ALINCO DJ-560SXの修理
携帯電話以前のハンディー機ブームの最中、爆発的に売れたスタンダードのC520に対して同世代のアルインコDJ-560SXは今ひとつ人気がないようで、オークションでもパスコン抜けで不動のC520が数千円台で落札されるのに対してアルインコのDJ-560SXは動作品でも半額以下という相場ですが、どうしてDJ-560SXの機能はC520に対して劣らずとも勝るところが多いので、安く見つけたら入札してみることを勧めます。当方、長年アルインコのデュアルバンダーハンディー機の前作、DJ-500SXを相場が安かったという理由だけで中古で手に入れて使用していましたが、このハンディー機は同年代他メーカーのものに比べてロータリーエンコーダーがなく、機能的にもかなり同年代他機種に見劣りしていましたが、次作のDJ-560SXは同じメーカーの商品かと思えないくらい機能が充実し、満足できる機能と操作性を備えています。説明書には歌われていませんが、コマンドで受信拡張するとAMのエアバンドの受信が可能なAM検波機能を備え、エアバンド帯まで受信範囲が拡張できながらAM検波機能がない当時のハンディー機と一線を画します。また回路的にも電解液漏れしそうな表面実装コンデンサーが最低限しか使われておらず、結果的に20年以上経過した現在でも動作可能な個体が多い結果につながっています。
大変に売れたC520の約半年の後発組のデュアルバンダーハンディー機ですが、C520と機能を比較してみると周波数拡張によるバンドの拡大は若干C520のほうに軍配があがりますが、C520にはAM検波機能がないのでエアバンド受信には不適、DJ-560SXはコードレスホンの380メガ帯まで拡張受信帯がカバーされていない。C520レピーターモードは手動だが、DJ-560SXは439メガ帯は自動でレピーターモードになる。C520はバンド内周波数帯切り替えはF+0 F+3の操作が必要だが、DJ-560SXはF+UHFボタンのみで操作可能。C520のVHF帯ボリュームとスケルチ操作がアンテナの根元が邪魔で操作性不良なのに対してDJ-560SXは操作性良好。チャンネルメモリーがC520は片バンド10波で若干見劣りするのに対し、DJ-560SXは片バンド20波。C520はメイン基板をC620などと共通化したためか、表面実装のパスコンが多く、これがことごとく液漏れして不動になるのに対し、DJ-560SXは電解コンデンサーのパスコンが極力廃され、液漏れ不動のリスクが小さい。C520のボディーはオールプラスチックなのに対し、DJ-520SXのスピーカーグリルは金属製で、衝撃で角がへこみやすく、また擦れて塗装がはげるとみすぼらしく見える。またスピーカーグリルから機種名が見えるデザインはソニーのドデカホーンをぱくったみたいでオリジナリティーに欠ける。C520の出力切り替えがF+POで3段切り替えなのに対してDJ-560SXは背面スイッチの2段切り替え。C520のスピーカーマイク端子のオーディオアウトが一般的なモノラルなのに対し、DJ-520SXはV/Uの独立したステレオアウトになっているので、一般的なモノラルのスピーカーマイクを取り付けるとショートして回路が壊れるリスクがあるので専用しか使わないようにとの説明書きがあり、スピーカーマイクの選択肢が限られる。C520は前機種までの何年かでキー配置の試行錯誤の結果、使いやすいキー配置に落ち着いたがその分、ボディーが幅広となった。DJ-560SXはスリムだがキーの操作性はC520に比べて劣る。全般的な評価からすると内部パスコン液漏れ不良で殆どが不動となるC520と比べて若干後発でありパスコン抜けリスクが少なく、無理して不動のC520を高額入手するよりエアバンドのAM受信が可能で中古相場が安いDJ-560SXのほうがいいのではないでしょうか。
機能比較対照として入手したDJ-560SXは入手価格2600円なり。乾電池ケース付きで、送受信確認済みとのことでしたが、届いてみるとスピーカーからの音が小さいという不良があり、いわゆる低周波増幅回路のパスコン抜けでしょう。開腹してみないと回路がどういう構成になっているかはわかりませんが、逆にボリュームからパターンをたどれば問題のコンデンサーに行き当たりそうです。このとき参考になったのがアルインコの欧州代理店が公開しているサービスマニュアルで、点検ポイントが細かに記載されているので、これに従えば必要な測定器がある限り完全調整が可能となります。このサービスマニュアルの部品構成図にしたがって開腹しますが、最初に上のパネルのネジ一本とV/Uのボリューム・スケルチ・エンコーダー軸根元のナットを蟹目で外さないとパネルが外れず、さらにこのパネルを外さないと前後のボディが分解できないため、この部品構成図がないとすぐに内部まで至れなかったと思います。また前後の基板をとめているのはパソコンなどでも使用されているフラットケーブルコネクターで、このコネクターの両側の突起をマイナスドライバー2本で押し上げ、フラットケーブルを外しますが、あまりこのタイプのコネクターに縁のない人は外し方を知らずにフラットケーブルをそのまま力で抜こうとしてパターンをはがしてしまうかもしれません。またコネクターの材質がジュラコンかなにかの粘りのない素材なので慎重にやらないと固定の爪を折ってしまいます。低周波増幅系などの回路が収まった基板の4本のネジを外して基板をめくると4個の表面実装コンデンサーが並んでいて、そのうち耐圧6V 47μFのコンデンサーのマイナス足が腐食して変色してましたので、どうやらこれが原因で低周波出力が上がらなかったようです。液漏れまでは至っていなかったので、経年劣化で容量低下を起こした状態だったのでしょうか。パターンにダメージを与えないため、このコンデンサーをニッパーで破壊し、残った足を半田吸収線できれいに残りの半田ともにきれいに吸い取り、ランドをクリーナーで丁寧に洗浄しました。され、交換用コンデンサーですが、47μFのコンデンサーはパソコン基板で多用するため、色々な耐圧のものの在庫があるのですが、高耐圧のものは直径が大きく、ハンディ機の内部に使用するのは余裕がないので、もったいないのですが耐圧10Vで47μFのディップタンタルコンデンサーをおごってしまいました。1個200円以上したと思いますが、普通の電解コンデンサーだったら10個くらいは買える金額です。ついでにバックアップ用電池の電圧
を測ると通常3Vのところ26mVくらいしか電圧がなく、これも無条件で交換です。この機種は薄いCR2016のタブ付き電池を使用しており、本来ならば自由に電池を交換できるソケット式に変えたいところですが、スペースの関係でソケットが収まりません。そこでピラめいたのはソケットの金具をCR-2015を差し込めるようソケットから外して整形したのち基板に半田付けし、電池を差し込み、そのままでは電池が踊るので電池を差し込んだ状態でホットグルーで固めてしまうというものでした。絶縁に注意しなければいけませんが、この作戦は意外とうまくいきました。CR-2025は100円ショップでも手に入りますし、ソケットは10個まとめて500円くらいで入手したものです。高いタブ付きリチウム電池を買うよりよっぽど安上がりな方法です。
慎重に組み立て直してファンクションを押しながらUのつまみを回して電源オンとともにリセットがかかり、正常に電源が入ってスピーカーからも大きく音が出て正常動作を確認。部品総額350円と工賃0円なりで修理完了です。このDJ-560SXはエアバンドのAM受信感度も申し分ないので、もう少しゲインの高いアンテナを装着してエアバンド専用受信機として使用しようかと思っています。
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Comments
アドバイス有難う御座いました。
記事の分解方法を慎重に進めて 無事開腹出来ました。
音量関係のコンデンサーは、液漏れ等もなかったので交換不要でした。
問題の13.8Vのジャックですがやはり中心部のピンが極細で腐食がすごい事もあり 半田を吸い取ってリード線を直に半田付けしました。
近くのダイオードが焼けたように変色していたので同じダイオードがたまたまあったのでついてに交換しました。
慎重に組み立てた後 13.8Vを入力したところ無事電源ONとなり 嬉しかったです。
ボリュームなどの蟹目ナットを緩める時に使用したシーリングプライヤーやダイオード等々 持っていてよかったです。
本当にお世話になり ちょっとばかり分解修理に自信がもてました。
Posted by: 小万 修一 | November 05, 2016 09:22 AM
ご丁寧なアドバイス有難うございます。
確かに中心軸側がマイナス側というのは珍しいですね。
緊張感もってそのあたりは間違いなく接続したので大丈夫ですが前使用者が逆接して壊したのかな?とか見る限りかなり端子の汚れ?腐食が進んでいるようにも見えました。
記事にある分解方法を参考に一度 内部チェックをしようと思っています。
スピーカーからの音量も小さいので合わせて開腹を試みてみるつもりです。
上手くいけばいいのですが(・・;)
お邪魔じゃなければ事後書き込みさせていただきますので・・・
アドバイス本当にありがとうございました。
Posted by: 小万修一 | November 03, 2016 09:42 AM
端子のマイナス極が細くて一般的な形状ではない事、また今と異なり中心軸側がマイナス側なので極性をよく確かめないで接続すると中のダイオードを飛ばしてしまい通電しなくなる、端子の鍍金が良くないので酸化皮膜を作って通電しなくなるなどいろいろ原因があるでしょうが、一度開けてケーブルを接続し、中までちゃんと電圧が掛かっているか確かめるべきでしょう。おそらく電圧が掛かっていないかダイオードが破壊しているでしょう。
電池ケースの接続端子ケーブル直付けは電池電圧を昇圧させる回路に影響があるやもしれず、お勧めは出来ませんがそれは自己責任で!
Posted by: じぇいかん | November 01, 2016 11:18 AM
DJ-560SXを手に入れたのですが電池(単3×6個)での運用は問題ないのですが 13.8V入力にジャックを刺しても電源が入らない状態です。
13.8V用ジャックが特殊なのでしょうか?
電池BOXの端子から13.8Vを入れるのはだめなんでしょうか?
アドバイスいただければ助かります。
Posted by: 小万 修一 | November 01, 2016 09:55 AM
こんにちわ
始めてコメント致します。
今月 局免を申請し 大阪在住時代から3度目のコールサインがおりました。(JS2CCN)
オークションで落札したDJ-560について質問があるのですが 電池運用は問題ないのですが13.8v入力の端子にジャックを入れても電源が入りません。
ジャックが特殊な大きさなのか不明ですが適当なジャックではだめなのか 入力回路に問題があるのか不明です。
そこで 電池BOXの端子から13.8Vをハンダ付けしての運用は乱暴でしょうか?
アドバイス頂けるようなら宜しくお願いします。
Posted by: 小万 修一 | October 31, 2016 05:29 PM
ありがとうございます。この記事のおかげで、再開局用のリグができました。
素直にご忠告に従わずなかったばかりに、パターンを少し浮かせるという失敗もありましたが、何とかなりました。
20年前に予算不足で諦めた機種なので、嬉しさもひとしおです。(当時はDJ500で開局しました)
本当にありがとうございました。
Posted by: JS3JMD復活予定 | March 04, 2013 02:00 AM