UNIS No.2607 5"ポケット計算尺
マンハイム式発祥の国にしては世界的な有名メーカーの見当たらないフランスの計算尺ですが、当方のコレクションにもさすがに一本もありませんでした。フランスでは19世紀末期から20世紀初頭にかけてはかなりの種類が作られていたようですが、その後ドイツ製アメリカ製計算尺の台頭によって世界的なシェアを徐々に失ったような感じです。特に第二次大戦後は簡単な計算尺が多かったようで、このUNISというメーカーも薄いプラスチック製の5インチ計算尺だけを作っていたメーカーのようです。製造していた種類もわずかに電気用などの特殊計算尺を除き、A,B,C,D,尺のみで三角関数尺もない簡単な計算尺の製造に終始していて、企業名などの名入れをしたノベルティー商品としての意味合いが強かったらしく、差し詰めHEMMIでいうとP35あたりの商品コンセプトに該当します。現にこの計算尺の滑尺溝にはロンドン在住の日本人土木技師の名前と事務所の所在地が刻まれてました。出所がひたちなか市ですから日立の関係者が現地で入手して日本国内に持ち込んだものなのでしょう。 プラスチックのベースプレートに固定尺を貼った構造のプラ尺で、滑尺も透明なセルロイドを折り込んだだけの構造です。素材が悪いのかひどく反ってまして、あまつさえ滑尺と固定尺の縮み方がことなるため、こんな短い計算尺ながら右端と左端の目盛りが合っていません。計算尺としては完全にジャンクですが、さすがに価格は安かったと見えて、アメリカのメーカーにOEMとしての輸出もあったようです。ケースだけ妙に上質なシボ皮のサックケースが付属していて、このあたりがさすがに皮革文化の歴史の長いフランスを感じさせます。
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