2個入手し、これを装着したらあっさり認識してくれました。メモリーですが、内蔵2MBでは漢字talk6.0.7ならともかく漢字talk7.1ではインストールさえ出来ません。PB170用の増設メモリーはportable用ほどではないにせよなかなかオークションにも出てきません。そういうわけでメモリー取りのためにもう一台ジャンクのPB170を入手してしまいました。残念ながら最初から付いていた2MBの増設メモリーだったので、合計は4MBになりました。これなら辛うじて漢字talk7.1も使用できますしRAM Doublerもインストールすることが出来ます。
しかし、PB170は漢字talk6.0.7がインストールできるタイプのパワーブックですから何とか6.0.7をインストールして「macが日本語に非常に不自由だったパソコン」であることの象徴であった2.1変換を試してみたい衝動に駆られます。ところがパワーブックの100,140,170の3種は漢字talk6.0.7はインストールできず、専用の6.0.7.1というバージョンしか受け付けてくれないのです。
漢字talk6.0.4および6.0.7なら数セット分くらい持っているのですが、ROM上のマシンIDが新しいマシンには古いOSがインストールできないのです。というのもこれら初代パワーブックは本国ではすでにSYSTEM 7.0付属になっていて、ハードウエア的にはすでにSYSTEM 7世代のマシン(起動音もビーンじゃなくてポーンです)なのですが、日本では漢字TALK7の開発に時間がかかり、翌年まで掛かってしまったため、急遽古い漢字talk6.0.7に手をくわえて本来はSYSTEM 7アーキテクチャーの初代PBシリーズに付属させたというのが真相なのでしょう。この漢字talk6.0.7.1という特殊バージョンは初代パワーブックシリーズ以外にはClassic IIやLC-IIなんかに付属していたはずです。このOSを単体で入手するのは15年前のアキバSofmapマック館のジャンク箱ならいざ知らず、オークションで出品されることもありません。ためしに内蔵ディスクを外付けにして6.0.7をインストールし、170に戻して起動させようとしましたが、「systemのバージョンが違います……」うんぬんのアラートが出てだめでした。そこで、オリジナルの6.0.7.1化計画はOS入手の日までペンディングになってしまいました。
半年くらいしてオークションでOSとインストラクションがすべてそろったClassic IIのジャンクを1100円で入手、これも試しにロジックボードのコンデンサーをすべて交換し、起動するようになりましたがフライバックトランスがだめで結局はOS取りにしかなりませんでした。このClassic IIは付属のOSが漢字talk7.1になってる後期型があるので、6.0.7.1目的で落札するのには注意が必要です。そしてまたしばらくして思いがけなく6.0.7時代の日本語変換ソフト(この時代だとFEPかIMか?)MAC用VJEのVer.2.5を入手。これは今では漢字talk6.0.7.1を超えるレアもので、入手できたのは奇跡に近いものがあります。これで「日本語が不自由なパソコン」の汚名を返上出来るって、本来の目的は間に合わせ程度のおばかなFEP 2.1変換を再度体感する目的とは離れてしまいますが、2.1変換しかない漢字TALK6とVJEが入っているパソコンのどっちがいいって言えば当然両方入っているほうがいいに決まっています。ところで、このPB170の時代は英語のSystem7は発売になっているのに日本語版の漢字talkがいつまで経っても発売されないのに業を煮やした五明正史さんが英語版のSystem7を日本語化するいわゆる日本語パッチのGomtalkを開発しましたが、本家の漢字Talk7.1が発売された後でもマシンパワーに乏しい旧型マックでは軽いSystem7+Gomtalkの組み合わせがその後も使い続けられたんだそうな。実は英語版System7は無償ダウンロードが可能になり、もともとフリーウエアのGomtalkもVECTORからダウンロード出来ますので、2012年の今でもこの組み合わせは試すことが可能です。ただしインターネット環境にない旧型マックにどうやってファイルを持ってくるか、今となっては困ったものが…。なにせジョブズ復活以降のマックにFDDなんかないし、SCSIも無く、OSX環境じゃ旧型マックとネットワークでつながらないし…。ところで、PB170およびPB180のモノクロTFT液晶パネル特有の四隅のブラックアウトは、室温が30度近い夏場は10分から15分で現れるのに対して、室温が一桁のときには30分くらい経たないと現れないという時差があるようです。どういう理屈なのかはわかりませんが、室温が高ければ高いほど四隅のブラックアウトが早く現れるような。それなら気温が氷点下ならばさらにブラックアウトが遅れるか、もしくは現れないのではないかという予測もたちますが、そこまで根性がないので実験はやったことがありませんけどね。
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Comments
はじめまして。三谷商事の後(うしろ)と申します。
突然のご連絡すみません。当社で通称ベネトンMac( JLPGA PowerBook 170)を1台秘蔵してまして、それのプレゼント企画をやる話があります。現状起動しないため、修理のためのパーツ類を探しています。
もし余剰のパーツ等がありましたら、時価でお譲り頂くようなことはできないかと考えて、ご連絡をさせて頂きました。
もしできましたら、入力したメールアドレス(もしくは弊社Webフォーム)までご一報を頂けないでしょうか。また、本コメントはできれば、非表示のままにして頂けると助かります。
なにとぞ、よろしくお願いします。
P.S.
私も、まだ学生でしたがPowerbook145Bは個人で買いました。グレー4階調という謎仕様のディスプレイだったような。懐かしいですね。
Posted by: うしろ | April 23, 2015 03:14 PM